• 民法物権ー5.用益物権
  • 3.永小作権
  • 永小作権
  • Sec.1

1永小作権

堀川 寿和2021/12/23 15:29

 永小作権は、実社会で設定される例はほとんどなく、試験でもあまり出題されない。よって下記の地上権との相違点を中心に学習しておけば充分である。

永小作権の意義

 「永小作権」とは、小作料を払って他人の土地において耕作または牧畜のために利用する物権をいう(民法270条)。永小作権は小作料を支払うことが要件であるため、有償に限る。

 cf.これに対して、地上権の成立については、地代を支払うことは要件とはなっていない。


永小作権の譲渡、賃貸禁止特約

 永小作権は物権であるので、永小作権者は、土地の所有者の承諾を得ることなく、その権利を譲渡し、また存続期間の範囲内で土地を賃貸することができる(民法272条本文)。ただし、設定行為でこれを禁じたときは、権利の譲渡や土地の賃貸をすることができない(同条ただし書)。この譲渡•賃貸禁止の特約は、登記することができ(不登法79条3号)、これを第三者に対抗することができる。

 cf.これに対して、地上権の譲渡・賃貸の禁止については登記することができず、第三者に対抗することもできない。


永小作権の存続期間

① 永小作権の存続期間は、20年以上50年以下とする。設定行為で50年より長い期間を定めたときであっても、その期間は50年とする(民法278条1項)。それに対し、設定契約で20年より短い存続期間を定めたときは、20年とされることはなく、その契約自体が無効で永小作権は成立しない。


② 永小作権の設定は、更新することができる。ただし、その存続期間は、更新の時から50年を超えることができない(同条2項)。


③ 設定行為で永小作権の存続期問を定めなかったときは、その期間は、別段の慣習がある場合を除き、30年とする(同条3項)。