• 設備・会計ー6.管理組合の会計
  • 1.管理組合会計の特徴
  • 管理組合会計の特徴
  • Sec.1

1管理組合会計の特徴

堀川 寿和2021/12/17 12:14

管理組合会計の目的

 管理組合会計の目的は、管理組合の活動状況や財政状態を組合員に対して説明・報告することである。管理費・修繕積立金など管理組合の収入は限られているなかで、マンションの建物等の維持保全を適切に行っていくためには、費用を最小限に抑えつつ、最大限の効果を上げる必要があり、管理組合の活動の合理化・効率化が求められる。予算を作成し、予算と決算の差異を分析することで、管理組合の活動状況を評価し、その後の活動内容をより合理的・効率的なものにすることができる。


Point 営利企業の会計は損益を計算することを目的としているのに対して、管理組合の会計は、予算と決算を対比し差異を分析することによって、予算執行の評価をすることに重きをおいている。


会計処理の方法

 会計処理の方法には、代表的なものに企業会計の原則によるものと公益法人会計の原則によるものがある。

 管理組合会計の会計処理については、法律によって特に規定されていないが、管理組合は営利を目的としていないため、公益法人会計の原則に準拠した会計処理が望まれる。ただし、実際には、企業会計の原則に基づく会計処理が広く行われている。


管理組合会計の会計原則

 管理組合会計の会計原則は、企業会計の原則の一般原則を基礎としつつ、公益法人会計の原則の一般原則も取り入れている。会計処理をする際は、以下の原則に従わなければならない。


(1)管理組合会計の一般原則

① 真実性の原則

計算書類は、管理組合の財務状態等に関する真実な内容を明瞭に表示するものでなければならない。

 事実とは異なる虚偽の内容の計算書類を作成してはいけないということである。マンション管理組合の決算時に作成される計算書類としては、(a)収支報告書、(b)貸借対照表、(c)財産目録、(d)備品台帳などがある。


② 正規の簿記の原則

計算書類は、正規の簿記の原則に従って、正しく記帳された会計帳簿に基づいて作成しなければならない。


Point 企業会計原則の一般原則でもある正規の簿記の原則は、整然、明瞭な会計帳簿を作成することを要求しており、必ずしも複式簿記によることを要求してないが、管理組合の会計においては、複式簿記による会計帳簿を作成することが好ましく、また、適している。


③ 明瞭性の原則

計算書類によって、利害関係者に対し必要な会計事実を明瞭に表示しなければならない。


Point 企業会計原則の一般原則でもある明瞭性の原則は、計算書類(財務諸表)が明瞭に表示されており、利害関係者に財務諸表に関する判断を誤らせないよう要求したものである。


④ 継続性の原則

会計処理の原則・手続および計算書類の表示方法は、毎年度これを継続して適用して、みだりに変更してはならない。


Point 企業会計原則の一般原則でもある継続性の原則は、計算書類(財務諸表)の複数年度にわたる期間比較を可能とさせるため、会計処理の原則や手続を厳格に継続して適用することを要求しており、みだりにこれを変更してはならない。なお、合理的な理由があれば変更も認められ、いかなる場合でも変更を認めていないわけではない。


⑤ 保守主義の原則

管理組合の財政に不利な影響を及ぼす可能性がある場合には、これに備えて適当に健全な会計処理をしなければならない。

 過大な収入を見込んだり、支出を過少に見積ったりしてはならないということである。


⑥ 単一性の原則

目的に応じて異なる形式の計算書類を作成する必要がある場合、それらの内容は、信頼しうる会計記録に基づいて作成されたものであって、政策の考慮のために事実の真実な表示をゆがめてはならない。


Point 企業会計原則の一般原則である単一性の原則は、計算書類(財務諸表)の形式は各種利害関係者への報告目的によって異なることを容認しているが、1つの正確な会計帳簿から作成されたものでなければならず、いわゆる二重帳簿を禁止しているものである。

【参考 管理組合会計、企業会計および公益法人会計の一般原則の比較】

管理組合会計の一般原則企業会計の一般原則公益法人会計の一般原則
① 真実性の原則
② 正規の簿記の原則
③ 明瞭性の原則
④ 継続性の原則
⑤ 保守主義の原則
⑥ 単一性の原則
① 真実性の原則
② 正規の簿記の原則
③ 資本取引・損益取引区分の原則
④ 明瞭性の原則
⑤ 継続性の原則
⑥ 保守主義の原則
⑦ 単一性の原則
① 真実性の原則
② 正規の簿記の原則
③ 継続性の原則
④ 重要性の原則


Point 企業会計原則の「一般原則」は、その多くが管理組合の会計においても適用されている。


(2) 管理組合会計に特有の原則

① 予算準拠主義の原則

管理組合の収入および支出は、予算に基づいて行わなければならない。

 予算は、総会の決議によって定められ、これに基づいて管理組合は活動を行う。予算と実績を比較検討することにより、効率的な管理を実現することができる。


② 目的別会計(区分経理の原則)

管理組合の会計は、日常の管理に充てるための一般会計(管理費会計)と将来の大規模修繕に充てる資金を留保するための特別会計(修繕積立金会計)とに区分して経理しなければならない。


Point 管理組合の会計においては、目的に応じた会計処理を行うべきであり、管理規約等において管理組合の会計処理方針を明確に定めておくことが望ましい。