- 設備・会計ー3.設備・構造
- 2.消防法・消防用設備等
- 消防法・消防用設備等
- Sec.1
1消防法・消防用設備等
■消防法
(1) 消防法の目的
消防法は、その目的を、次のように規定している。
この法律〔消防法〕は、火災を予防し、警戒しおよび鎮圧し、国民の生命、身体および財産を火災から保護するとともに、火災または地震等の災害による被害を軽減するほか、災害等による傷病者の搬送を適切に行い、もって安寧秩序を保持し、社会公共の福祉の増進に資することを目的とする。 |
Point 消防法の目的には、地震等の災害による被害の軽減が含まれる。
(2) 用語の定義
① 防火対象物
防火対象物とは、山林または舟車、船きょもしくはふ頭に繋留された船舶、建築物その他の工作物もしくはこれらに属する物をいう。 |
Point 共同住宅(マンションを含む)は「建築物」として防火対象物となる。
② 関係者
関係者とは、防火対象物または消防対象物の所有者、管理者または占有者をいう。 |
(3) 火災の予防
① 消防長または消防署長の同意
建築確認を行う建築主事または指定確認検査機関は、建築確認に係る建築物の工事施工地または所在地を管轄する消防長または消防署長の同意を得なければ、建築確認をすることができない。
ただし、建築確認に係る建築物が防火地域および準防火地域以外の区域内における住宅(長屋、共同住宅その他一定の住宅を除く)である場合等においては、この同意は不要である。
Point 共同住宅(マンションを含む)の場合は、防火地域および準防火地域の区域内であるか否かを問わず、必ず消防庁または消防署長の同意が必要である。
② 火を使用する設備・器具等に関する規制
かまど、風呂場その他火を使用する設備またはその使用に際し、火災の発生のおそれのある設備の位置、構造および管理、こんろ、こたつその他火を使用する器具またはその使用に際し、火災の発生のおそれのある器具の取扱いその他火の使用に関し火災の予防のために必要な事項は、政令で定める基準に従い市町村条例でこれを定める。
③ 共同住宅における避難上必要な施設等の管理
共同住宅(マンションを含む。)の管理権原者は、当該共同住宅の廊下、階段、避難口その他の避難上必要な施設について避難の支障になる物件が放置され、またはみだりに存置されないように管理し、かつ、防火戸についてその閉鎖の支障になる物件が放置され、またはみだりに存置されないように管理しなければならない。
④ 防炎対象物品の防炎性能
(a) 高層建築物(高さ31mを超える建築物をいう。)もしくは地下街または劇場、キャバレー、旅館、病院その他の政令で定める防火対象物において使用する防炎対象物品〔どん帳、カーテン、展示用合板その他これらに類する物品で政令で定めるもの〕は、政令で定める基準以上の防炎性能を有するものでなければならない。
(b) 防炎対象物品またはその材料で(a)の政令で定める基準以上の防炎性能を有するもの(以下「防炎物品」という。)には、総務省令で定めるところにより、防炎性能を有するものである旨の表示を付することができる。 (c) 何人も、防炎対象物品またはその材料に、(b)により表示を付する場合および産業標準化法その他政令で定める法律の規定により防炎対象物品またはその材料の防炎性能に関する表示で総務省令で定めるもの(以下「指定表示」という。)を付する場合を除くほか、(b)の表示またはこれと紛らわしい表示を付してはならない。 (d) 防炎対象物品またはその材料は、(b)の表示または指定表示が付されているものでなければ、防炎物品として販売し、または販売のために陳列してはならない。 (e) (a)の防火対象物の関係者は、当該防火対象物において使用する防炎対象物品について、当該防炎対象物品もしくはその材料に(a)の政令で定める基準以上の防炎性能を与えるための処理をさせ、または(b)の表示もしくは指定表示が付されている生地その他の材料からカーテンその他の防炎対象物品を作製させたときは、総務省令で定めるところにより、その旨を明らかにしておかなければならない。 |
Point1 高さが31mを超えるマンションで使用する防炎対象物品は、どの階で使用するかを問わず、一定基準以上の防炎性能を有するものでなければならない。また、スプリンクラー設備を設置した場合であっても、例外とはならない。
Point2 防炎対象物品として政令で定められているものは、カーテン、布製のブラインド、暗幕、じゅうたん等(じゅうたん、毛せんその他の床敷物で総務省令で定めるものをいう。)、展示用の合板、どん帳その他舞台において使用する幕および舞台において使用する大道具用の合板ならびに工事用シートである。防炎対象物品に、寝具は含まれていない。
Point3 たとえば、防炎性能を有していないカーテン・じゅうたん等を購入し、業者等に委託して一定基準以上の防炎性能を与えるための処理をさせたときは、その旨を明らかにしておかなければならない。
Point4 材料から防炎対象物品を作製させたときは、その旨を明示する必要があるが、規制の防衛対象物品を購入したのであれば、何ら明示は不要である。
(4) 住宅用防災機器
① 住宅用防災機器の設置・維持義務
住宅の用途に供される防火対象物(その一部が住宅の用途以外の用途に供される防火対象物にあっては、住宅の用途以外の用途に供される部分を除く。以下「住宅」という。)の関係者は、住宅用防災機器(住宅における火災の予防に資する機械器具または設備であって政令で定めるものをいう。)の設置および維持に関する基準に従って、住宅用防災機器を設置し、および維持しなければならない。
住宅用防災機器とは、以下のいずれかであって、その形状、構造、材質および性能が総務省令で定める技術上の規格に適合するもの
住宅用防災警報器 | 住宅における火災の発生を未然にまたは早期に感知し、および報知する警報器 |
住宅用防災報知設備 | 住宅における火災の発生を未然にまたは早期に感知し、および報知する火災報知設備 |
Point 住宅用防災機器の設置が義務付けられるのは新築住宅だけではなく、既存住宅も義務付けの対象となる。
② 住宅用防災機器の設置・維持に関する条例の制定に関する基準を定める政令
住宅用防災機器の設置および維持に関する基準その他住宅における火災の予防のために必要な事項は、政令で定める基準に従い市町村条例で定められる。
政令が定める条例の制定に関する基準は以下のとおり。
(a) 住宅用防災警報器または住宅用防災報知設備の感知器は、次に掲げる住宅の部分(ロまたはハに掲げる住宅の部分にあっては、総務省令で定める他の住宅との共用部分を除く。)に設置すること。
イ 就寝の用に供する居室 ロ イに掲げる住宅の部分が存する階(避難階を除く。)から直下階に通ずる階段(屋外に設けられたものを除く。) ハ イまたはロに掲げるもののほか、居室が存する階において火災の発生を未然にまたは早期に、かつ、有効に感知することが住宅における火災予防上特に必要であると認められる住宅の部分として総務省令で定める部分 (b) 住宅用防災警報器または住宅用防災報知設備の感知器は、天井または壁の屋内に面する部分(天井のない場合にあっては、屋根または壁の屋内に面する部分)に、火災の発生を未然にまたは早期に、かつ、有効に感知することができるように設置すること。 (c) 例外的に、(a)に掲げる住宅の部分にスプリンクラー設備(総務省令で定める閉鎖型スプリンクラーヘッドを備えているものに限る。)または自動火災報知設備を、それぞれ政令で定める技術上の基準に従い設置したときその他の当該設備と同等以上の性能を有する設備を設置した場合において総務省令で定めるときは、当該設備の有効範囲内の住宅の部分について住宅用防災警報器または住宅用防災報知設備を設置しないことができること。 |
Point1 住宅用防災機器は、天井だけでなく、壁に設置することもできる。
Point2 住宅用防災機器の設置を要する住宅の部分にスプリンクラー設備を設置した場合、住宅用防災機器の設置を免除される場合がある。
Point3 スイッチの操作により火災警報を停止することのできる住宅用防災警報器にあっては、当該スイッチの操作により火災警報を停止したとき、15分以内に自動的に適正な監視状態に復旧するものでなければならない(住宅用防災警報器及び住宅用防災報知設備に係る技術上の規格を定める省令)。
③ 住宅用防災機器の設置・維持に関する条例の制定に関する基準を定める省令
上記②の政令以外に、住宅用防災機器の設置方法の細目および点検の方法その他の住宅用防災機器の設置および維持に関し住宅における火災の予防のために必要な事項についての条例の制定に関する基準が、総務省令(「住宅用防災機器の設置及び維持に関する条例の制定に関する基準を定める省令」)で定められている。
その基準は以下のとおり(おもなもの)。
(a) 住宅用防災機器の設置の免除
以下のいずれかに該当する場合は、住宅用防災機器の設置が免除される。
ⅰ)スプリンクラー設備(閉鎖型スプリンクラーヘッドを備えているものに限る。)または自動火災報知設備を、それぞれ消防法施行令で定める技術上の基準に従い、または当該技術上の基準の例により設置したとき。
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(b) 住宅用防災機器に関する基準
住宅用防災警報器の設置・維持に関し住宅における火災の予防のために必要な事項に係る条例は、以下の基準に従い制定されなければならない。
ⅰ)階段にあっては、住宅用防災警報器は、当該階段の上端に設置すること。
ⅱ)住宅用防災警報器は、天井または壁の屋内に面する部分(天井のない場合にあっては、屋根または壁の屋内に面する部分。)の次のいずれかの位置に設けること。 イ)壁またははりから0.6m以上離れた天井の屋内に面する部分 ロ)天井から下方0.15m以上0.5m以内の位置にある壁の屋内に面する部分 ⅲ)住宅用防災警報器は、換気口等の空気吹出し口から、1.5m以上離れた位置に設けること。 ⅳ)自動試験機能を有しない住宅用防災警報器にあっては、交換期限が経過しないよう、適切に住宅用防災警報器を交換すること。 ⅴ)自動試験機能を有する住宅用防災警報器にあっては、機能の異常が表示され、または音響により伝達された場合は、適切に住宅用防災警報器を交換すること。 |
Point 自動試験機能とは、住宅用防災警報器および住宅用防災報知設備に係る機能が適正に維持されていることを、自動的に確認することができる装置による試験機能をいう。
(5) 防火管理者
防火管理者とは、防火管理業務を行う責任者である。一定の防火対象物については、防火管理者を選任して、防火管理業務を行わせることが義務付けられている。
① 防火管理者の選任
多数の者が出入し、勤務し、または居住する防火対象物で政令で定めるものの管理について権原を有する者〔管理権原者〕は、政令で定める資格を有する者のうちから防火管理者を定めなければならない。
管理権原者は、防火管理者を定めたときは、遅滞なくその旨を所轄消防長または消防署長に届け出なければならない。これを解任したときも、同様に届け出なければならない。
Point 防火管理者の届出は、管理権原者が行う。
② 防火管理者の業務
管理権原者は、防火管理者に、次の業務を行わせなければならない。
(a) 消防計画の作成
(b) 消防計画に基づく消火、通報および避難の訓練の実施 (c) 消防の用に供する設備、消防用水または消火活動上必要な施設の点検および整備 (d) 火気の使用または取扱いに関する監督 (e) 避難または防火上必要な構造および設備の維持管理 (f) 収容人員の管理 (g) その他防火管理上必要な業務 |
Point1 防火管理者は、総務省令で定めるところにより、当該防火対象物についての防火管理に係る消防計画を作成し、所轄消防長または消防署長に届け出なければならない。これを行うのは、管理権原者ではない。
Point2 防火管理者は、消防計画に基づいて、当該防火対象物について消火、通報および避難の訓練の実施、消防の用に供する設備、消防用水または消火活動上必要な施設の点検および整備、火気の使用または取扱いに関する監督、避難または防火上必要な構造および設備の維持管理並びに収容人員の管理その他防火管理上必要な業務を行わなければならない。
Point4 防火管理者は、防火管理上必要な業務を行うときは、必要に応じて当該防火対象物の管理権原者の指示を求め、誠実にその職務を遂行しなければならない。
③ 防火管理者を定めなければならない防火対象物
管理権原者は、多数の者が出入し、勤務し、または居住する防火対象物で政令で定めるものについて防火管理者を定めなければならない。
(a) 防火対象物の用途による分類
防火管理者を定めなければならない防火対象物は、その用途により、「特定防火対象物」と「非特定防火対象物」に分けられる。共同住宅(マンションを含む)は、このうち、「非特定防火対象物」に該当する。
防火管理者の選任を要する防火対象物 | 特定防火対象物 |
非特定防火対象物 |
(b) 防火対象物の規模による分類
非特定防火対象物は、下記のとおり、その延べ面積により、甲種防火対象物と乙種防火対象物に分けられる。
防火対象物の種別 | 延べ面積 | |
非特定防火対象物 (マンションを含む) | 甲種防火対象物 | 500㎡以上 |
乙種防火対象物 | 500㎡未満 |
(c) 非特定防火対象物における防火管理者の選任
非特定防火対象物は、収容人員が50人以上の場合に、防火管理者を選任する必要がある。マンションの場合の収容人員は、区分所有者の数ではなく、居住者の数である。
Point 共同住宅(マンションを含む)は、居住者数が50人以上の場合に、防火管理者を選任する必要がある。居住者数が50人未満の場合は、防火管理者の選任を要しない。
④ 防火管理者の資格
(a) 原則
防火管理者は、政令で定める資格を有する者のうちから定めなければならない。この資格を有する者は、当該防火対象物において「防火管理上必要な業務を適切に遂行することができる管理的または監督的な地位にある者」で、下記の要件を満たす者でなければならない。なお、要件は、甲種防火対象物と乙種防火対象物とで異なる。
防火対象物の種別 | 防火管理者資格 | 要件 |
甲種防火対象物 | 甲種防火管理者 | (a) 「甲種防火管理講習」の課程を修了した者
(b) 大学等において防災に関する学科または課程を修めて卒業した者で、1年以上防火管理の実務経験を有するもの (c) 市町村の消防職員で、管理的または監督的な職に1年以上あった者 (d) (a)~(c)の要件に該当する者に準ずる者で、総務省令で定めるところにより、防火管理者として必要な学識経験を有すると認められるもの |
乙種防火対象物 | 乙種防火管理者 | (a) 「乙種防火管理講習」の課程を修了した者
(b) 甲種防火管理者 |
Point 原則として、防火管理者の業務の第三者への委託は認められていない。
(b) 例外
共同住宅(マンションを含む)で、管理的または監督的な地位にある者のいずれもが遠隔の地に勤務していることその他の事由により防火管理上必要な業務を適切に遂行することができないと消防長または消防署長が認める場合は、例外的に、防火管理者は「防火管理上必要な業務を適切に遂行することができる管理的または監督的な地位にあるもの」ではなく、「防火管理上必要な業務を適切に遂行するために必要な権限および知識を有するものとして総務省令で定める要件を満たすもの」でもよい。つまり、防火管理者の業務の第三者への委託が認められる。
「総省令で定める要件」は、以下のとおり
ⅰ)防火管理上必要な業務を行う防火対象物の管理について権原を有する者から、防火管理上必要な業務を適切に遂行するために必要な権限が付与されていること。
ⅱ)防火管理上必要な業務を行う防火対象物の管理について権原を有する者から、防火管理上必要な業務の内容を明らかにした文書を交付されており、かつ、当該内容について十分な知識を有していること。 ⅲ)防火管理上必要な業務を行う防火対象物の管理について権原を有する者から、当該防火対象物の位置、構造および設備の状況その他防火管理上必要な事項について説明を受けており、かつ、当該事項について十分な知識を有していること。 |
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Point1 受託者は、防火管理上必要な業務の内容について、それを明らかにした文書を交付されている必要があり、「口頭で説明を受けた」だけでは足りない。
Point2 要件を満たしていれば、マンションの管理業務を委託している管理会社等から防火管理者を選任することもできる。
⑤ 共同防火管理
高層建築物(高さ31mを超える建築物をいう)その他政令で定める防火対象物で、その管理について権原が分かれているものの管理権原者は、政令で定める資格を有する者のうちから「統括防火管理者」〔防火対象物の全体について防火管理上必要な業務を統括する防火管理者〕を協議して定め、政令で定めるところにより、以下の業務を行わせなければならない。
(a) 当該防火対象物の全体についての消防計画の作成
(b) 当該消防計画に基づく消火、通報および避難の訓練の実施 (c) 当該防火対象物の廊下、階段、避難口その他の避難上必要な施設の管理 (d) その他当該防火対象物の全体についての防火管理上必要な業務 |
管理権原者は、統括防火管理者を定めたときは、遅滞なく、その旨を所轄消防長または消防署長に届け出なければならない。これを解任したときも、同様に届け出なければならない。
Point1 マンションのような共同住宅も、その管理について権原が分かれているのであれば、マンションの高さが31mを超える場合は、共同防火管理の対象となるので、統括防火管理者を定めなければならない。高さが31m以下の場合は、統括防火管理者の選任を要しない。
Point2 統括防火管理者が作成する消防計画は当該防火対象物全体についてものであるので、これが作成されたからといって、それぞれの防火管理者による消防計画の作成が不要となるわけではない。
Point3 統括防火管理者を定める場合に必要なのは、消防長または消防署長への届出であり、消防長または消防署長の許可ではない。
(6) 防火対象物の点検および報告
防火管理者を選任しなければならない防火対象物のうち火災の予防上必要があるものとして政令で定めるものの管理権原者は、総務省令で定めるところにより、定期に、防火対象物における火災の予防に関する専門的知識を有する者で総務省令で定める資格を有するもの(「防火対象物点検資格者」)に、当該防火対象物における防火管理上必要な業務、消防の用に供する設備、消防用水または消火活動上必要な施設の設置および維持その他火災の予防上必要な事項が消防法等で定める基準に適合しているかどうかを点検させ、その結果を消防長または消防署長に報告しなければならない。
Point 共同住宅は、防火対象物の点検・報告制度の対象外である。
■消防用設備等
(1) 消防用設備等
消防用設備等とは、政令で定める消防の用に供する設備、消防用水および消火活動上必要な施設をいう。 政令で定める消防の用に供する設備は、消火設備、警報設備および避難設備である。
政令で定める消防用設備等の種類は以下のとおり。
(2) 共同住宅への消防用設備等の設置・維持
共同住宅(マンションを含む)の関係者は、「消防用設備等」について消火、避難その他の消防の活動のために必要とされる性能を有するように、政令で定める技術上の基準に従って、設置し、および維持しなければならない。
(3) マンションの消防用設備等の設置・維持に関する基準
共同住宅(マンションを含む)への消防用設備等の設置・維持の基準は政令で定められている。おもな基準は、以下のとおり。
① 消火設備に関する基準
(a) 消火器具
共同住宅で延べ面積が150㎡以上のものには、消火器または簡易消火用具を設置しなければならない。 |
Point1 消火器具は、共同住宅の階ごとに、当該共同住宅の各部分から、それぞれ一の消火器具に至る歩行距離が20m以下となるように配置しなければならない。
Point2 消火器で対応する火災の種類には、普通火災(A火災)、油火災(B火災)および電気火災(C火災)があるが、消火器には、いずれの種類の火災にも有効なものがある。
【参考】 消火器具とは、消火器および簡易消火用具をいい、居住者による初期消火に用いられるものである。
消火器には様々な種類があるが、もっとも一般的なのが粉末消火器である。粉末の消火剤が入っており、これを高圧ガスで放射する。消火剤にも種類があるが、ABC粉末はA火災・B火災・C火災のいずれにも対応することが可能である。どの火災に対応できるかは、消火器に色で表示されており、A火災は白色、B火災は黄色、C火災は青色である。
(b) 屋内消火栓設備
共同住宅で延べ面積が700㎡以上のものは、屋内消火栓設備を設置しなければならない。 |
Point1 屋内消火栓設備の停電時の非常電源として自家発電設備を用いる場合、その容量は、屋内消火栓設備を有効に30分間以上作動できるものでなければならない。
Point2 屋内消火栓設備は、居住者による初期消火に使用されるものであり、1号消火栓と2号消火栓がある。2号消火栓は1人でも操作することができるが、放水量は1号消火栓に比べ少ない。
Point3 易操作性1号消火栓は、1号消火栓を、1人でも操作ができるようにしたものである。
【参考】 屋内消火栓設備は、建物の屋内に設置され、居住者による初期消火に用いられるものであり、消火器よりも放水量が多く射程距離も大きいので、消火器では消火できないような段階の火災の消火に用いることができる。
1号消火栓は、消火栓起動ボタンを押すと消火栓ポンプが起動するので、1名が収納されているホース・ノズルを取り出してノズルの先を火元に向け、残る1名が開閉弁を開放することによって放水される。易操作性1号消火栓および2号消火栓は、手元のノズルにもコックが付いているために1名での操作が可能となる。
(c) スプリンクラー設備
共同住宅で11階以上の階があるものには、11階以上の階(総務省令で定める部分を除く。)にスプリンクラー設備を設置しなければならない。 |
Point 閉鎖型のスプリンクラー設備には、配管内を常時充水しておく湿式と空管としておく乾式などがあり、寒冷地を除き、湿式が一般的である。
【参考】 スプリンクラー設備は、初期火災をこえたものから中期以降の火災を消火するために設置される。熱などで火災を感知すると、天井や屋根の下側についているスプリンクラーヘッドから散水して消火する。
スプリンクラー設備は、平常時にスプリンクラーヘッドの放水口が閉じているか否かで閉鎖式と開放式に分類することができる。
閉鎖式は、平常時は放水口が閉じており、火災が発生するとこの放水口が開いて散水するものである。閉鎖式は、さらに湿式・乾式・予定動作式に分けられる。湿式とは、配管内のすべてに常に水が加圧充てんされているものであり、一般に広く用いられる。火災の熱でスプリンクラーヘッドにある放水口が開き、ただちに散水される。これに対して乾式とは、流水検知装置からスプリンクラーヘッドまでの配管部に、平常時は水ではなく圧縮空気を加圧充てんするものであり、寒冷地などで、冬季に凍結のおそれのある部分などに用いられる。火災の熱でスプリンクラーヘッドにある放水口が開くと、配管内の圧縮空気が放出され、配管内の圧力低下によって流水感知装置が作動して弁を開くことで散水が開始する。予定動作式は、乾式と同様に平常時は流水検知装置からスプリンクラーヘッドまでの配管部に圧縮空気を加圧充てんしているが、火災感知機等が作動すると流水感知装置が作動して弁を開いて配管内に通水するとともに、火災の熱でスプリンクラーヘッドにある放水口が開くことで、散水が開始される。予定動作式は、スプリンクラーヘッドが熱を感知するのとは別に火災感知機等が作動することによってはじめて作動するものであり、平常時にスプリンクラーヘッドが誤作動したとしても散水されないため、誤作動による水損を防止することができる。
(d) 水噴霧消火設備等
共同住宅に駐車設備や変圧器などの電気設備が設置されている場合、設置される設備の種類およびその部分の規模に応じて、下記のとおり、水噴霧消火設備等を設置しなければならない。
Point 泡消火設備は、泡による窒息作用と冷却作用により消火する設備で、消火薬剤を水に混入し、泡ヘッドで空気を巻き込み発泡させて放水消火する。屋内駐車場等に設置される。
【参考】 マンションでは駐車場などに設置される水噴霧消火設備、泡消火設備、不活性ガス消火設備、ハロゲン化物消火設備または粉末消火設備は、水による消火には適さない油火災(B火災)の消火を目的とするものである。また、不活性ガス消火設備、ハロゲン化物消火設備または粉末消火設備は水を使用しないため電気設備の火災など電気火災(C火災)の消火にも用いることができる。
水噴霧消火設備は、スプリンクラー設備と同様に、火災感知器や手動操作によって作動し、天井に設置された水噴霧ヘッドから水を散水するものである。しかし、スプリンクラー設備のように水をかけることによる冷却効果で消化するものではない。水噴霧ヘッドから霧状に散水される水は粒子が細かく、この水の粒子が火災の熱で急激に蒸発するときに熱を奪うことによる冷却作用と、燃焼物の表面を水蒸気が覆うことで空気の供給を遮断することによる窒息作用によって消化する。
泡消火設備は、火災感知器や手動操作によって作動し、天井や側壁に設置された泡ヘッドから泡が放出される。屋内消火栓設備のようにホースを延長して、先端の泡ノズルを火元に向けて泡を放出するものもある。泡は泡消火薬剤と水を混合したものに空気を入れて発生させる。水を含む泡によって燃焼物の表面を覆うことで、水による冷却作用と、空気の供給を遮断することによる窒息作用によって消化する。
不活性ガス消火設備は、消火剤が二酸化炭素や窒素などのガスである。そのため、消火後の汚染が少ないという特徴がある。火災感知器や手動操作によって作動し、防護区画内に噴射ヘッドから消火剤のガスを放出し、その区画内の酸素濃度を下げることによって消化する。
ハロゲン化物消火設備は、消火剤にハロゲン化物を使用するものである。火災感知器や手動操作によって作動し、防護区画内に噴射ヘッドから消火剤であるハロゲン化物を放出する。ハロゲン化物には燃焼の連鎖反応を止める作用があり、これにより消火する。このような消化方法を負触媒消火という。
粉末消火設備は、消火剤に炭酸水素ナトリウムなどの粉末の化学物質を使用するものである。火災感知器や手動操作によって作動し、噴射ヘッドから消火剤の粉末を放出する。この消火剤には燃焼の連鎖反応を止める作用があり、これにより消火する。
(e) 屋外消火栓設備
共同住宅で床面積(地階を除く階数が1であるものにあっては1階の床面積を、地階を除く階数が2以上であるものにあっては1階および2階の部分の床面積の合計をいう)が以下の規模以上のものには、屋外消火栓設備を設置しなければならない。
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【参考】 屋外消火栓設備は、建築物の周囲の地上や地下に設置され、初期から中期にかけての火災を消火するものであり、とくに建築物の1階・2階部分の消火を目的としている。また中期以降では、外部より放水することで、延焼を防止することにも有効である。屋内消火栓設備と同様に人が操作して使用する。使用する際にはホース接続口にホースを接続しなければならないが、その後の使用方法は屋内消火栓設備とほぼ同じである。
② 警報設備に関する基準
(a) 自動火災報知設備
ⅰ)共同住宅で延べ面積が500㎡以上のものには、自動火災報知設備を設置しなければならない。
ⅱ)共同住宅の地階または2階以上の階のうち、駐車の用に供する部分の存する階(駐車するすべての車両が同時に屋外に出ることができる構造の階を除く。)で、当該部分の床面積が200㎡以上のものには、自動火災報知設備を設置しなければならない。 |
Point1 自動火災報知設備の停電時の非常電源として蓄電池を用いる場合、その容量は、自動火災報知設備を有効に10分間作動することができる容量以上でなければならない。
Point2 自動火災報知設備には、熱感知方式(定温式、差動式等)、煙感知方式(イオン化式、光電式等)等がある。
【参考】 自動火災報知設備とは、感知器が火災による熱・煙・炎などを自動的に感知して、火災の発生区域を受信機に表示するとともに、居住者等にベル・サイレン・音声などで火災の発生を知らせる設備である。自動火災報知設備は、火災発見者が手動で発信機を操作することによっても作動する。
自動火災報知設備には、熱感知式、煙感知式、炎感知式などがある。熱感知式には、差動式と定温式がある。差動式は、温度上昇率が一定以上になると作動するものであり、最も一般的である。定温式は、温度が一定以上に達すると作動するものであり、温度差の激しい場所に適している。
(b) 消防機関へ通報する火災報知設備
共同住宅で延べ面積が1000㎡以上のものは、消防機関へ通報する火災報知設備を設置しなければならない。
ただし、消防機関から著しく離れた場所その他総務省令で定める場所にあるものは、設置を要しない。 |
【参考】 消防機関へ通報する火災報知設備とは、火災が発生した際に火災通報ボタンを押すと、音声メッセージにより消防機関(119番)に自動通報する装置である。自動火災報知設備の作動に連動させて自動通報するものもある。
(c) 非常警報設備
ⅰ)共同住宅で、収容人員が50人以上のもの、または、地階および無窓階の収容人員が20人以上のものは、非常ベル、自動式サイレンまたは放送設備を設置しなければならない。
ただし、共同住宅に自動火災報知設備が政令で定める技術上の基準に従い、または当該技術上の基準の例により設置されているときは、当該設備の有効範囲内の部分については、設置を要しない。 ⅱ)以下に該当する共同住宅には、「非常ベルおよび放送設備」または「自動式サイレンおよび放送設備」を設置しなければならない。 1. 地階を除く階数が11以上のもの 2. 地階の階数が3以上のもの 3. 収容人員が800人以上のもの |
【参考】 非常警報設備とは、居住者等に火災の発生を知らせる設備であり、非常ベル・自動式サイレン・放送設備の3つがある。非常ベルおよび自動式サイレンは音響により火災発生を知らせる装置である。警報の音響装置として、非常ベルはベルを用いるもので、自動式サイレンはサイレンを用いるものである。放送設備はスピーカーを用いて音声により避難誘導を行う設備である。
Point 警鐘、携帯用拡声器、手動式サイレンその他の非常警報器具は、共同住宅には設置を義務付けられてない。
③ 避難設備に関する基準
(a) 避難器具
共同住宅の2階以上の階または地階で、収容人員が30人以上のものには、避難器具を設置しなければならない。 |
【参考】 避難器具とは、避難のために用いる器具であるが、通常使用する階段が使えないような場合に、安全に避難することを確保するための器具である。避難器具には、避難ロープ・滑り棒・避難はしご・滑り台・避難用タラップ・緩降機・救助袋・避難橋がある。
(b) 誘導灯および誘導標識
ⅰ)共同住宅の地階、無窓階および11階以上の部分には避難口誘導灯および通路誘導灯を設置しなければならない。
ⅱ)共同住宅には、すべての階に誘導標識を設置しなければならない。 |
Point 誘導灯の光源の種類としてLEDランプも、認められている。
【参考】 誘導灯とは、避難口や避難経路を示す照明設備であり、避難口誘導灯と通路誘導灯がある。避難口誘導灯は避難口を示すものであり、通常は避難可能な出口の上部に設けられる。通路誘導灯は避難の方向を示すものであり、室内・通路・階段に一定の間隔で設置されるものである。停電時に備えて、誘導灯は蓄電池設備により原則として20分以上点灯できるようにしておかなければならない。
④ 消火活動上必要な施設に関する基準
(a) 連結送水管
以下に該当する共同住宅には、連結送水管を設置しなければならない。
ⅰ)地階を除く階数が7以上のもの ⅱ)地階を除く階数が5以上で延べ面積が6000㎡以上のもの いずれの場合も、連結送水管の放水口は3階以上の階に設置しなければならない。 |
Point1 連結送水管は、送水口、配管、放水口等から構成され、消防ポンプ自動車から送水口に送水し、消防隊が放水口に放水用器具を接続して消火活動を行うものである。
Point2 連結送水管には、配管内を常時充水しておく湿式と空管としておく乾式があり、寒冷地を除き、湿式が一般的である。
Point3 連結送水管は、消防隊が消火活動を行うための設備であり、居住者(自衛消防隊等)が消火活動を行うために使用されるものではない。
【参考】 連結送水管は、消防隊が消火活動を行う際に、火災が発生している階まで送水するために設置される設備である。
(b) 非常用コンセント設備
共同住宅で地階を除く階数が11以上のものには、非常用コンセント設備を設置しなければならない。 |
【参考】 消防隊が、消火や救助のために電気器具を使用することがあるが、火災の際には電気配線が燃えてしまって電気が使えないことがある。非常用コンセントは、そのような場合に備えて電源を確保するための設備である。
Point 排煙設備は、共同住宅には設置を義務付けられてない。
(4) 「特定共同住宅等における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令」
この省令は、「特定共同住宅等」における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関し必要な事項を定めており、共同住宅の消防用設備等の特例を認めている。
① 特定共同住宅等
特定共同住宅等とは、共同住宅(マンションを含む)および一定の複合型小規模福祉施設等であって、火災の発生または延焼のおそれが少ないものとして、その位置、構造および設備について消防庁長官が定める基準に適合するものをいう。
Point1 特定共同住宅等には、飲食店、レストラン、コンビニエンスストアが入っている複合用途の共同住宅やホテルは含まれない。
② 特定共同住宅等
特定共同住宅等の種類は、構造類型および階数によって、以下のように9種類に区分される。
特定共同住宅等の種類 | ||
構造類型 | 階数 | |
1 | 二方向避難型特定共同住宅等 | 地階を除く階数が5以下のもの |
地階を除く階数が10以下のもの | ||
地階を除く階数が11以上のもの | ||
2 | 開放型特定共同住宅等 | 地階を除く階数が6以下のもの |
地階を除く階数が6以上のもの | ||
3 | 二方向避難・開放型特定共同住宅等 | 地階を除く階数が10以下のもの |
地階を除く階数が11以上のもの | ||
4 | その他の特定共同住宅等 | 地階を除く階数が10以下のもの |
地階を除く階数が11以上のもの |
Point 特定共同住宅等は、階数によっても区分される。
③ 必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等
特定共同住宅等の種類(上記の9区分)に応じて、特定共同住宅等に「通常用いられる消防用施設等」に代えて用いることができる「必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等」が定められている。つまり、特定共同住宅等については、設置すべき消防用設備等の基準が緩和されるということである。
必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等は、以下のように3つに区分される。
区分 | 消防用設備等の具体例 | |
1 | 火災の拡大を初期に抑制する性能(「初期拡大抑制性能」)を主として有する通常用いられる消防用設備等に代えて用いることができる必要とされる初期拡大抑制性能を主として有する消防の用に供する設備等 | 住宅用消火器および消火器具
共同住宅用スプリンクラー設備 共同住宅用自動火災報知設備 住戸用自動火災報知設備および共同住宅用非常警報設備 |
2 | 火災時に安全に避難することを支援する性能(「避難安全支援性能」)を主として有する通常用いられる消防用設備等に代えて用いることができる必要とされる避難安全支援性能を主として有する消防の用に供する設備等 | 共同住宅用自動火災報知設備
住戸用自動火災報知設備および共同住宅用非常警報設備 |
3 | 消防隊による活動を支援する性能(「消防活動支援性能」)を主として有する通常用いられる消防用設備等(連結送水管および非常コンセント設備に限る。)に代えて用いることができる必要とされる消防活動支援性能を主として有する消防の用に供する設備等 | 共同住宅用連結送水管
共同住宅用非常コンセント設備 |
④ 共同住宅に設置する共同住宅用スプリンクラー設備
共同住宅用スプリンクラーは、標準のスプリンクラーよりも少量の水で消火することを目的とする。共同住宅用スプリンクラー設備の設置・維持に関する基準は以下のとおり(おもなもの)。
(a) 水源の量は4㎥以上となるように設けること。
(b) 共同住宅用スプリンクラー設備は、4個のスプリンクラーヘッドを使用した場合に、それぞれの先端において、放水圧力が0.1MPa(メガパスカル)以上で、かつ、放水量が50ℓ/分以上で放水することができる性能のものとすること。 (c) スプリンクラーヘッドは、閉鎖型スプリンクラーヘッドの規格を定める省令に規定する小区画型ヘッドのうち感度種別が一種のものに限ること。 (d) 制御弁は、パイプシャフト、パイプダクトその他これらに類するものの中に設けるとともに、その外部から容易に操作でき、かつ、みだりに閉止できない措置が講じられていること。 |
(5) 消防用設備等についての従前の規定の適用
① 原則
消防用設備等の技術上の基準に関する政令等の施行または適用の際、現に存する防火対象物における消防用設備等、または現に新築・増築・改築・移転・修繕・模様替の工事中の防火対象物に係る消防用設備等がこれらの規定に適合しないときは、その消防用設備等については、当該規定は適用されず、従前の規定が適用される。つまり、消防用設備等の技術上の基準に関する政令等については、遡及適用を受けない。
② 例外(消防用設備等の技術上の基準に関する政令等の遡及適用を受ける場合)
共同住宅(マンションを含む)については、消防用設備等のうち下記のものについては消防用設備等の技術上の基準に関する政令等が遡及適用される。つまり、従前の規定が適用されず、新しい規定が適用される。したがって、消防用設備等を、新たに適用される技術上の基準によって新たに設置・維持しなければならない。
(a) 消火器
(b) 簡易消火用具 (c) 漏電火災警報器 (d) 非常警報器具および非常警報設備 (e) 誘導灯および誘導標識 (f) 避難器具 (g) 必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等であつて、(a)~(f)の消防用設備等に類するものとして消防庁長官が定めるもの |
Point 共同住宅に設ける屋内消火栓設備、スプリンクラー設備、屋外消火栓設備、自動火災報知設備については、従前の規定が適用される(遡及適用を受けない)。
(6) 共同住宅に設置された消防用設備等の点検および報告
火災時に消防用設備等の機能が十分発揮できるよう、平時からその維持管理を行っておく必要がある。
① 共同住宅に設置された消防用設備等の定期点検および報告の義務
(a) 定期点検・報告義務
共同住宅(マンションを含む)の関係者は、当該共同住宅に設置した消防用設備等について、定期に点検を行い、その結果を消防長または消防署長に報告しなければならない。
Point 防火対象物に対して設置が義務付けられている消火設備、警報設備、避難設備等からなる消防用設備等は、すべて点検の対象となる。
(b) 点検の実施者
共同住宅によっては、以下のとおり、一定の有資格者に定期点検を行わせなければならない場合がある。
共同住宅の区分 | 点検の実施 |
共同住宅で延べ面積が1,000㎡以上のもののうち、消防長または消防署長が火災予防上必要があると認めて指定するもの | 消防設備士免状の交付を受けている者または総務省令で定める資格を有する者〔消防設備点検資格者〕に点検をさせなければならない |
上記以外の共同住宅 | 関係者が自ら点検をすることができる |
Point 「消防設備点検資格者」の中に、防火管理者は含まれない。
② 消防用設備等の点検の種類および点検期間
消防用設備等の点検は、種類および点検内容に応じて、1年以内で消防庁長官が定める期間ごとに行うものとされている。
(a) 点検の内容および点検の方法
点検の方法には、機器点検と総合点検がある。
ⅰ)機器点検
機器点検とは、以下の事項につき、消防用設備等の種類等に応じて、所定の基準に従い確認することをいう。
イ)消防用設備等に附置される非常電源(自家発電設備に限る。)または動力消火ポンプの正常な作動
ロ)消防用設備等の機器の適正な配置、損傷等の有無その他主として外観から判別できる事項 ハ)消防用設備等の機能について、外観からまたは簡易な操作により判別できる事項 |
ⅱ)総合点検
総合点検とは、消防用設備等の全部もしくは一部を作動させ、または使用することにより、当該消防設備等の総合的な機能を消防設備等の種類等に応じ、所定の基準に従い確認することをいう。
(b) 点検の期間
消防用設備等の種類等および点検の内容・方法に応じて、機器点検を6か月ごとに、総合点検を1年ごとに行わなければならない。
【消防用設備等の点検の期間】
消防用設備等の種類等 | 点検の内容・方法および期間 | |
機器点検 | 総合点検 | |
消火器具、消防機関へ通報する火災報知設備、誘導灯、誘導標識、消防用水、非常コンセント設備、連結散水設備、無線通信補助設備及び共同住宅用非常コンセント設備 | 6か月ごと | ― |
屋内消火栓設備、スプリンクラー設備、水噴霧消火設備、泡消火設備、不活性ガス消火設備、ハロゲン化物消火設備、粉末消火設備、屋外消火栓設備、動力消防ポンプ設備、自動火災報知設備、ガス漏れ火災警報設備、漏電火災警報器、非常警報器具及び設備、避難器具、排煙設備、連結送水管、非常電源(配線の部分を除く)、総合操作盤、パッケージ型消火
設備、パッケージ型自動消火設備、共同住宅用スプリンクラー設備、共同住宅用自動火災報知設備、住戸用自動火災報知設備、共同住宅用非常警報設備、共同住宅用連結送水管、特定小規模施設用自動火災報知設備、加圧防排煙設備、複合型居住施設用自動火災報知設備並びに特定駐車場用泡消火設備 | 6か月ごと | 1年ごと |
配線 | ― | 1年ごと |
③ 消防用設備等の点検結果の報告
共同住宅の関係者は、点検を行った結果を維持台帳に記録するとともに、3年に1回、消防長または消防署長に報告しなければならない。
Point 消防長または消防署長へは、点検の都度、報告する必要はない。
(7) 消防用設備等の設置維持命令
消防長または消防署長は、共同住宅における消防用設備等が設備等技術基準に従って設置され、または維持されていないと認めるときは、当該共同住宅の関係者で権原を有するものに対し、当該設備等技術基準に従ってこれを設置すべきこと、またはその維持のため必要な措置をなすべきことを命ずることができる。
(8) 火災の種類と消火方法
① 火災の種類
火災はA火災・B火災・C火災・ガス火災の4種類に大別できる。
A火災とは、木材や紙、布などの可燃物が燃焼物となる通常の火災である。普通火災ともいう。この火災は水により消火することができる。
B火災とは、ガソリンや食用油などが燃焼物となる火災である。油火災ともいう。この火災は水により消化することはできない。
C火災とは、配電盤や電気設備が燃焼物となる火災である。電気火災ともいう。この火災は、水をかけると感電の危険性があるので、水による消火が適当ではない。
ガス火災は、可燃性のガスが燃焼物となる火災である。
火災の規模が大きくなると、これらの火災が複合して発生することになる。
② 消火方法
燃焼は、可燃物・酸素・温度の3要素がそろったときに発生する。したがって、3要素のうち1つでも取り除けば、消火は可能となる。
可燃物を除去する方法を除去消火法という。ガスの元栓を閉めると火が消えるのは、可燃物がなくなってしまうからである。森林火災の際に、周囲の木を伐採したりして延焼を防ぐ方法も除去消火にあたる。
酸素を除去する方法を窒息消火法という。燃焼物を濡れ布団や消火剤の泡などで覆ってしまうことにより、空気(酸素)の供給を遮断することで消化する方法である。空気中の酸素濃度を低下させることにより消火する方法もこれにあたる。
温度を除去する方法を冷却消火法という。燃焼物に水をかけて、発火温度以下にすることにより消火する方法であり、もっとも一般的な消化方法である。
この3つの他に、燃焼の連鎖反応を止める化学反応(負触媒作用)を利用して消化する方法があり、これを負触媒消火法という。
実際の火災では、これらの消火法を組合せて、消火が行われている。