• 民法総則ー2.民法総則
  • 8.条件・期限・期間
  • 条件・期限・期間
  • Sec.1

1条件・期限・期間

堀川 寿和2021/12/23 09:21

条件

(1)条件の種類

 条件とは、法律行為の効力の発生や消滅を将来発生するかどうか不確実な事実にかからせることをいう。

 条件には停止条件と解除条件がある。


① 停止条件

 停止条件付法律行為は、停止条件が成就した時からその効力を生ずる(127条1項)。つまり、停止条件とは、条件が成就することによって、法律効果が発生する条件である。

 たとえば、「『今年の国家試験に合格したら』100万円あげる(贈与契約)」などが、停止条件である。


② 解除条件

 解除条件付法律行為は、解除条件が成就した時からその効力を失う(127条2項)。つまり、解除条件とは、条件が成就することによって、すでに発生していた法律効果が消滅する条件である。

 たとえば、「『今年大学を留年したら』仕送り(贈与契約)をとめる」などが、解除条件である。


Point 停止条件も解除条件も、当事者が条件が成就した場合の効果をその成就した時以前にさかのぼらせる意思を表示したときは、その意思に従う(127条3項)。

(2) 条件の成就の妨害等

① 条件の成就を妨げる行為

 条件が成就することによって不利益を受ける当事者が故意にその条件の成就を妨げたときは、相手方は、その条件が成就したものとみなすことができる(130条1項)。


【発展・判例】条件が成就したものとみなすことができないとされた事例(最判昭36.5.26)

農地の所有権移転を目的とする法律行為についての都道府県知事の許可は当該法律行為の効力発生要件であるから、農地の売買契約を締結した当事者が知事の許可を得ることを条件としたとしても、それは法律上当然必要なことを約定したに止まり、売買契約にいわゆる停止条件を付したものということはできない。そして、農地売買契約について、たとえ、農地の売主が故意に知事の許可を得ることを妨げたとしても、条件が成就したものとみなすことはできない。


② 条件を成就させる行為

 条件が成就することによって利益を受ける当事者が不正にその条件を成就させたときは、相手方は、その条件が成就しなかったものとみなすことができる(130条2項)。


【発展・判例】条件が成就しなかったものとみなすことができるとされた事例(最判平6.5.31)

AB間の和解契約中にAが一定の禁止行為をした場合はBに違約金を支払う旨の条項が定められている場合に、Bが当該禁止行為を誘発したときは、Aは条件が成就していないものとみなすことができる。


(3) 既成条件

 条件が法律行為の時に既に成就していた場合において、その条件が停止条件であるときはその法律行為は無条件となり、その条件が解除条件であるときはその法律行為は無効となる(131条1項)。

 条件が成就しないことが法律行為の時に既に確定していた場合において、その条件が停止条件であるときはその法律行為は無効となり、その条件が解除条件であるときはその法律行為は無条件となる(131条2項)。


(4) 不法条件

 不法な条件を付した法律行為は、無効となる(132条前段)。

 不法な行為をしないことを条件とするものも、同様に、無効となる(132条後段)。


(5) 不能条件

 不能の停止条件を付した法律行為は、無効となる(133条1項)。

 不能の解除条件を付した法律行為は、無条件とする(133条2項)。

(6) 随意条件

 停止条件付法律行為は、その条件が単に債務者の意思のみに係るときは、無効となる(134条)。


【発展・判例】随意条件ではないとされた事例(最判昭31.4.6)

売買契約において、買主が品質良好と認めたときは代金を支払い、品質不良と認めたときは代金を支払わない旨を約しても、当該売買契約は、条件が単に債務者の意思のみにかかる停止条件付法律行為とはいえない。


期限

(1) 期限の種類

 期限とは、法律行為の効力の発生や消滅を将来必ず発生する事実にかからせることをいう。

 期限には、確定期限と不確定期限がある。


① 確定期限

 確定期限とは、到来する期日が確定している期限をいう。たとえば「今年の12月31日に借金を返す」という契約であれば、「今年の12月31日」というのが確定期限である。


② 不確定期限

 不確定期限とは、将来確実に到来するが、いつ到来するかは不確定な期限をいう。たとえば、「『私が死んだら』自宅の土地と建物をあげる」という契約であれば、「私の死」というのが不確定期限である。人の死は必ずやって来るが、いつ亡くなるかは不確定であるからである。


Point 金銭消費貸借において、借主(債務者)が出世した時に返済する旨の約定(いわゆる出世払い約款)は、不確定期限を付したものであって、停止条件付債務ではない(大判大4.3.24)。


(2) 期限の到来の効果

① 始期

 法律行為に始期を付したときは、その法律行為の履行は、期限が到来するまで、これを請求することができない(135条1項)。


② 終期

 法律行為に終期を付したときは、その法律行為の効力は、期限が到来した時に消滅する(135条2項)。


(3) 期限の利益およびその放棄

① 期限の利益

 期限の利益とは、たとえば「今年の12月31日に返す」という期限を定めて100万円借りた債務者は、今年の12月31日までは借りた100万円を返済しなくてもよいという利益である。期限は、債務者の利益のために定めたものと推定される(136条1項)。


② 期限の利益の放棄

 期限の利益は、放棄することができる(136条2項本文)。つまり、「今年の12月31日に返す」という期限を定めて100万円借りた債務者は、今年の12月31日までに借りた100万円を返したいと考えるのであれば、期限前であっても返してよいということである。


期間の計算

 期間の計算は、法令もしくは裁判上の命令に特別の定めがある場合または法律行為に別段の定めがある場合を除いて、民法の規定に従って行う(138条)。


(1) 時間によって期間を定めた場合

 時間によって期間を定めたときは、その期間は、即時から起算する(139条)。


Point 10月20日午後11時30分に、ビデオテープを今から36時間貸す約束をした場合は、期間は10月20日午後11時30分から起算し、そこから36時間を経過した10月22日の午前11時30分に期間は満了する。


(2) 日・週・月・年によって期間を定めた場合

① 期間の起算

 日、週、月または年によって期間を定めたときは、期間の初日は、算入しない(140条本文)。これを、初日不算入の原則という。ただし、その期間が午前零時から始まるときは、期間の初日も算入される(140条ただし書)。


Point1 6月15日に、パソコンを4か月間貸す約束をした場合は、4か月を6月15日から起算するのではなく、6月16日から起算する。6月15日は、パソコンを丸1日使えないからである。


Point2 6月15日に、7月1日からパソコンを4か月間貸す約束をした場合は、6月15日の時点で7月1日の午前0時から貸すということなので、初日を算入して、4か月を7月1日から起算する。


② 暦による期間の計算

 週、月または年によって期間を定めたときは、その期間は、暦に従って計算される(143条1項)。週、月または年の初めから期間を起算しないときは、その期間は、最後の週、月または年においてその起算日に応当する日の前日に満了する(143条2項本文)。ただし、月または年によって期間を定めた場合において、最後の月に応当する日がないときは、その月の末日に満了する(143条2項ただし書)。


③ 期間の満了

 日、週、月または年によって期間を定めたときは、期間は、その末日の終了をもって満了する(141条)。


Point 6月15日に、パソコンを4か月間貸す約束をした場合は、6月16日から起算し、4か月後の起算日に応答する日の前日である10月15日午後12時に期間は満了する。


Point 6月15日に、7月1日からパソコンを4か月間貸す約束をした場合は、7月1日から起算し、4か月後の起算日に応答する日の前日である10月31日午後12時に期間は満了する。


Point うるう年の前年の2月28日に自動車を1年間貸す約束をした場合は、その翌日である3月1日から起算し、1年後の起算日に応答する日(3月1日)の前日である2月29日の午後12時に期間は満了する。


Point 初日不算入の原則は、起算日からさかのぼる場合にも適用される。したがって、少なくとも会議の開催日の5日前に会議の開催の通知をすることが義務付けられている場合に、10月20日に会議を開催するには、その前日である10月19日午後12時から起算し、10月15日午前0時に期間は満了するので、少なくとも10月14日中には開催通知を発しなければならない。


(3) 年齢計算をする場合

 年齢は出生の日(誕生日)から起算する(年齢計算に関する法律1項)。つまり、年齢を計算するときは期間の初日が算入され、これは初日不参入の原則の例外にあたる。

 そして、年齢が1歳増える期間は、暦に従って計算し、起算日(誕生日)に応当する日の前日に(うるう年生まれで起算日に応当する日がないときは、2月の末日に)満了する(年齢計算に関する法律2項)。つまり、誕生日の前日の午後12時に年齢が1歳増えることになる。


Point1 平成10年1月1日に生まれた者の年齢は、平成10年1月1日から起算を始める。そして、年齢が1歳増えるのは起算日にあたる1月1日の前日の12月31日の午後12時なので、平成10年12月31日午後12時に1歳となる。したがって、平成10年1月1日に生まれた者が成年に達する(18歳になる)のは、平成27年12月31日午後12時である。


Point2 年齢が1歳増えるのは、起算日に応答する日の前日である。3月1日に生まれた者の年齢は、起算日にあたる3月1日の前日午後12時に1歳増えるので、平年は2月28日午後12時に、うるう年は2月29日午後12時に1歳増えることになる。


Point3 うるう年の2月29日に生まれた者は、うるう年には起算日にあたる2月29日があるので、その前日の2月28日午後12時に年齢が1歳増える。しかし、平年には起算日にあたる2月29日がないので、2月の末日である2月28日午後12時に年齢が1歳増えることになる。つまり、2月29日に生まれた者は、うるう年も平年も、2月28日午後12時に年齢が1歳増える。