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1建築材料

堀川 寿和2021/12/17 09:28

コンクリート

(1) コンクリートの特徴

 コンクリートはマンションの建築材料として欠くことができない。それは、コンクリートの材料は比較的廉価で入手できるため経済性に優れており、コンクリートは水によって簡単に硬化し、自由な形成が可能だからである。

 長所として、コンクリートは圧縮強度が大きい、地震や風に対する剛性が高い、耐火性・防音性・耐久性に優れることなどがある。ただし、短所として、コンクリートは引張強度が小さい、乾燥収縮が大きい、ひび割れが生じやすい、重量が大きい、解体・廃棄が困難なことなどがある。

 コンクリートは、温度上昇に伴う膨張の程度が鋼材とほぼ等しいため、鋼材との相性が良く、コンクリートの長所で鋼材の短所を補った鉄筋コンクリートとしても利用される。


(2) コンクリートの組成

 コンクリートの組成は、一般にセメント、水、細骨材、粗骨材および混和材料からなり、内部には空隙をともなう。

 まだ固まる前の状態にあるコンクリートはフレッシュコンクリートと呼ばれる。また、工場で生産され、まだ固まらない状態のまま現場にコンクリートミキサー車などで運搬されるコンクリートは、レディミクストコンクリートと呼ばれる。

 コンクリートから粗骨材を除いたものをモルタルといい、細骨材と粗骨材を除いたものをセメントペーストという。


【コンクリートの組成】


セメント
細骨材
(砂など)
粗骨材
(砂利など)
コンクリート
モルタル×
セメントペースト××


① セメント

 セメントはコンクリートを構成する材料の1つであり、構成材料の体積の2割を占める。

 セメントは、水を加えると、水和反応という化学反応を起こして固まる。このセメントと水の反応は発熱反応であり、この反応熱を水和熱という。

 水を加えると固まるというセメントの性質を利用して、コンクリートでは、セメントを、骨材を接着し結びつけるための材料として用いる。セメントという言葉には接着や結合という意味がある。

 セメントは、ポルトランドセメントと混合セメントに分けることができる。

イ) ポルトランドセメント

(a) 普通ポルトランドセメント

 普通ポルトランドセメントは、単にポルトランドセメントともいう。セメントの中でもっとも多く使われているセメントあり、マンションで使われているセメントもほとんどがこれである。石灰石と粘土を主原料とする。

 ポルトランドセメントの製造は、原料の混合・粉砕工程、クリンカーの生成工程、仕上げ工程の順で行われる。まず、セメントの原料となる石灰石と粘土にけい石、鉄さい(酸化鉄)などを加えて混合・粉砕する。これをロータリーキルン(回転窯)に入れて約1,450度まで加熱すると、焼成されてクリンカーとなる。このクリンカーに適量の石こうを加えて粉砕し微粉末にしたものがポルトランドセメントである。セメントは水を加えるとすぐに固まるため、石こうはセメントの硬化速度を調整するために加えられる。


(b) 早強ポルトランドセメント

 セメントの微粉末粒子を細かくするほど、比表面積が高まり水と反応しやすくなるため、硬化速度が速くなる。粒子をさらに細かくして硬化速度を速くしたものを早強ポルトランドセメントという。早強ポルトランドセメントは、短時間で大きな強度を得ることができる。また、水和熱が普通ポルトランドセメントに比べて高いため、低温時でも強度を発揮し、寒冷期の工事に適している。ただし、発熱により膨張するため、その後の収縮でひび割れが起きやすいという欠点がある。


ロ) 混合セメント

 混合セメントは、セメントの製造の仕上げ過程で、クリンカーと石こうの他に、微粉末の混合材を混ぜて、混合・粉砕したものである。混合材には、高炉水砕スラグ、フライアッシュ、シリカ質混合材などがあり、これらを混ぜたセメントを高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカセメントという。混合セメントを製造する過程における二酸化炭素排出量は、普通ポルトランドセメントを製造する場合よりも少ない。とくに、高炉セメントの場合は普通ポルトランドセメントに比べて二酸化炭素排出量を約40%削減することができる。


(a) 高炉セメント

 高炉セメントは、クリンカーと石こうのほかに、製鉄所の高炉から排出される高炉水砕スラグを混合して作ったセメントである。高炉水砕スラグはそれだけでは水を加えても硬化しないが、普通ポルトランドセメントと混合して水を加えると徐々に水和反応を起こして硬化する性質をもっている(潜在水硬性)。水和反応の進行は、普通ポルトランドセメントよりもゆっくりである。そのため、高炉セメントを使用したコンクリートは、普通ポルトランドセメントを用いたものよりも初期強度は低く養生期間は長くなる。しかし、長期強度は普通ポルトランドセメントを用いたもの以上となる。水和反応が遅いため、水和熱の発生が抑えられる。海水や酸などの化学物質に強いという性質がある。

(b) フライアッシュセメント

 フライアッシュセメントは、クリンカーと石こうのほかに、火力発電所の石炭燃焼時に発生する微粉状の石炭灰であるフライアッシュを混合して作ったセメントである。フライアッシュに含まれるガラス質物質が、セメントが水和反応をする際に生じる水酸化カルシウムと反応して、結合力をもつ化合物をつくる性質がある。この反応をポゾラン反応という。この化合物が微小な空隙を埋めることで、フライアッシュセメントを使用したコンクリートは、長期強度が普通ポルトランドセメントを用いたものよりも高くなる。硬化後の組織は緻密になるため水が浸透しにくいため、水密性を要求される構造物に用いられる。また、水和反応はゆっくりと進行するため、高炉セメントと同様に、水和熱は低く抑えられる。乾燥時の収縮が小さいため、ひび割れのおそれも小さい。フライアッシュは微細な球状の粒子であるため、比較的少ない水の量で、軟らかく扱いやすい生コンクリートをつくることができる。このように、生コンクリートが軟らかく扱いやすいことを、ワーカビリティーがよいという。


(c) シリカセメント

 シリカセメントは、クリンカーと石こうに加えて、シリコンやフェロシリコンなどを製造するときの副産物であるシリカフュームという天然シリカ質を混合して製造したセメントである。シリカフュームセメントともよばれる。シリカセメントもフライアッシュセメントと同様に、ポゾラン反応によって硬化するセメントであり、硬化後の組織は緻密になる。普通ポルトランドセメントを使用するコンクリートに比べて、水密性は高く、長期強度も増す。また、化学物質に対する耐性も強い。


② 水

 水は清浄なものでなければならず、コンクリートの品質を確保するためには、有機物や塩分を含んでいてはならない。有機物はコンクリートの硬化を妨げ、塩分は鉄筋コンクリートの鉄筋の発錆を促すからである。とくに、鉄筋コンクリートを作る際には、海水を用いてはならない。


③ 骨材

 コンクリートを構成する材料である砂や砂利などの材料を骨材という。骨材はコンクリート構成材料の体積の7割を占める。


イ) 細骨材・粗骨材

 コンクリート用骨材は、その粒子の大きさにより細骨材と粗骨材に分類される。


(a) 細骨材

 5㎜のふるいにかけて、粒径が小さく通過したものを細骨材という。砂などがある。


(b) 粗骨材

 5㎜のふるいにかけて、粒径が大きく通過しないものを粗骨材という。砂利などがある。

ロ) 天然骨材・人工骨材

 コンクリート用骨材は、人工的に作られたものかどうかにより、天然骨材と人工骨材に分類される。


(a) 天然骨材

 川や山、海などから採取してほとんど加工せずに使うものを天然骨材という。採取した場所から川砂・川砂利、山砂・山砂利、海砂・海砂利などがある。

 コンクリートの強度を維持するために骨材に求められる性質は、適当な硬度と耐久性があり、吸水率が少なく、丸みを帯びた形状で、適度な粒度分布があり、有機物や塩分を含有していないものである。この点で、川砂や川砂利が最も骨材に適しており、かつてはこれが最も利用されてきた。しかし、環境保全などのため採取地が限定されるので、山や海で採取されるものや輸入のもの、人工骨材に置き換わってきている。ただし、山で採取されるものは有機物が含まれ、海で採取されるものには塩分が含まれる。これらを骨材として使用する際には、コンクリートの品質を確保するために、有機物や塩分を適切に除去しなければならない。


(b) 人工骨材

 粉砕するなど人工的に加工して粒径をそろえたものを人工骨材という。岩石を加工した砕砂・砕石や、高炉スラグを加工したスラグ砕砂・スラグ砕石などがある。また、コンクリート廃材から取り出した再生骨材もある。


ハ) 軽量骨材・普通骨材・重量骨材

 コンクリート用骨材は、骨材の比重により、普通骨材、軽量骨材、重量骨材に分類される。


(a) 普通骨材

 天然骨材である川砂・川砂利や、人工骨材である砕砂・砕石などは普通骨材である。この普通骨材を基準にして、これよりも比重が軽いものが軽量骨材、重いものが重量骨材である。


(b) 軽量骨材

 軽量骨材は、軽量のコンクリートを作るために使用される。天然の軽量骨材としては、軽石・溶岩・火山礫などがある。ただし、骨材の強度は小さく、吸水率も大きい。これを使用したコンクリートは、強度が劣るため、主体構造に用いることはできず、耐火被覆材や断熱材、間仕切り壁として使われる。人工の軽量骨材としては、頁岩(けつ岩)・粘土・フライアッシュなどをロータリーキルン(回転窯)で加熱・焼成したものがある。人工軽量骨材は強度が大きく吸水率も小さいため、構造用のコンクリートとしても使用することが可能である。


(c) 重量骨材

 重量骨材には、磁鉄鉱・褐鉄鋼・重晶石などがある。重量骨材を用いると、放射線を遮蔽する効果が得られることから、放射線遮蔽用のコンクリートに用いられる。

④ 混和材料

 コンクリートやモルタルの性質を改良するための材料を総称して混和材料という。コンクリートやモルタルのワーカビリティーを向上させたり、コンクリートの品質を向上させたりするなどの一定の効果を得るために、コンクリートやモルタルを作る際に添加される。主な混和材料に、次のようなものがある。


イ)AE剤

 AE剤は、空気連行剤ともよばれ、界面活性剤の一種である。これを添加すると、コンクリート内に微小な空気泡が連行され、この空気泡が均質に分布することで、セメント粒子を分散させる。その結果、比較的少量の水でもワーカビリティーが高まる。AE剤の減水率は8%程度とされる。余分な水を抑えながら水和反応を高めるので、硬化後も空隙の少ない緻密な組織となり、コンクリートの耐久性も向上する。AE財が使用されると、硬化後にコンクリート中に含まれる水分が凍結して膨張したときも、コンクリート中に含まれる微小な空気泡がクッションとなり、コンクリートが破壊されるのを防止する効果がある(耐凍害性)。


ロ) 減水剤

 減水剤は、陰イオン界面活性剤である。これを添加すると、陰イオンがセメント粒子の表面に吸着し、セメント粒子を分散させる。その結果、比較的少量の水でワーカビリティーを高め、コンクリートの耐久性や水密性を向上させる。AE剤のような、空気連行性はない。


ハ) AE減水剤

 AE減水剤は、AE剤と減水剤の両方の効果を有するものである。空気連行性能もち、単位水量を減少させる。AE減水剤の減水率は12%程度であり、AE剤よりも優れている。減水率が18%から20%となる高性能AE減水剤も開発されており、現在広く使われている。


ニ) 凝結・硬化遅延剤

 凝結・硬化遅延剤は、硬化を遅らせる効果があり、水和熱の発熱も抑える。これは、レディミクストコンクリートの運搬中や打込み中に凝結してしまわないよう、初期の水和反応を遅らせるために用いられる。生コンクリートの運搬中や打込み中に凝結・硬化してしまうと、コンクリートの強度を損なうことになる。


ホ) 凝結・硬化促進剤

 凝結・効果促進剤は、水和反応を促進し硬化を促す効果がある。早期に強度を得ることが必要となる工事に用いられ、水中工事や寒冷地の工事などにも用いられる。

へ) 気泡剤・発泡剤

 気泡剤や発泡剤は、コンクリートの比重を軽くするために用いられるものであり、コンクリート内に多量の空気を含ませるものである。

気泡剤には、界面活性剤などが用いられる。これで空気泡を作って、生コンクリートの中に混ぜ込み、そのまま硬化させるものである。発泡剤には、アルミニウムの粉末などが用いられる。アルミニウム粉末の場合は、コンクリート原料のアルカリ成分と反応することで水素ガスを発生し、これが硬化後に細かい気泡を作り出す。気泡剤・発泡剤を用いて作られるコンクリートは気泡コンクリートとよばれる。


⑤ 空隙

 空隙とはコンクリート中に生じるすき間のことである。空隙は、練混ぜ・打込みの際に発生するものや、コンクリートの打込み後に混錬水の一部が乾燥により失われることなどにより発生するものがある。空隙は少ないほうが良質なコンクリートといえる。


(3) コンクリートの種類

① 普通コンクリート

 普通コンクリートは、骨材に普通骨材を用いた一般的なコンクリートである。比重が2.2t/㎥から2.4t/㎥程度のものが多い。


② 軽量コンクリート

 軽量コンクリートは、骨材に軽量骨材を用いた普通コンクリートよりも比重の小さいコンクリートの総称であり、比重が2.0t/㎥以下のものをいう。軽量であり、断熱効果が大きく、耐火被覆材や断熱材、間仕切り壁などに用いられるほか、鉄骨造の壁・床・屋根材、外壁材などとしても用いられる。天然軽量骨材を用いる場合は、強度に劣るため、主体構造の材料には適さない。


③ 重量コンクリート

 重量コンクリートは、骨材に重量骨材を用いたコンクリートであり、比重が3.0t/㎥以上のものをいう。おもに、放射線遮蔽用や水中コンクリート建造物用として用いられる。


④ 気泡コンクリート

 気泡コンクリートは、内部に多量の小気泡を含ませて作った多孔質のコンクリートである。普通コンクリートの構成材料に混和材料として気泡剤や発泡剤を添加して作られる。気泡の混入量や骨材の種類・配合にもよるが、比重は0.5から1.2程度のものが多い。軽量コンクリートにも分類できる。気泡コンクリートは軽量で、耐火性や断熱性に優れているため、外壁材や床材、断熱材、耐火被覆材などとして用いられる。ただし、吸水性が大きいので、外壁など、使用場所によっては防水処理をしなければならない。

 気泡コンクリートを用いた代表的な製品に板状に成形されたALCパネルがある。ALCパネルは、養生工程で高温高圧蒸気窯を用いるのが特徴であり、この養生方法をオートクレーブ養生という。

(4) コンクリートの施工

 コンクリートの施工は、材料の配合(調合)、練混ぜ、打込み、養生の工程順で行われる。


① 材料の配合(調合)

 まず、セメント、水および骨材(細骨材・粗骨材)を混合する割合、また、混和材料を加える割合を決めなければならない。この配合(調合)によって、ワーカビリティーや圧縮強度などが決まる。骨材が堅固で、セメントペースト量や水量が最小限度であるほど圧縮強度が強く耐久性に優れたコンクリートとなる。圧縮強度を考慮して、水セメント比、細骨材と粗骨材の混合比などが決定される。


イ) 水セメント比

 水セメント比とは、フレッシュコンクリートに含まれるセメントペースト中のセメントに対する水の質量比をいう。水の質量をW、コンクリートの質量をCとすると、水セメント比はW/Cであらわされる。

 コンクリートの強度は、水とセメントの比率により大きな影響を受ける。コンクリートの強度は、水セメント比の逆数(C/W)に比例するので、水分の比率が少ないほど強度、耐久性は増大する。しかし、水分の比率が少ないとセメントペーストの粘り気が強くなり、ワーカビリティーは低下する。水分の比率多いとセメントペーストの流動性が高まってワーカビリティーは向上するが、圧縮強度は低くなり、乾燥収縮による亀裂が生じやすくなる。そこで、必要に応じて適量のAE減水剤などの混和材料を添加することで調整される。


ロ) ワーカビリティー

 ワーカビリティーとは、コンクリートの打ち込み作業の難易程度をいう。生コンクリートの粘り気が強すぎると、打込みの際に、型枠の中で材料が分離したり、型枠の隅々や鉄筋の周囲までコンクリートが十分充填されず空隙が生じたりといった問題が生じるため、適度な軟度(流動性)が必要とされる。そこで、ワーカビリティーは施工軟度ともよばれる。ワーカビリティーは、スランプ試験などによって評価される。


ハ) スランプ試験
 コンクリートの軟度を測定する方法として、スランプ試験がある。スランプ試験では、生コンクリートの軟度が、スランプ値およびスランプフロー値という数値で示される。スランプ試験は、円錐台の形をした高さ30㎝のスランプコーンとよばれる金属製の容器に生コンクリートを詰め、スランプコーンを鉛直に引抜くことにより行う。その直後に測定した、生コンクリートの頂部が下がった距離がスランプ値、水平方向に広がった直径をスランプフロー値という。それぞれ値が大きいほど軟度(流動性)が高いといえる。建築物の基礎などでは所要スランプ値は15㎝から18㎝程度が望ましいとされる。

② 練混ぜ
 練混ぜとは、コンクリートの材料を練混ぜることである。配合が適正であっても、練混ぜが不十分であったり、時間をかけすぎたりすると、コンクリートの品質は低下する。

③ 打込み
 打込みとは、生コンクリートを型枠に流し込むことをいう。その際には、気泡などが入らないよう、鉄筋・鉄骨の周囲や型枠の隅々にまで生コンクリートを充てんしなければならない。

④ 養生
 打込みした生コンクリートは、水和反応により、凝結したあと硬化する。コンクリートの強度や耐久性など一定の品質を確保するためには、一定期間、硬化に適した温度と湿度を保ち、有害な影響を受けないよう保護しなければならない。これを、養生という。
 打込みの後、5日間以上、コンクリート温度を2℃以上に保たなければならない。そのため、寒冷期には、コンクリートを寒気から保護する必要がある。また、水和熱により部材断面の中心温度が外気温より25℃以上高くなるおそれがあるときは、表面部の温度が急激に冷却しないようにするなどの、温度応力の悪影響が生じないような養生を行う。
 打込みの後、普通ポルトランドセメントは5日間以上、散水その他の方法により表面を湿潤に保たなければならない。また気温が高かったり、直射日光をうけたりする場合には、コンクリート面が乾燥しないようにしなければならない。
 硬化初期のコンクリートには有害な振動や衝撃を与えてはならない。また、打込み後少なくとも1日間はその上を歩行してはならない。作業をする必要がある場合は、影響を与えないよう保護しなければならない。

(5) コンクリートの中性化
 コンクリートの中性化とは、空気中の二酸化炭素(炭酸ガス)の作用により、コンクリートが持つ強アルカリ性が徐々に失われ、中性に近づくことである。

① コンクリートの中性化
 コンクリートは強アルカリ性の性質(pH11以上)をもっている。しかし、コンクリート中の水酸化カルシウムが空気中の二酸化炭素と反応して炭酸カルシウムに変化すると、コンクリートは中和され、アルカリ性の性質を失っていく。一般に、pH10以下になるとコンクリートの中性化と判断される。中性化はコンクリート表面から始まり内部に向かって進んでいく。

② 中性化と鉄筋コンクリート
 中性化が進行しても、コンクリート自体の強度、耐久性は低下しない。しかし、鉄筋コンクリートの場合は、コンクリートが中性化すると、鉄筋の防錆効果を失い、内部の鉄筋が錆びやすい状況になるため、鉄筋コンクリート構造の強度を低下させる。
 コンクリートが強アルカリ性であれば、鉄筋の周囲に酸化を防ぐ不動態皮膜がつくられ、鉄筋が錆びることはない。しかし、コンクリートの中性化が内部まで進行し鉄筋位置にまでおよぶと、皮膜が破壊され、水や酸素の影響で鉄筋が錆び始める。鉄筋は錆びると膨張するため、コンクリートにひび割れや剥離を生じる。鉄筋が空気に触れるようになると、さらに錆びは進行し、ひび割れや剥離が多くなったり、ひび割れ幅が広がったりする。

③ 中性化の特徴
 中性化が進行する速度は、コンクリート材料の配合(調合)や環境条件などの影響により異なる。また施工不良があるとその部分からも中性化が進行する。
コンクリートの組織が緻密なほど透気性が小さいため中性化の進行は遅くなるので、水セメント比が小さいほど中性化速度は遅くなる。また、水セメント比が一定であると、普通ポルトランドセメントよりも混合セメントを使用したコンクリートのほうが中性化速度は速い。
 環境条件は、一般に空気中の二酸化炭素濃度が高いほど中性化の進行は早くなるので、打ち放しコンクリートの場合、中性化は屋外側よりも屋内側のほうが進行しやすい。中性化を生じさせる主な要因は空気中の二酸化炭素の作用であるが、酸性雨などによっても中性化は促進される。

④ 中性化に影響を及ぼすコンクリートの欠陥
イ) コールドジョイント
 コールドジョイントとは、コンクリートを打ち重ねたときに、コンクリートの上下の層が一体化することなく、コンクリートの打重ね面にできてしまった分離面をいう。打重ね間隔をとりすぎて、先に打ち込んだコンクリート層が固まり始めてから、打重ね作業を行ったことにより生じる。コールドジョイントは、コンクリートの強度を低下させるとともに、コンクリートの中性化の進行を加速させる。

ロ) 豆板(ジャンカ)
 ジャンカとは、生コンクリートを打ち込む際に、粗骨材とモルタルペーストが分離して、粗骨材の間に空洞ができる欠陥をいい、このジャンカが表面に現れたものを豆板(まめいた)という。豆板(ジャンカ)は、コンクリートの強度を低下させ、空洞が大きい場合は鉄筋を露出させることもある。
 豆板(ジャンカ)があると、その周囲は中性化が進行しやすい。このような部分は、水が浸透し空気に触れやすくなるからである。

⑤ 中性化の対策
 中性化は水セメント比が小さいほど進行は遅くなるので、AE剤・減水剤などの混和材料を用いたコンクリートは中性化が進行しにくい。
鉄筋の周りのコンクリートの厚さを鉄筋のかぶり厚さというが、この厚さを十分確保することや、表面をタイルばりにしたり塗装したりすることによって、中性化が鉄筋に到達する年数を長くすることができる。
 また、打込み時には豆板(ジャンカ)のような施工不良が生じないよう、十分に締め固める必要があり、鉄筋の間隔や配置、生コンクリートの流動性や骨材の粒度も適切にしなければならない。

その他の建築材料

(1) コンクリートブロック

 建築用コンクリートブロックは、空洞コンクリートブロックと型枠コンクリートブロックの2種類に区分される。ともに、軽量化と鉄筋挿入のための空洞が設けられている。


① 空洞コンクリートブロック

 空洞コンクリートブロックは、補強コンクリートブロック造の壁体材として考案された。

 補強コンクリートブロック造とは、煉瓦のように空洞コンクリートブロックをモルタルで接着しながら積み上げて壁体をつくり、耐震性を高めるため、空洞部に鉄筋を入れコンクリートを充填して補強する構造である。


② 型枠コンクリートブロック

 型枠コンクリートブロックは、型枠コンクリートブロック造の壁体材として考案された。空洞コンクリートブロックよりも空洞部分が大きくなっている。

 型枠コンクリートブロック造とは、型枠コンクリートブロックを組み合わせて型枠とし、その空洞部分に鉄筋を配置し、そこにコンクリートを打ち込んでブロックを含んだ耐力壁を構成する構造である。


(2) 外装仕上げ材(塗装仕上げ)

① 建築用仕上塗材(ぬりざい)

 建築用仕上塗材の規格は日本工業規格(JIS)に定められている。これによると、建築用仕上塗材とは、セメント、合成樹脂などの結合材、顔料、骨材などを主原料とし、主として建築物の内外壁または天井を、吹付け、ローラー塗り、こて塗りなどによって立体的な造形性をもつ模様に仕上げるものをいう。マンションの外壁に用いられる外装仕上塗材には、薄付け仕上塗材、複層仕上塗材、可とう形改修用仕上塗材などが使用されている。


イ) 薄付け仕上塗材

 薄付け仕上塗材は、最も古い形の吹付け仕上げによる材料で、セメントを結合材としたものは、通称「セメントリシン」と呼ばれている。砂壁状の仕上げができる。合成樹脂エマルションを結合材としたものは、通称「樹脂リシン」と呼ばれている。


ロ) 複層仕上塗材

 複層仕上塗材は、合成樹脂、セメントなどの結合材および骨材、充てん材を主原料とし、下塗り、主材塗り、上塗りの3層で構成される仕上塗材で、通称「吹付けタイル」と呼ばれている。


ハ) 可とう形改修用仕上塗材

 可とう形改修用仕上塗材は、改修工事専用の塗材で、下地調整機能を持ち、通称「微弾性フィラー」と呼ばれている。これによって、下地の凹凸を目立たなくさせ、その後に施工される塗料と下地との付着性を確保する。


② 鉄部用塗料

 鉄部のさび止め塗料としては、下塗りに鉛系さび止めペイント、上塗りに合成樹脂調合ペイントが、現在最も用いられている。

 しかし、鉛は人体に有害なため、鉛系さび止めペイントは使用されなくなりつつある。また、かつては上塗りにボイル油を展色剤とした油性調合ペイントが用いられていたが、白亜化(チョーキング)しやすいなどの欠点があるため、あまり使用されなくなった。


(3) 外装タイル

① 陶磁器質タイル

 マンション外壁の外装には、耐久性や美観に優れているために、陶磁器質タイルが多く用いられている。

 陶磁器質タイルの規格は日本工業規格(JIS)で定められている。これによると、平面上のタイルは平物とよばれ、平物のうち表面積が50㎠以下のものはモザイクタイルと呼ばれる。施工しやすいように、多数個のタイルを並べて連結したものは、ユニットタイルと呼ばれる。また、タイルは、素地の質により3種類に分けられ、吸水率の低いものから、Ⅰ類(3.0%以下)、Ⅱ類(10.0%以下)、Ⅲ類(50.0%以下)とされる。

 日本工業規格によると、タイルは用途によっても区分され、外壁の外装に使用されるタイルについては、外装壁タイル、外装壁モザイクタイル、外装壁ユニットタイル、外装壁モザイクユニットタイルに区分されている。

マンションでよく使用されるのが、二丁掛タイルとよばれる大きさのもので、寸法が227㎜×60㎜のものである。長辺の長さはそのままで、短辺の長さが30㎜増えるごとに、三丁掛タイル(227㎜×90㎜)、四丁掛タイル(227㎜×120㎜)とよばれ、四丁掛タイルは二丁掛タイルの2倍の幅である。


② 外装タイルのタイル張り工法

イ) 従来工法

 従来工法は、コンクリート躯体に下地のモルタル層を作り、そこに張付けモルタルを塗り付けて、タイルを張り付ける工法である。


ロ) 直張り工法

 近年に建築されたマンションでは、コンクリート下地に、張付けモルタルを塗り付けて、直接タイルを張り付ける工法が多く用いられている。工程が少ないので工期を短縮して、施工費用も削減できる。


ハ) 改良圧着張り

 改良圧着張りは、下地に張付けモルタルを塗り付けるとともに、タイル裏面にも張付けモルタルを塗り付け、タイルを張り付ける工法である。

(4) 建築用板ガラス

① フロート板ガラス

 フロート板ガラスは、最も一般的に使用されている透明板ガラスである。複層ガラスよりも熱を通しやすい。


② 強化ガラス

 強化ガラスは、ガラスを加熱したのち、急冷して、耐風圧強度を高めたガラスである。同じ厚さのフロート板ガラスに比べると3から5倍の強度を持つ。割れにくく、万一割れた場合にはガラス全面が粒状になるので安全である。ただし、防犯性能は期待できない。


③ 合わせガラス

 合わせガラスは、2枚以上のガラスを特殊な合成樹脂フィルムで接着したガラスである。樹脂フィルムの力で、割れてもガラスの破片が飛び散らず、一般的なガラスよりも安全性能が格段に高い。使用する樹脂フィルムの種類によって、紫外線カット性能、防犯性能、遮音性能などを持たせることができる。


④ 複層ガラス

 複層ガラスは、2枚のガラスをスペーサーで一定の間隔に保ち、その周囲を封着材で密閉し、内部に乾燥空気を満たしたガラスである。複層ガラスは、窓の断熱性能を高めるために用いられる。


(5) 建築物の仕上げ材料等

① 木材

 木材は、大気中では含水率が大きいと腐朽菌の害、虫害を受けやすい。湿気の多いところでは腐りやすいので、特に1階廻り床下地材に使用する場合には防腐処理を行うのが一般的である。


② 集成材

 集成材は、挽き板(ラミナ)または小角材などを、繊維方向を長さの方向に平行に組み合わせ、接着剤により集成したものである。集成材は、造作用集成材、化粧ばり造作用集成材、化粧ばり構造用集成柱および構造用集成材の4つに分類される。


③ 合板

 合板とは、単板(ベニヤ)を何枚も積み重ね、接着剤で張り合わせて1枚の板としたものである。壁、床、屋根下地や、フローリング、壁仕上げ材、内装材などに使われる。


④ ファイバーボード

 ファイバーボードは、木材などの植物質繊維を原材料として成形した面材の総称である。密度によって軟質繊維板(インシュレーションボード)、中密度繊維板(MDF)、硬質繊維板(ハードボード)に分けられ、断熱材や吸音材、畳や家具の心材、内外装用の下地材や化粧板などに使われる。


⑤ 石膏ボード

 石膏ボードは、焼石膏を芯材として両面に石膏液をしみこませた厚紙を張り、圧縮成形した面材であり、防火性・遮音性に優れている。経済性にも優れていることから、建築物の壁、天井などに広く用いられている。