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1建築基準法

堀川 寿和2021/12/21 15:09

 建築基準法は、建築物の敷地、構造、設備および用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康および財産の保護を図っている。

 以下この節において条文を引用する際は、「建築基準法」は「法」と、「建築基準法施行令」〔政令〕は「令」と、「建築基準法施行規則」〔国土交通省令〕は「規則」という。


建築物の構造および建築設備

(1) 居室の採光および換気

① 居室の採光

 住宅の居室(居住のための居室に限る。)には、採光のための窓その他の開口部を設け、その採光に有効な部分の面積は、その居室の床面積に対して、7分の1以上としなければならない(法28条1項)。


Point 居室の採光の規定は、「住宅、学校、病院、診療所、寄宿舎、下宿その他これらに類する建築物で政令で定めるものの居室」に適用されるが、事務所店舗などの用途に供する建築物には適用されない。このため、事務所や店舗などの居室の採光の規定が適用されない建築物を住宅に用途を変更して改築する場合、居室の採光の規定による制限をいかに充足するかが問題となることが多い。


② 居室の換気

 居室には換気のための窓その他の開口部を設け、その換気に有効な部分の面積は、その居室の床面積に対して、20分の1以上としなければならない(法28条2項)。


③ふすま等で仕切られた2室の取扱い

 ふすま、障子その他随時開放することができるもので仕切られた2室は、居室の採光・換気の規定〔上記①および②〕の適用については、1室とみなされる(法28条4項)。


(2) 居室の天井の高さ

 居室の天井の高さは、2.1m以上でなければならない(令21条1項)。

 居室の天井の高さは、室の床面から測り、一室で天井の高さの異なる部分がある場合においては、その平均の高さによる(同条2項)。

(3) 石綿その他の物質の飛散または発散に対する衛生上の措置

 建築物は、石綿その他の物質の建築材料からの飛散または発散による衛生上の支障がないよう、以下の①および②の基準に適合するものとしなければならない(法28条の2)。


① 建築物の石綿(アスベスト)対策

(a) 建築材料に「石綿等」〔石綿その他の著しく衛生上有害なものとして政令で定める物質〕を添加しないこと(同条1号)。
(b) 石綿等をあらかじめ添加した建築材料(石綿等を飛散または発散させるおそれがないものとして国土交通大臣が定めたものまたは国土交通大臣の認定を受けたものを除く。)を使用しないこと(同条2号)。

 「石綿等」〔石綿その他の著しく衛生上有害なものとして政令で定める物質〕としては、石綿のみが政令で指定されている(令20条の4)。

 石綿とは、天然の鉱石に含まれる繊維のことで、アスベストとも呼ばれる。石綿(アスベスト)の粉じんは、肺がんや中皮腫、肺繊維症(じん肺)の原因になるため、建築基準法で石綿の飛散のおそれのある建築材料の使用が規制されている。


Point 石綿等をあらかじめ添加した建築材料を使用することは、原則として禁止されている。ただし、例外的に、石綿等を飛散または発散させるおそれがないものとして国土交通大臣が定めたものまたは国土交通大臣の認定を受けたものは、使用することができる。たとえば、吹付けロックウールでその含有する石綿の重量が当該建築材料の重量の0.1%以下のものは、建築材料として使用することができる(国土交通省告示1172号)。


② 建築物のシックハウス対策

居室を有する建築物にあっては、石綿等以外の物質でその居室内において衛生上の支障を生ずるおそれがあるものとして政令で定める物質の区分に応じ、建築材料および換気設備について政令で定める技術的基準に適合すること(同条3号)。

「石綿等以外の物質でその居室内において衛生上の支障を生ずるおそれがあるものとして政令で定める物質」として、クロルピリホスおよびホルムアルデヒドの2種類の物質が、政令で指定されている(令20条の5)。クロルピリホスはシロアリ駆除剤として使用される物質であり、ホルムアルデヒドは合板や壁紙などを接着に用いる接着剤の防腐剤として使用される物質である。


Point1 居室を有する建築物を建築する場合には、クロルピリホスおよびホルムアルデヒドを含む建築材料の使用制限を受けることになる。また、ホルムアルデヒドを含む建築材料を使用しない場合でも、持ち込まれた家具からホルムアルデヒド等の化学物質が発散される可能性があるので、原則として換気設備の設置が義務付けられる(後述)。


Point2 シックハウス対策の規定は、建築基準法改正により、平成15年7月1日以降に着工される居室のある建築物に適用されるようになったが、新築の場合だけでなく、中古住宅の増築や改築を行う場合にも適用される。 


(4) 階段

① 原則

 階段の幅は、次の基準によらなければならない(令23条1項本文)。


階段の種別階段
1直上階の居室の床面積の合計が200㎡を超える地上階におけるもの120cm以上
2上記以外のもの75cm以上


② 例外

 屋外階段の幅は、次の基準によることもできる(同項ただし書)。


屋外階段の種別屋外階段
1直通階段(*)90cm以上
2その他の階段60cm以上

(*) 下記の(5)②に該当する直通階段。


(5) 特殊建築物等の避難および消火に関する技術的基準

 次のいずれかに該当する建築物は、廊下、階段、出入口その他の避難施設、消火栓せん、スプリンクラー、貯水槽そうその他の消火設備、排煙設備、非常用の照明装置および進入口ならびに敷地内の避難上および消火上必要な通路は、政令で定める技術的基準に従って、避難上および消火上支障がないようにしなければならない(法35条)。

(a) 一定の用途〔「共同住宅」を含む〕に供する特殊建築物
(b) 階数が3以上である建築物
(c) 政令で定める窓その他の開口部を有しない居室を有する建築物
(d) 延べ面積(同一敷地内に2以上の建築物がある場合においては、その延べ面積の合計)が1,000㎡をこえる建築物

 政令で定める技術的基準は、以下のとおり。


Point 賃貸不動産が、賃貸アパート・賃貸マンションなどの共同住宅である場合は、上記(a)に該当するため、以下の技術的基準に適合させなければならない。


① 廊下の幅

廊下の幅は、それぞれ以下の数値以上としなければならない(令119条)。


② 直通階段の設置

(a) 直通階段の設置義務

 建築物の避難階〔直接地上へ通ずる出入口のある階〕以外の階においては、避難階または地上に通ずる直通階段(傾斜路を含む。)を居室の各部分からその一に至る歩行距離が以下の数値以下となるように設けなければならない(令120条)。

 

(b) 2以上の直通階段を設ける必要がある場合

 建築物の避難階以外の階が下記のいずれかに該当する場合は、その階から避難階または地上に通ずる2以上の直通階段を設けなければならない(令121条)。

ⅰ)「共同住宅」の用途に供する階でその階における居室の床面積の合計が100㎡を超えるもの
ⅱ) ⅰ)以外の階で次のイ)またはロ)に該当するもの
イ)6階以上の階でその階に居室を有するもの(その階の居室の床面積の合計が100㎡を超えず、かつ、その階に避難上有効なバルコニー、屋外通路その他これらに類するものおよびその階から避難階または地上に通ずる直通階段で避難階段・特別避難階段の規定に適合するものが設けられているものを除く。)
ロ)5階以下の階でその階における居室の床面積の合計が避難階の直上階にあっては200㎡を、その他の階にあっては100㎡を超えるもの

 なお、主要構造部が準耐火構造であるか、または不燃材料で造られている建築物については、上記の床面積の合計の数値が、「100㎡」は「200㎡」と、「200㎡」は「400㎡」とされる。


③ 非常用の照明装置(令126条の4)

 次のいずれかに該当する建築物の居室およびこれらの居室から地上に通ずる廊下、階段その他の通路(採光上有効に直接外気に開放された通路を除く。)ならびにこれらに類する建築物の部分で照明装置の設置を通常要する部分には、非常用の照明装置を設けなければならない。

(a) 一定の用途〔「共同住宅」を含む〕に供する特殊建築物の居室
(b) 階数が3以上で延べ面積が500㎡を超える建築物の居室
(c) 窓その他の開口部で、採光に有効な部分の面積の合計が当該居室の床面積の20分の1以上となるものを有しない居室
(d) 延べ面積が1,000㎡を超える建築物の居室

 ただし、一戸建の住宅または共同住宅の住戸には、非常用の照明装置を設けなくてもよい。 


④ 非常用の進入口の設置(令126条の6)

(a) 設置義務

建築物の高さ31m以下の部分にある3階以上の階には、非常用の進入口を設けなければならない。

 非常用の進入口とは、火災などの災害時に、建築物の外部から消防隊が進入するための開口部である。


(b) 設置義務の免除

 次のいずれかに該当する場合には、非常用の進入口を設けなくてもよい。

ⅰ)非常用の昇降機(非常用エレベーター)を設置している場合
ⅱ)道または道に通ずる幅員4m以上の通路その他の空地に面する各階の外壁面に窓その他の開口部(直径1m以上の円が内接することができるものまたはその幅および高さが、それぞれ、75cm以上および1.2m以上のもので、格子その他の屋外からの進入を妨げる構造を有しないものに限る。)を当該壁面の長さ10m以内ごとに設けている場合
ⅲ)吹抜きとなっている部分その他の一定の規模以上の空間で国土交通大臣が定めるものを確保し、当該空間から容易に各階に進入することができるよう、通路その他の部分であって、当該空間との間に壁を有しないことその他の高い開放性を有するものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるものまたは国土交通大臣の認定を受けたものを設けている場合


⑤ 敷地内の通路

 敷地内には、屋外に設ける避難階段および屋外への出口から道または公園、広場その他の空地に通ずる幅員が1.5m(階数が3以下で延べ面積が200㎡未満の建築物の敷地内にあっては、90cm)以上の通路を設けなければならない(令128条)。


(6) 特殊建築物等の内装

 次のいずれかに該当する建築物または建築物の室は、政令で定めるものを除き、政令で定める技術的基準に従って、その壁および天井(天井のない場合においては、屋根)の室内に面する部分の仕上げを防火上支障がないようにしなければならない(法35条の2)。

(a) 一定の用途〔「共同住宅」を含む〕に供する特殊建築物
(b) 階数が3以上である建築物
(c) 政令で定める窓その他の開口部を有しない居室を有する建築物
(d) 延べ面積が1,000㎡をこえる建築物
(e) 建築物の調理室、浴室その他の室でかまど、こんろその他火を使用する設備または器具を設けたもの



建築物の敷地および構造

(1) 建蔽率

① 建蔽率

 建蔽率とは、建築物の建築面積の敷地面積に対する割合をいう(法53条1項)。




 たとえば、100㎡の敷地に50㎡の建物を建てた場合、建蔽率は100分の50であるから、50%となる。


② 建蔽率の制限

 自分が権利を持っている土地だからといって、建築物の集中するところで敷地いっぱいの建築物を建てると、日照、通風、採光や火災の延焼の危険について大きな問題を生じることになる。そこで、建築物の集中する都市計画区域や準都市計画区域においては、建蔽率に限度が設けられる。

 建蔽率の限度は、用途地域等の区分に応じて、次の数値となる(法53条1項)。


Point1 住居系および工業系の用途地域での建蔽率は、30%から80%の範囲で指定される。


Point2 商業系の用途地域での建蔽率は、60%から80%の範囲で指定される。 


(2) 容積率

① 容積率

 容積率とは、建築物の延べ面積の敷地面積に対する割合をいう(法52条1項)。



 たとえば、100㎡の敷地に、延べ面積250㎡の建物が建っていると容積率は100分の250で、250%となる。


② 容積率の制限

 建築物があると、その建築物に出入りする人や物の多さに十分対応できるだけの道路や下水道などの公共施設が必要となるが、建築物の集中するところで規模が大きすぎる建築物が建てられると、公共施設がそれに対応できなくなってしまう。そこで、公共施設の容量オーバーを防ぐために、容積率も、建築物の集中する都市計画区域や準都市計画区域においては限度が設けられる。

 容積率の限度は、用途地域等の区分に応じて、次の数値となる(法52条1項)。

用途地域等容積率の限度
第一種低層住居専用地域
第二種低層住居専用地域
田園住居地域
5/10、6/10、8/10、10/10、15/10、20/10のうち、
その地域に関する都市計画で定められた割合
第一種中高層住居専用地域
第二種中高層住居専用地域
第一種住居地域
第二種住居地域
準住居地域
近隣商業地域
準工業地域
10/10、15/10、20/10、30/10、40/10、50/10のうち、
その地域に関する都市計画で定められた割合
商業地域20/10、30/10、40/10、50/10、60/10、70/10、80/10、90/10、100/10、110/10、120/10、130/10のうち、その地域に関する都市計画で定められた割合
工業地域10/10、15/10、20/10、30/10、40/10のうち、
その地域に関する都市計画で定められた割合
工業専用地域
用途地域の指定のない区域5/10、8/10、10/10、20/10、30/10、40/10のうち、
特定行政庁が都道府県都市計画審議会の議を経て定めた割合


③ 前面道路の幅員による容積率の制限

 容積率は前面道路(敷地が接続している道路)の渋滞防止も目的としているので、前面道路の幅員が狭い場合は容積率の上限が都市計画で定められた上限よりもさらに厳しくなる場合がある。

前面道路(前面道路が2以上あるときは、その幅員の最大のもの)の幅員が12m未満である建築物の容積率は、その前面道路の幅員のメートルの数値に、法定乗数を乗じたもの以下でなければならない(法52条2項)。

 法定乗数は、原則として(a)住居系の用途地域は10分の4、(b)その他の用途地域は10分の6である。


定期報告制度

 建築物の敷地、構造および建築設備等は、建築物の建築等を行う際に、建築確認や完了検査などの手続によって、その適法性がチェックされているが、建築物の使用が開始された後も、引き続き、適法な状態を確保し続けることが重要である。そこで、建築物の敷地、構造および建築設備等について、定期的な調査・検査とその結果の報告を求める制度が、定期報告制度である。「法定点検」と呼ばれることもある。


(1) 建築物の定期報告制度(法12条1項)

① 定期報告制度の対象となる建築物

 定期報告制度の対象となるのは、以下に該当する建築物(国等の建築物を除く。)である。

(a) 「建築確認の対象となる特殊建築物」〔一定の用途に供する建築物で、その用途に供する部分の床面積の合計が200㎡を超えるもの〕で、安全上、防火上または衛生上特に重要であるものとして政令で定めるもの
(b) (a)以外の「特定建築物」〔建築確認の対象となる特殊建築物その他政令で定める建築物〕で、特定行政庁が指定するもの

「共同住宅」で、その用途に供する部分の床面積の合計が200㎡を超える場合は、「建築確認の対象となる特殊建築物」となるので、賃貸不動産が賃貸アパート・賃貸マンションなどの共同住宅である場合は、その規模〔階数・床面積〕により、定期報告制度の対象となる場合がある。


② 建築物の定期報告等

 上記①の特殊建築物および特定建築物の所有者(所有者と管理者が異なる場合においては、管理者。)は、これらの建築物の敷地、構造および建築設備について、国土交通省令で定めるところにより、定期に、一級建築士もしくは二級建築士または「建築物調査員」〔建築物調査員資格者証の交付を受けている者〕にその状況の調査(これらの建築物の敷地および構造についての損傷、腐食その他の劣化の状況の点検を含み、これらの建築物の「建築設備等」〔建築設備および防火戸その他の政令で定める防火設備〕についての検査を除く。)をさせて、その結果を「特定行政庁」〔建築主事を置く地方公共団体の長〕に報告しなければならない

③ 定期報告の時期および定期調査の項目

(a) 定期報告の時期

 報告の時期は、建築物の用途、構造、延べ面積等に応じて、おおむね6月から3年までの間隔をおいて特定行政庁が定める時期とされる(規則5条1項)。

 特定建築物の「共同住宅」の定期報告は、3年ごととされている。


(b) 定期調査の項目

 定期調査は、建築物の敷地、構造および建築設備の状況について安全上、防火上または衛生上支障がないことを確認するために十分なものとして行うものとし、当該調査の項目、方法および結果の判定基準は国土交通大臣の定めるところによらなければならない(規則5条2項)。具体的には、告示(国土交通省告示282号)で定められており、おもな調査内容は、敷地、構造、防火、避難の4項目である。


(2) 建築設備等の定期報告制度(法12条3項)

① 定期報告制度の対象となる建築設備等

 建築設備等とは、建築設備および防火戸その他の政令で定める防火設備をいう。

 定期報告制度の対象となるのは、以下に該当する建築設備等(国等の建築物に設けるものを除く。)である。

(a) 「特定建築設備等」〔昇降機および特定建築物の昇降機以外の建築設備等〕で、安全上、防火上または衛生上特に重要であるものとして政令で定めるもの
(b) (a)以外の特定建築設備等で特定行政庁が指定するもの


② 建築設備等の定期報告等

 上記①の特定建築設備等の所有者(所有者と管理者が異なる場合においては、管理者。)は、これらの特定建築設備等について、国土交通省令で定めるところにより、定期に、一級建築士もしくは二級建築士または「建築設備等検査員」〔建築設備等検査員資格者証の交付を受けている者〕に検査(これらの特定建築設備等についての損傷、腐食その他の劣化の状況の点検を含む。)をさせて、その結果を特定行政庁に報告しなければならない。


③ 定期報告の時期

 報告の時期は、建築設備等の種類、用途、構造等に応じて、おおむね6月から1年までの間隔をおいて特定行政庁が定める時期とされる(規則6条1項)。


Point 昇降機の所有者または管理者は、特定行政庁が定める時期に、昇降機定期点検報告書を特定行政庁に提出しなければならない。

(3) 調査・検査の資格者

① 一級建築士および二級建築士

 一級建築士および二級建築士は、建築物の調査・建築設備等の検査のすべて実施することができる(法12条1項、3項)。


② 建築物調査員および建築設備等検査員(規則6条の5、6条の6)

 一級建築士および二級建築士のほかに、建築物の定期調査および建築設備等の定期検査を行うことができるのは、建築物調査員および建築設備等検査員である。

 建築物調査員および建築設備等検査員の資格は、交付を受けている建築物調査員資格者証および建築設備等検査員資格者証の種類により、特定建築物調査員、建築設備検査員、防火設備検査員および昇降機等検査員に区分され、資格に応じて、調査・点検を行うことができる対象が異なっている。


【資格者と調査・検査の対象】

(*1) 昇降機を除く。

(*2) 建築設備についての検査と併せて検査を一体的に行うことが合理的であるものとして国土交通大臣が定めたものに限る。

(*3) (*2)の国土交通大臣が定めたものを除く。