- 設備・会計ー3.設備・構造
- 5.浄化槽設備
- 浄化槽設備
- Sec.1
1浄化槽設備
■浄化槽法
(1) 浄化槽
浄化槽とは、便所と連結してし尿を処理し、これと併せて雑排水も処理して、終末処理場を有する公共下水道以外に放流するための設備または施設であって、市町村が設置したし尿処理施設以外のものをいう。
(2) 浄化槽によるし尿処理等
し尿は、公共下水道の終末処理施設または市町村が設置したし尿処理施設で処理する場合を除き、浄化槽で処理した後でなければ、河川や海などの公共用水域等に放流してはならない。また、浄化槽をし尿の処理のために使用する者が排出する雑排水も、浄化槽で処理した後でなければ、公共用水域等に放流してはならない。
したがって、マンションが公共下水道やし尿処理施設が整備されていない地域にある場合は、浄化槽を設けてし尿・雑排水を処理してからでないと、排水を河川等に放流することができない。
(3) 浄化槽の水質基準・水質検査
浄化槽の設置工事やその後の保守管理・清掃が適切に行われ、放流水が水質基準に適合していることをチェックするために、浄化槽は、設置後および定期に、指定検査機関の水質検査を受けなければならない。
① 水質に関する基準
環境大臣は、浄化槽から公共用水域等に放流される水の水質について、環境省令で、技術上の基準を定めなければならない。
② 設置後等の検査
新たに設置され、またはその構造もしくは規模の変更をされた浄化槽については、使用開始後3か月を経過した日から5か月の期間内に、浄化槽の所有者、占有者その他の者で浄化槽の管理について権原を有するもの(以下「浄化槽管理者」という)は、指定検査機関の行う水質に関する検査を受けなければならない。
③ 定期検査(浄化槽法11条1項)
浄化槽管理者は、環境省令で定めるところにより、毎年1回、指定検査機関の行う水質に関する検査を受けなければならない。
(4) 浄化槽管理者の義務
浄化槽管理者には、浄化槽を維持管理するため、浄化槽の定期的な保守点検および清掃が義務付けられる。
① 浄化槽の保守点検および清掃
浄化槽管理者は、原則として、毎年1回、浄化槽の保守点検および浄化槽の清掃をしなければならない。
ただし、保守点検の回数の特例として、一定の処理方式の浄化槽については、処理方式および浄化槽の種類に応じて、保守点検の回数は1週間から6か月に1回以上とされ、また、清掃の回数の特例として、全ばっ気方式の浄化槽にあっては、清掃の回数は、おおむね6か月ごとに1回以上とされる。
② 技術管理者の選任
処理対象人員が501人以上の浄化槽の浄化槽管理者は、浄化槽の保守点検および清掃に関する技術上の業務を担当させるため、環境省令で定める資格を有する技術管理者を置かなければならない。ただし、浄化槽管理者が自ら技術管理者として管理する浄化槽については、他に技術管理者を置く必要はない。
Point 「建築物の用途別による屎尿浄化槽の処理対象人員算定基準(JIS A 3302)」によれば、「共同住宅」と「住宅」の算定基準は異なる。
③ 保守管理・清掃業務の委託(浄化槽法10条3項)
浄化槽管理者は、浄化槽の保守点検および清掃業務は専門の業者等に委託することができる。
浄化槽の保守点検については、都道府県知事の浄化槽保守点検業者登録制度がある場合には、その登録を受けた浄化槽保守点検業者に、登録制度がない場合には浄化槽管理士に、委託することができる。
浄化槽の清掃については、市町村長の許可を受けた浄化槽清掃業者に委託することができる。
④ 保守点検・清掃の記録
浄化槽管理者は保守点検・清掃を行ったときは記録を作成しなければならず、また、保守点検・清掃を委託した場合には、受託者が記録を作成し、これを浄化槽管理者に交付しなければならない。
保守点検・清掃の記録は、3年間保存なければならない。
⑤ 報告書の提出
イ) 使用開始の報告
浄化槽管理者は、浄化槽の使用開始の日から30日以内に、一定の事項を記載した報告書を都道府県知事(保健所を設置する市・特別区では、市長・区長、以下同じ)に提出しなければならない。
ロ) 技術管理者変更の報告
技術管理者を変更したときは、浄化槽管理者は、変更の日から30日以内に、一定の事項を記載した報告書を都道府県知事に提出しなければならない。
ハ) 浄化槽管理者変更の報告
浄化槽管理者に変更があったときは、新たに浄化槽管理者になった者は、変更の日から30日以内に、一定の事項を記載した報告書を都道府県知事に提出しなければならない。
(5) 浄化槽の廃止
浄化槽管理者は、浄化槽の使用を廃止したときは、その日から30日以内に、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。
(6) 浄化槽の使用に関する準則
浄化槽を使用する者は、浄化槽の機能を正常に維持するための浄化槽の使用に関する準則を遵守しなければならない。浄化槽の使用に関する準則は次のとおり。
イ) し尿を洗い流す水は、適正量とすること。
ロ) 殺虫剤、洗剤、防臭剤、油脂類、紙おむつ、衛生用品等であって、浄化槽の正常な機能を妨げるものは、流入させないこと。 ハ) みなし浄化槽には、雑排水を流入させないこと。 ニ) 浄化槽には、工場廃水、雨水その他の特殊な排水を流入させないこと。 ホ) 電気設備を有する浄化槽は、電源を切らないこと。 ヘ) 浄化槽の上部または周辺には、保守点検・清掃に支障を及ぼすおそれのある構造物を設けないこと。 ト) 浄化槽の上部には、その機能に支障を及ぼすおそれのある荷重をかけないこと。 チ) 通気装置の開口部をふさがないこと。 リ) 浄化槽に故障・異常を認めたときは、直ちに、浄化槽管理者にその旨を通報すること。 |
■浄化槽設備
(1) 浄化槽の種類
① 合併処理浄化槽
合併処理浄化槽とは、し尿とともに雑排水も処理する浄化槽をいう。現在、浄化槽法により設置することが認められているのは合併処理浄化槽のみである。
② 単独処理浄化槽
単独処理浄化槽とは、し尿のみを処理する浄化槽をいう。単独処理浄化槽は、浄化槽法の改正により、現在は設置することができない。単独処理浄化槽では処理することのできない雑排水が処理されないまま河川や海などの公共用水域等に放流されることで、これらを汚染する原因となるからである。ただし、改正前に設置された既存単独処理浄化槽については、みなし浄化槽として、現在も使用することが認められている。
(2) 浄化槽の処理方法
浄化槽の主たる処理方法は、生物膜法と活性汚泥法に大別される。
① 生物膜法
生物膜法は、接触材の表面上に膜状に付着した好気性の微生物を利用して処理する。活性汚泥法に比べて維持管理が容易で浄化槽に多く使われている。
② 活性汚泥法
活性汚泥法は、汚水に空気を吹き込んで好気性の微生物(活性汚泥)を発生させ、これを利用して、水中の有機物を分解し、浄化する方法である。