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1電気設備

堀川 寿和2021/12/16 16:29

配電方式

 発電所で発電された電力は、電圧を落とすために変電所を経由して、需要者に供給される。このうち、変電所から需要者に至るまでの電力輸送を配電とよぶ。


(1) 配電方式の種類

 建築物への電力の供給は、電力会社の商用電力からの供給電圧の大きさにより、低圧引込み、高圧引込みおよび特別高圧引込みの3種類に分けられる。どの配電方式になるかは、建築物の使用電力により決まる。

 需要者への電力の供給は、建築物の電気設備に引込線を接続することにより行われるが、マンションなどのように、1つの建築物内の複数の需要者に電気を供給するときは、個々の需要者ごとに引込線を施設せず、1つの共同引込線により電気が供給される。したがって、どの配電方式になるかは、各住戸の契約電力を合わせたものと共用部分の契約電力の総量により決定される。


① 低圧引込み

 契約電力が50kW未満の場合は、低圧引込みとなる。受電電圧は100Vまたは200Vである。

 小規模のマンションなどで、契約電力の総量が50kW未満の場合は、低圧引込みとなる。


② 高圧引込み

 契約電力が50kW以上2,000kW未満の場合は、高圧引込みとなる。受電電圧は6,000Vである。

 中規模以上のマンションなどで、契約電力の総量が50kW以上となると高圧引込みとなる。


③ 特別高圧引込み

 契約電力が2,000kW以上の場合は、特別高圧引込みとなる。受電電圧は20,000V以上である。

 大規模マンションで特別高圧引込みが用いられることがあるが、ほとんど例がない。

(2) 受変電設備

 配電方式が高圧引込みまたは特別高圧引込みの場合は、各住戸に電力を供給するために、各建築物に自家用受変電設備を設けて、高圧電力を低圧電力に変圧する必要がある。自家用受変電設備の設置が必要な場合は、一般に、管理組合は、これを設置するために必要な空間を、電力会社に無償で提供する。


① 借室方式・借棟方式

 建築物の1室を提供する場合を借室方式といい、自家用受変電設備が設置された空間を借室変電設備(借室電気室)という。敷地内の1棟を提供する場合を借棟方式といい、自家用受変電設備が設置された空間を借棟変電設備(変圧器棟など)という。

 借室変電設備や借棟変電設備の維持管理はすべて電力会社の責任で行われる。電力会社関係者の立ち合いがなければ、その内部に立ち入ることはできない。

 借室方式または借棟方式を採用している場合に、受電容量に制限は設けられていない。


② 借柱方式

 マンションの敷地内に電柱を設け、柱状変圧器を通じて電力の供給を受ける場合を借柱方式という。柱状変圧器とは、電柱に設置され、一般家庭などへ電力を供給する変圧器である。柱状変圧器は容量が小さいため、この場合は、供給可能な最大電力に制限がある。


③ 集合住宅用変圧器方式(パットマウント方式)

 100戸程度までの規模のマンションであれば、借室・借棟変電設備を設けず、集合住宅用変圧器方式(パットマウント方式)を採用することもできる。敷地内の屋外に地上用変圧器を設置して電力を供給する方式で、マンション1戸あたり50A契約となる。


【配電方式の種類と受変電設備の要否】

種類契約電力受電電圧受変電設備
低圧引込み50kW未満100Vまたは200V不要
高圧引込み50kW以上2000kW未満6000V必要
特別高圧引込み2000kW以上20000V以上必要



電気工作物

 電気工作物とは、発電、変電、送電もしくは配電または電気の使用のために設置する機械、器具、ダム、水路、貯水池、電線路その他の工作物をいう。

 電気事業法は、電気工作物を一般用電気工作物と事業用電気工作物に分け、事業用電気工作物を、さらに、電気事業の用に供する事業用電気工作物と自家用電気工作物に分け、一定の規制を設けている。


(1) 一般用電気工作物

 一般用電気工作物とは、次に該当する電気工作物をいう。

① 他の者から600V以下の電圧で受電し、その受電の場所と同一の構内においてその受電に係る電気を使用するための電気工作物であって、その受電のための電線路以外の電線路によりその構内以外の場所にある電気工作物と電気的に接続されていないもの
② 構内に設置する小出力発電設備であって、その発電に係る電気を600V以下の電圧で他の者がその構内において受電するための電線路以外の電線路によりその構内以外の場所にある電気工作物と電気的に接続されていないもの
小出力発電設備とは、600V以下の電気の発電用の電気工作物で、次のいずれかに該当するものである。
イ) 太陽電池発電設備であって出力50㎾未満のもの
ロ) 風力発電設備であって出力20㎾未満のもの
ハ) 次のいずれかに該当する水力発電設備であって、出力20㎾未満のもの
(a) 最大使用水量が毎秒1㎥未満のもの(ダムを伴うものを除く)
(b) 特定の施設内に設置されるものであって別に告示するもの
ニ) 内燃力を原動力とする火力発電設備であって出力10㎾未満のもの
ホ) 一定の燃料電池発電設備であって、出力10未満のもの

 一般用電気工作物に係る電気工事に従事できるのは、一定の軽微な工事を除き、第1種電気工事士および第2種電気工事士のみである。


Point マンションの敷地内に電力会社用の専用借室を設けて600V以下の電圧で受電し、その電気を当該マンションの敷地内で使用するための電気工作物は一般用電気工作物に該当する。したがって、低圧引込みでマンションに電力を供給する場合は、100Vまたは200Vの電圧で受電するので、一般用電気工作物に該当する。

(2) 事業用電気工作物

 事業用電気工作物とは、一般用電気工作物以外の電気工作物をいう。電力会社の発電・変電・送電・配電設備などの電気事業の用に供する電気工作物もこれに含まれる。

 契約電力が50kw以上の場合は、高圧引込みとなり自家用受変電設備が必要となるが、これは事業用電気工作物にあたる。

 事業用電気工作物を設置する者は、事業用電気工作物の工事、維持および運用に関する保安の監督をさせるため、主任技術者免状の交付を受けている者のうちから、主任技術者を選任しなければならない。


(3) 自家用電気工作物

 自家用電気工作物とは、電気事業の用に供する事業用電気工作物および一般用電気工作物以外の電気工作物をいう。したがって、自家用受変電設備は自家用電気工作物である。

 比較的規模の小さい自家用電気工作物を設置する事業場を対象に、当該事業場の自家用電気工作物の工事、維持および運用に関する保安の監督に係る業務を外部に委託し、国の承認を受けた場合は、上記の電気主任技術者を選任しないことができる。

 自家用電気工作物に係る電気工事に従事できるのは、一定の軽微な工事を除き、第1種電気工事士のみである。


Point 自家用電気工作物は事業用電気工作物に該当する。したがって、原則として、自家用電気工作物も事業用電気工作物として工事等の諸届出、技術基準への適合など厳しく規制される


住宅用分電盤

 屋内配線の安全確保などのため、住戸ごとに、住宅用分電盤が設置される。住宅用分電盤内には、サービスブレーカー(アンペアブレーカーともよばれている)、漏電遮断機、安全ブレーカーが設置されている。

 住宅用分電盤の設置工事や安全ブレーカーの増設や変更の工事は、一般用電気工作物に係る電気工事なので、第1種電気工事士または第2種電気工事士が行わなければならない。


(1) サービスブレーカー(アンペアブレーカー)

 サービスブレーカーは、各家庭が電力会社と契約している電流量よりも多く使用した場合に電気を自動的に遮断するもので、電力会社の所有物である。


(2) 漏電遮断機

 漏電遮断機は、屋内配線や電気機器の漏電を感知した場合に電気を自動的に遮断するもので、消費者の所有物である。


(3) 安全ブレーカー

 安全ブレーカーは、分電盤から分岐する配線のそれぞれに取り付けられ、許容電流(一般に20A)を超えた電流が流れた場合に電気を自動的に遮断するもので、消費者の所有物である。


Point 住宅用分電盤内に設置されるサービスブレーカーは電力会社の所有物であるが、漏電遮断器および安全ブレーカーは消費者の所有物である。