• 民法担保物権ー6.先取特権
  • 1.先取特権総説
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1先取特権総説

堀川 寿和2021/12/27 12:58

先取特権の意義

 同一の債務者に対して複数の無担保債権者がいる場合に、その債務者の全財産をもってしても債務の全額を弁済することができないようなときは、各債権者は平等な立場で(債権額の割合に応じて)分配を受けるのが原則である。これを債権者平等の原則という。しかしこの債権者平等の原則を貫くと、公平の原則や社会政策的な観点から見て不都合な場合もある。そこで、民法は特別に保護すべき債権を指定して、他の一般債権者に優先する効力を与えた。これが先取特権である(民法303条参照)。




先取特権の種類

 先取特権は、目的となる財産の種類に応じて、一般の先取特権と特別の先取特権に分けられる。「一般の先取特権」は、債務者の総財産を目的として成立する先取特権で、特別の先取特権は債権の種類に応じて、債務者の特定の財産を目的として成立する先取特権である。そして、特別の先取特権は、債務者の特定の動産を目的として成立する「動産の先取特権」と、債務者の特定の不動産を目的として成立する「不動産の先取特権」に分けられる。




先取特権の性質

 先取特権は物権であるため、以下の性質を有する。

① 付従性

 先取特権は、法で定める特定の債権(被担保債権)の発生とともに成立し、その債権の消滅によって消滅する。

② 随伴性

 先取特権は特定の債権を担保するためのものであるから、その債権が第三者に移転したときは、先取特権もそれに伴ってその第三者に移転する。

③ 不可分性

 先取特権を有する者は、被担保債権の全部の弁済を受けるまでは目的物の全部について先取特権を行使することができる(民法305条→296条)。

④ 物上代位性

 先取特権を有する者は、その目的物の売却・賃貸・滅失または損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても、先取特権を行使することができる。ただ、後述するが一般の先取特権は債務者の総財産に行使でき物上代位するまでもないため、物上代位性については、動産の先取特権と不動産の先取特権の性質である(民法304条)。