- 4.建築・設備
- 2.建物の維持保全
- 建物の維持保全
- Sec.1
1建物の維持保全
■建物の維持保全
(1) 維持保全の内容
維持保全とは、建物および建築設備等についての点検、保守、運転・監視、清掃、修繕および改修を行うことをいう。
それぞれの意味は、以下のとおり。
点検 | 建物等の機能や劣化の状態を調査することをいう。日々機器の外観、運転状態等を確認する日常点検と一定期間ごとに行う定期点検がある。 |
保守 | 建物等の必要とする機能や性能を維持する目的で行う、消耗品等の交換、汚れの除去、注油、塗装等の補修、部品の調整等の軽微な作業をいう。 |
運転・監視 | 設備機器を稼働させ、その運転状況等を監視および制御することをいう。 |
清掃 | 建物等を掃除し綺麗にすることをいう。建物等を清潔に保持することにより、材料劣化の原因を除去し、腐食等の進行を遅らせ、機器の性能を維持するなど重要な役割がある。 |
修繕 | 建物等について、損耗、劣化、破損および故障により損なわれた機能を回復させる行為をいう。 |
改修 | 建物等の改良、模様替え、建築設備や建物の附帯施設等の更新をいう。 |
(2) 維持保全の分類
維持保全は、事故や不具合への取組みの違いから、一般的に、次の2つに分類される。
① 予防保全
予防保全とは、事故や不具合が生じる前に、あらかじめ適切な処置を施す保全である。
定期点検等による建物の機能や劣化の状態の把握によって、故障等の不具合が生じる可能性が高いと予測された場合は、法定耐用年数どおりに機器を交換することにとらわれることなく、予防的な措置として機器の交換等を行うことが必要になる。建物に求められる適切な保全は、この予防保全である。
② 事後保全
事後保全とは、事故や不具合が生じてから、修繕等を行う保全である。蛍光管の球切れなどについては、滞りなく適切な事後保全を行うことが重要となる。
■点検業務と管理業者の役割
(1) 日常点検業務に関する費用の見積りと結果報告
貸主に対し、日常点検業務に関する費用の見積りと結果報告は必ず行わなければならない。
日常点検業務の点検項目は多岐にわたり、とくに、法定点検においては、資格者による点検作業と所轄官庁への報告が義務付けられているため費用がかかるし、建物は時間とともに劣化するので、耐用年数がきた設備は交換しなくてはならないが、これらを貸主に理解してもらう必要があるからである。
(2) 巡回点検業務
巡回点検は、周期を決めて継続的に行う業務であり、管理業者が重要な役割を担うものである。
時間経過と状態変化を把握できるようにすることが重要であるため、管理業者は建物の部位や現象に分けてリストを作り、誰が行っても点検項目を間違いなく点検できるようにするとともに、点検結果を整理して保管しておかなければならない。
(3) 入居者からの情報の活用
管理業務として建物等の点検を行う場合には、入居者からの情報を活用すべきである。不具合などは、建物等を使用している入居者のほうがよく知っている場合もあるからである。そのために、入居者からの連絡を受け付け、記録し、活用する体制を整えることも、管理業者の役割である。
■計画修繕・長期修繕計画
(1) 計画修繕の必要性
建物を長期にわたって良好に維持管理していくためには、一定の年数の経過ごとに、計画的に修繕を行っていくことが必要である。修繕計画を立て、これに基づき行う計画的な修繕を、計画修繕という。
修繕を計画的に実施することは、貸主にとって目先の収支を悪化させるようにも見えるが、中長期的には、修繕計画による的確な修繕の実施により、賃貸経営の収支上プラスに働くこともあり、計画修繕が望まれる。
(2) 計画修繕の実施
計画修繕の実施に当たっては、計画された修繕部位を点検、調査した上で状況を把握することが重要である。これにより得られた情報と修繕計画をもとに、工事の基本計画を策定し、施工業者を選定する。
修繕工事は、日常生活の中で行われる工事であるため、騒音や振動により居住者等に迷惑をかける問題があり、配慮しなければならない。
(3) 長期修繕計画の策定
長期修繕計画とは、計画修繕を実施するために、25年から30年程度を計画の対象期間として、計画修繕の対象となる建物の部分、修繕時期、必要となる費用等について、あらかじめ定めておくことである。
計画修繕を実施していくためには、長期修繕計画を策定する必要がある。長期修繕計画を策定することにより、将来見込まれる修繕工事・改修工事の内容、時期、概算の費用等が明確になるので、計画修繕を実施するための費用を試算することができる。これをもとに、修繕管理の費用を賃貸不動産経営の中に見込まなければならない。
なお、長期修繕計画は、定期的に見直しをすることによって、より精度を高めることができる。