• 民法物権ー5.用益物権
  • 4.地役権
  • 地役権
  • Sec.1

1地役権

堀川 寿和2021/12/23 15:31

地役権の意義

 「地役権」とは、特定の土地の便益を図るため、他人の土地を利用する権利をいう(民法280条)。地役権によって便益を受ける土地(甲地)を「要役地」、地役権による負担を負う土地(乙地)を「承役地」と呼ぶ。地役権は要役地と承役地2つの土地の間の関係である。したがって、地役権が成立するためには、必ず2個以上の土地の存在を必要とする。なお、要役地と承役地は必ずしも隣接していることを要しない。




地役権の種類

 通行地役権が典型例であるが、その他「引水地役権」「眺望地役権」「日照地役権」などがある。

 地役権は「土地の便益」を図る権利であるから、土地の利用価値を高めるものに限られる。狩抓や昆虫・植物採集など個人的便益(人の便益)のために他人の土地を利用する権利は「人役権」と呼ばれるが、日本の民法上認められていない。


地役権の成立

(1) 地役権設定契約

 地役権は、要役地の所有者と承役地の所有者の間の地役権設定契約によって成立する。地上権者等の用益権者も設定契約の当事者となることができる。


(2) 地役権の時効取得

 地役権は時効によっても取得できるが、地表に水路を設けて引水する場合や、通路を開設して通行する場合など、「継続的に行使され、かつ、外形上認識することができるもの」に限られる(民法283条)。また道路の開設も要役地所有者によってなされなければ時効取得できない(最S30.12.26)(最S33.2.14)。


判例(最S33.2.24)
民法283条にいう「継続」の要件を充たすためには、承役地上に通路の開設があっただけでは足りず、その開設が要役地所有者によってなされたことを要する。