• 民法親族・相続ー4.親権
  • 1.親権の当事者
  • 親権の当事者
  • Sec.1

1親権の当事者

堀川 寿和2022/01/05 14:41

「親権」とは、未成年の子の監護、養育を目的とする私法上の親の権利・義務の総称をいう。

親権に服する者

 成年に達しない子は、父母の親権に服する(民法818条1項)。未成年者が養子であるときは、養親の親権に服する(同条2項)。

親権者

親権を行う者を親権者という。


(1) 嫡出子の親権者

 親権は父母の婚姻中は父母が共同してこれを行う(共同親権の原則)。よって子の代理行為や、子の行為に対する同意等は、父母が双方で行わなければならない(民法818条3項本文)。ただし、父母の一方が親権を行うことができないときは、他の一方が行う(同項ただし書)。よって、父母の一方が、法律上の障害(ex.後見開始の審判、親権喪失宣告を受ける等)、事実上の障害(行方不明等)により親権を行うことができないときは、他の一方が行う。

子が養子であるときは、養親の親権に服する(民法818条2項)。ただし、配偶者のある者が未成年者である配偶者の嫡出子を養子とした場合、実親の親権は消滅せず、養親と実親が共同して親権を行使することになる(大阪家審昭43.5.28)。


① 父母の意見が一致しない場合に、一方が他方の意思を無視して勝手に親権を行使した場合

a) 単独名義で代理または同意した場合

無効である(最判昭42.9.29)。例えば、未成年の子が父の同意は得たが母の同意がないままバイクの売買契約を締結した場合や父のみが未成年者を代理してバイクの売買契約を締結した場合、父母双方は当該契約を取り消すことができる。なお、単独名義の代理行為であっても、他方の親権者の同意があれば、有効な代理行為となる(最判昭32.7.5)。

b) 共同名義で代理または同意した場合

i) 父母の一方が共同名義で子に代わってした法律行為の効力

相手方が善意の場合は有効である(民法825条)。悪意の場合には、追認のない限り無効である。

ii) 父母の一方が共同名義で子が法律行為をすることに同意したときの効力

相手方が善意の場合は有効である(民法825条)。悪意の場合には、追認のない限り取り消すことができる。 


② 父母が婚姻を解消しとき

a) 父母の一方が死亡したとき

生存親権者の単独親権となる。

b) 父母が離婚したとき

父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければならない(民法819条1項)。また、父母が裁判上の離婚をするときは、裁判所が、その一方を親権者と定める(同条2項)。

c) 子の出生前に父母が離婚した場合

母の単独親権となるが、子の出生後に父母の協議で父を親権者と定めることができる(民法819条3項)。


(2) 非嫡出子の親権者

 嫡出でない子は母の単独親権は母が行うのが原則だが、父の認知後、父母の協議または審判によって父を親権者と定めたときは父の単独親権となる(民法819条4項)。


親権者の変更

 父母の離婚や非嫡出子等で父母の一方が単独親権者となっている場合において、子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は子の親族の請求により親権者を他の一方に変更することができる(民法819条6項)。この変更は、父母の協議によることはできず、家庭裁判所の調停または審判によらなければならない。