- 民法担保物権ー6.先取特権
- 5.先取特権の順位
- 先取特権の順位
- Sec.1
1先取特権の順位
■先取特権の順位
(1) 意義
同一の目的物の上に数個の先取特権が競合的に成立した場合や、他の担保物権と競合的に成立した場合における優先弁済の順序を「先取特権の順位」という。
(2) 特別の先取特権と一般の先取特権の順位
一般の先取特権と特別の先取特権とが競合する場合には、特別の先取特権は、一般の先取特権に優先する。ただし、共益の費用の先取特権は、その利益を受けたすべての債権者に対して優先する効力を有する(民法329条2項)。
(3) 一般の先取特権と担保権の関係
① 登記のない担保権との関係
一般の先取特権は、不動産について登記をしなくても特別担保(抵当権、不動産質権等)を有しない債権者(一般債権者)に対抗することができる(民法336条)。
② 登記のある担保権との関係
一般の先取特権者が登記のある担保権者(抵当権者、不動産質権者等)に対抗するためには原則どおり登記を要する。双方に登記がある場合の優劣は登記の先後による。
(4) (動産)先取特権と動産質権が競合した場合
(動産)先取特権と動産質権とが競合する場合には、動産質権者は、第330条の規定による第一順位の先取特権者と同一の権利を有する(民法334条)。つまり、動産質権者は、「不動産賃貸の先取特権」、「旅館宿泊の先取特権」、「運輸の先取特権」と同順位となる。
(5) (不動産)先取特権と抵当権が競合した場合
登記をした「不動産保存の先取特権」と「不動産工事の先取特権」は、(登記の先後に関係なく)抵当権に優先する(民法339条)。「不動産売買の先取特権」と抵当権の関係については特に条文規定がないため、一般原則どおり登記の先後によって優劣を決することになる。
(6) (不動産)先取特権と不動産質権が競合した場合
不動産質権は抵当権に準ずるとされている(民法361条)ので、(5)と同じ結果となる。
(7) 一般の先取取権と抵当権が競合した場合
抵当権の登記があるときは、一般の先取取権と抵当権の優劣は一般原則どおり登記の先後による。抵当権に登記がなければ、一般の先取特権者は登記なくして優先できる。
以上をまとめると、次の表のとおりの順位で優先弁済を受けることになる。
(*1)総債権者に有益でない共益費用・雇用関係・葬式費用・日用品供給の先取特権