• 民法担保物権ー6.先取特権
  • 2.一般の先取特権
  • 一般の先取特権
  • Sec.1

1一般の先取特権

堀川 寿和2021/12/27 13:00

意義

 一般の先取特権は民法で定める特定の債権が発生した場合に、債務者の総財産から優先弁済を受けることができる先取特権である。債務者の総財産を目的として優先弁済権が認められるので、他の一般債権者への影響も大きいため、一般の先取特権によって担保される債権は特に保護されるべき民法306条で定めた次の4つの債権に限定される。

一般の先取特権によって担保される債権の種類

 次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は、債務者の総財産について先取特権を有する(民法306条)。


一 共益の費用

ニ 雇用関係

三 葬式の費用

四 日用品の供給


共益費用の先取特権

(1) 共益費用とは

 共益の費用の債権を有する者は、債務者の総財産について先取特権を取得する。共益費用とは、各債権者の共同の利益のためにされた債務者の財産の「保存」「清算」または「配当」に関する費用をいう。「保存」とは、たとえば債務者に代位して時効の更新のための措置をとったり、債務者の詐害行為の取消しなどの現状維持行為、「清算」とは債権の取立て、債務の弁済など、「配当」とは、配当表の作成、配当の実施などを指す。


(2) 共益費用の先取特権の成立

① 原則

 共益費用を支出した者は、その費用について債務者の総財産から他の債権者に優先して弁済を受けることができる(民法307条)。他の債権者の利益にもなる支出であり、その支出者に優先弁済を受けさせるのが公平だからである。

② 例外

 「前記の費用のうちすベての債権者に有益でなかったものについては、先取特権は、その費用によって利益を受けた債権者に対してのみ存在する(民法307条2項)。つまり、共益費用の利益を被らない債権者があれば、その者に対しては先取特権を主張することができない。