- 民法物権ー1.物権法序論
- 1.物権の意義
- 物権の意義
- Sec.1
1物権の意義
■物権とは
「物権」とは、特定の物を直接に支配して利益を受ける排他的な権利をいう。
物権には次のような性質がある。
(1) 直接支配性
物権は、「物」を「直接に支配する」ことを内容とする。すなわち、他人の行為を介在させることなしに目的物を利用しうる権利である。たとえば、自分が所有権を有する土地は、誰に遠慮をすることなく、自由に使用することができる。
それに対し「債権」は債務者という特定の人に対して一定の行為を請求する権利であり、その権利の実現には債務者の行為の介在を必要とする。たとえば、債権たる賃借権は賃借人に使用収益させるという賃貸人の行為が介在してはじめて目的物を支配できるということになる。
(2) 排他性
物権は排他的な権利であるため、同一目的物の上に1つの物権が成立すると、これと両立しない物権が並存することは認められない。これを「物権の排他性」という。たとえば、Aが所有権を有している土地に、Bもまた所有権を有しているということはありえない(共有は別の話)。
それに対して、債権にはこの排他性がないから、同一の目的物の上に、これと両立しない債権が併存することが認められる。たとえば、AB間でA所有の土地の売買契約を結ぶと、BはAに対して土地の引渡請求権という債権を取得するが、これはBがAに対して土地の引渡しという行為を請求することができるだけであり、Bによる土地の排他的支配を認めるわけではない。したがって、Aがこの土地についてCと売買契約を結ぶと、Cは同一の土地についてAに対して土地の引渡請求権という債権を取得することができる。つまり、同一の土地を目的とするAB間の売買契約も、AC間の売買契約も有効に成立し、買主であるBおよびCは、いずれも同一内容の債権を取得することになる。
■一物一権主義
(1) 一物一権主義
一物一権主義は、次の2つの意味で用いられる。
① 1つの物に同一内容の物権は1つしか成立しない
たとえば、1つの物には、1つの所有権しか成立しない。
② 1つの物権の客体は1つの独立物でなければならない
このことから、1つの物の一部には1個の所有権は成立しない。また、数個の物(物の集合体)の上に1個の所有権は成立しない。
(2) 一物一権主義の例外
取引実務上の必要性などから、一物一権主義には例外が認められることがある。
(イ) 1筆の土地の一部の譲渡(第三者に対抗するためには分筆登記が必要である。)
(ロ) 構造上区分され独立性を有する区分建物(マンションの各専有部分)
(ハ) 立木法による登記のある立木
(ニ) 集合動産譲渡担保
なお、これらはすべて、上記の②の意味における一物一権主義の例外である。