• 民法物権ー3.占有権
  • 1.占有の意義と占有制度
  • 占有の意義と占有制度
  • Sec.1

1占有の意義と占有制度

堀川 寿和2021/12/23 13:12

占有と占有権

 自己のためにする意思で物を所持することを「占有」といい、「占有権」とは、法律上の権原の有無を問わず、物を事実上支配していることによって認められる権利である。


占有制度の趣旨

 「占有制度」は、人が現実に物を支配している場合に、それが法律上の根拠(本権)に基づくか否かに関係なく、その事実上の支配状態そのものに一定の法律上の効果を与える制度である。

 すなわち、占有という事実に基づいて当然占有権という権利(物権)が発生し、この占有権から種々の法律効果、たとえば、時効取得、占有訴権、善意占有者の果実取得権などが生ずる。法がかかる占有制度を認めるのは、物に対する事実的支配状態を一応正しいものとして保護することによって社会の秩序ないし平和を維持しようとしたものである。


占有権と本権(占有すべき権利)との関係

 占有することを法律上正当ならしめる権利を「本権」という。所有権、地上権、永小作権、賃借権などが本権の典型である。

 一般的には、本権者と占有権者とは同一人であるはずであるが、両者は異なる概念であるので、場合によっては不一致が生じることもある。占有すべき権利(本権)を有する者が必ずしも占有権を有するとは限らない。たとえば、盗人は盗んだ物に対する占有権はあるが本権はない。逆に窃盗の被害者には本権はあるが占有権はない。