- 設備・会計ー3.設備・構造
- 1.昇降機設備
- 昇降機設備
- Sec.1
1昇降機設備
設備・構造の分野からは、例年6問程度出題されている。
■昇降機設備
(1) エレベーターの種類
エレベーターを駆動方式で分類すると、籠(人または物を載せ昇降する部分)をロープで移動させるか、油圧で移動させるかにより、ロープ式と油圧式に大きく分けることができる。
① ロープ式
ロープ式は、さらにトラクション式と巻胴式に分類される。また、新しい駆動方式として、リニアモーターにより籠を移動させるリニアモーター式エレベーターが近年開発されて研究が進み、現実にも普及しつつある。
(a) トラクション式
トラクション式は、つるべ式とも呼ばれ、重量の釣り合いをとるために、籠の反対側に釣合おもりを取り付け、上部に取り付けられた電動モーターで駆動する巻上機で籠を上下させる仕組みになっている。籠と釣合おもりを釣り合わせているため、モーターにかかる負荷が少なくて済むので、少ない消費電力で駆動することができる。また、比較的昇降距離が長くても対応することができるため、エレベーターの一般的な形式になっている。トラクション式では、一般に、最上階に制御盤や巻上機等を設置するための機械室が必要になる。しかし、最近では制御盤や巻上機を小型化して昇降路内の上部や下部に設置することで機械室を不要とする機械室なしタイプのものもあり、これは機械室レスエレベーターとも呼ばれる。
(b) 巻胴式
巻胴式は、巻胴と呼ばれるドラムにロープを巻きつけることで籠を上下させる仕組みになっている。
(c) リニアモーター式
ロープと釣合おもりを使用するため、ロープ式エレベーターのトラクション式の一種ともいえる。ただし、トラクション式のように電動モーターで駆動する巻上機ではなく、リニアモーターを使用する。このリニアモーターは釣合おもり内と釣合おもり側の昇降路に沿って配置されているため、機械室を必要としないというメリットがある。
Point1 エレベーター昇降路内等に機器を設置して機械室(マシーンルーム)を必要としないエレベーターをマシーンルームレス型エレベーター(機械室レスエレベーター)という。リニアモーター式は、マシンルームレス型エレベーターのひとつである。最近の新築マンションでは、マシンルームレス型エレベーターが主流となっている。エレベーターを取り替えるときにマシンルームレス型エレベーターとする方法もある。
Point2 乗用のトラクション方式ロープ式で機械室がないエレベーターで、定格速度が毎分600m以上の高速なものは、あまり普及していない。なお、定格速度とは、積載荷重を作用させて上昇する場合の毎分の最高速度をいう。ちなみに、東京スカイツリーの展望デッキ行きシャトルエレベーターの定格速度が毎分600mである。
② 油圧式
油圧式は電動ポンプで油圧を調整することで油圧ジャッキを動かすことにより籠を上下させる仕組みになっている。籠と油圧ジャッキを直結して籠を上下させる直接式と、油圧ジャッキの動きを間接的に籠に伝えて籠を上下させる間接式とがある。一般に、最下階に機械室を設置する。トラクション式と比べると機械室の配置を自由に設計できるというメリットがあるが、釣合おもりを用いないため消費電力は大きくなる。また油圧ジャッキを用いることから、重量物の運搬には適しているが、昇降距離が短い場合にしか利用できない。
【エレベーターの種類】
ロープ式エレベーター | トラクション式(つるべ式) | 機械室あり |
機械室なし | ||
巻胴式 | - | |
リニアモーター式 | 機械室なし | |
油圧式エレベーター | 直接式 | - |
間接式 | - |
(2) 建築基準法上の昇降機
① 昇降機
建築基準法上、昇降機とは、以下のものをいう。
(a) エレベーター
ⅰ)人または人および物を運搬する昇降機(エスカレーターを除く。) ⅱ)物を運搬するための昇降機で籠の水平投影面積が1㎡を超え、または天井の高さが1.2mを超えるもの (b) エスカレーター (c) 小荷物専用昇降機 物を運搬するための昇降機で、籠の水平投影面積が1㎡以下で、かつ、天井の高さが1.2m以下のもの |
Point マンションに設置されるエレベーターも、「建築設備」として建築物に含まれる。
② 昇降機の構造
建築物に設ける昇降機は、安全な構造で、かつ、その昇降路の周壁および開口部は、防火上支障がない構造でなければならない。 |
(3) エレベーターの設置および構造の基準
エレベーターの設置および構造の基準については、建築基準法施行令でその詳細が定められている。おもなものは以下のとおり。
① エレベーターの荷重
(a) エレベーターの籠の積載荷重
エレベーターの籠の積載荷重は、当該エレベーターの実況に応じて定めなければならない。 |
(b) エレベーターの籠の積載荷重の最小値
エレベーターの籠の積載荷重は、かごの種類に応じて、次の表に定める数値(用途が特殊なエレベーターで国土交通大臣が定めるものにあっては、当該用途に応じて国土交通大臣が定める数値)を下回ってはならない。
籠の種類 | 積載荷重(単位 ニュートン) | |
乗用エレベーター(人荷共用エレベーターを含み、寝台用エレベーターを除く。)の籠 | 床面積が1.5㎡以下のもの | 床面積1㎡につき3,600として計算した数値 |
床面積が1.5㎡を超え3㎡以下のもの | 床面積の1.5平方メートルを超える面積に対して1㎡につき4,900として計算した数値に5,400を加えた数値 | |
床面積が3㎡を超えるもの | 床面積の3㎡を超える面積に対して1㎡につき5,900として計算した数値に13,000を加えた数値 | |
乗用エレベーター以外のエレベーターの籠 | 床面積一平方メートルにつき2,500(自動車運搬用エレベーターにあっては、1,500)として計算した数値 |
Point1 乗用エレベーターの籠の積載荷重の下限値は、籠の床面積が大きくなるほど、単位床面積当たりの積載荷重が大きい値になるよう定められている。
Point2 「用途が特殊なエレベーター」および「その積載荷重の下限値」については、国土交通省(旧建設省)の告示が定めている(平成12年建設省告示第1415号)。告示により、「昇降行程が20m以下で、かつ、籠の床面積が1.3㎡以下の住宅(共同住宅を含む)、下宿または寄宿舎に設けるエレベーター」の積載荷重の下限値については、床面積1㎡につき2,500として計算した数値で、かつ、1,300以上の数値とされている。
② エレベーターの籠の構造
エレベーターの籠は、次に定める構造としなければならない。
(a) 各部は、籠内の人または物による衝撃に対して安全なものとして国土交通大臣が定めた構造方法を用いるものとすること。
(b) 構造上軽微な部分を除き、難燃材料で造り、または覆うこと。ただし、地階または3階以上の階に居室を有さない建築物に設けるエレベーターの籠その他防火上支障のないものとして国土交通大臣が定めるエレベーターの籠にあっては、この限りでない。 (c) 籠内の人または物が釣合おもり、昇降路の壁その他の籠外の物に触れるおそれのないものとして国土交通大臣が定める基準に適合する壁または囲いおよび出入口の戸を設けること。 (d) 非常の場合において籠内の人を安全に籠外に救出することができる開口部を籠の天井部に設けること。 (e) 用途および積載量(kgで表した重量とする。)ならびに乗用エレベーターおよび寝台用エレベーターにあっては最大定員(積載荷重をかごの種類に応じて計算した数値とし、重力加速度を9.8m毎秒毎秒と、1人当たりの体重を65㎏として計算した定員をいう)を明示した標識を籠内の見やすい場所に掲示すること。 |
③ エレベーターの昇降路の構造
エレベーターの昇降路は、次に定める構造としなければならない。
(a) 昇降路外の人または物が籠または釣合おもりに触れるおそれのないものとして国土交通大臣が定める基準に適合する壁または囲いおよび出入口(非常口を含む。以下同じ。)の戸を設けること。
(b) 構造上軽微な部分を除き、昇降路の壁または囲いおよび出入口の戸は、難燃材料で造り、または覆うこと。ただし、地階または3階以上の階に居室を有さない建築物に設けるエレベーターの昇降路その他防火上支障のないものとして国土交通大臣が定めるエレベーターの昇降路にあっては、この限りでない。 (c) 昇降路の出入口の戸には、籠がその戸の位置に停止していない場合において昇降路外の人または物の昇降路内への落下を防止することができるものとして国土交通大臣が定める基準に適合する施錠装置を設けること。 (d) 出入口の床先と籠の床先との水平距離は、4㎝以下とし、乗用エレベーターおよび寝台用エレベーターにあっては、籠の床先と昇降路壁との水平距離は、12.5㎝以下とすること。 (e) 昇降路内には、次のいずれかに該当するものを除き、突出物を設けないこと。 ⅰ)レールブラケットまたは横架材であって、一定の基準に適合するもの ⅱ)配管設備で地震時においても昇降機の籠の昇降、籠および出入口の戸の開閉その他の昇降機の機能ならびに配管設備の機能に支障が生じないものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるものおよび国土交通大臣の認定を受けたもの ⅲ)上記に掲げるもののほか、係合装置その他のエレベーターの構造上昇降路内に設けることがやむを得ないものであって、地震時においても主索、電線その他のものの機能に支障が生じないように必要な措置が講じられたもの |
Point 上記(e)ⅱ)により、昇降機の昇降路内に設けることができる配管設備は、以下のいずれかに該当するものである。
① 昇降機に必要な配管設備
② 光ファイバーまたは光ファイバーケーブル(電気導体を組み込んだものを除く。)で①以外のもの ③ ②の配管設備のみを通すための配管設備 |
上記②③に該当するものは、昇降機に必要な配管設備でなくても、昇降路内に設けることができる。
④ エレベーターの安全装置
(a) 制動装置
エレベーターには、制動装置を設けなければならない。
制動装置の構造は、次に掲げる基準に適合するものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるものまたは国土交通大臣の認定を受けたものとしなければならない。
ⅰ)籠が昇降路の頂部または底部に衝突するおそれがある場合に、自動的かつ段階的に作動し、これにより、籠に生ずる垂直方向の加速度が9.8m毎秒毎秒を、水平方向の加速度が5.0m毎秒毎秒を超えることなく安全に籠を制止させることができるものであること。
ⅱ)保守点検を籠の上に人が乗り行うエレベーターにあっては、点検を行う者が昇降路の頂部と籠の間に挟まれることのないよう自動的に籠を制止させることができるものであること。 |
(b) その他の安全装置
エレベーターには、制動装置のほか、次に掲げる安全装置を設けなければならない。
ⅰ)次に掲げる場合に自動的に籠を制止する装置
イ)駆動装置または制御器に故障が生じ、籠の停止位置が著しく移動した場合 ロ)駆動装置または制御器に故障が生じ、籠および昇降路のすべての出入口の戸が閉じる前に籠が昇降した場合(戸開走行保護装置) ⅱ)地震その他の衝撃により生じた国土交通大臣が定める加速度を検知し、自動的に、籠を昇降路の出入口の戸の位置に停止させ、かつ、当該籠の出入口の戸および昇降路の出入口の戸を開き、または籠内の人がこれらの戸を開くことができることとする装置(地震時等管制運転装置) ⅲ)停電等の非常の場合において籠内から籠外に連絡することができる装置 ⅳ)乗用エレベーターまたは寝台用エレベーターにあっては、次に掲げる安全装置 イ)積載荷重に1.1を乗じて得た数値を超えた荷重が作用した場合において警報を発し、かつ、出入口の戸の閉鎖を自動的に制止する装置 ロ)停電の場合においても、床面で1ルクス以上の照度を確保することができる照明装置 |
Point1 その他の安全装置も、設置が義務付けられている。
Point2 地震による閉じ込め事故の多発が契機となり、建築基準法施行令等が改正されて、地震時等管制運転装置を設けなければならないことになった。
Point3 地震時等管制運転装置では、エレベーターの籠を「昇降路の出入口の戸の位置」に停止させるが、これは最寄階に停止させるということであり、必ずしも「昇降路の避難階の出入口の戸の位置」に停止させるわけではない。
Point4 地震時管制運転装置として「初期微動(P波)感知型地震時管制運転装置」などがある。本震(S波)の数秒に到達する初期微動(P波)を感知して、エレベーターの籠を最寄り階に停止させる。
Point5 地震時等管制運転装置には、予備電源を設けなければならない(国土交通省告示第1536号)。
Point6 設置が義務付けられている安全装置のほかに、エレベーターの安全装置として、「火災時管制運転装置」がある。火災時管制運転装置とは、防災センター等の火災管制スイッチの操作や自動火災報知機からの信号により、エレベーターを一斉に避難階に呼び戻す装置をいう。
(4) 非常用エレベーターの設置および構造の基準
① 非常用エレベーターの設置義務
(a) 高さ31mをこえる建築物(政令で定めるものを除く。)には、非常用の昇降機を設けなければならない。
(b) 非常用の昇降機は、エレベーターとしなければならない。 |
非常用とは、避難用ではなく、火災などの災害時に消防隊が人の救助活動および消火活動に利用するという意味である。
② 非常用エレベーターの設置を要しない場合
次のいずれかに該当する建築物には、非常用エレベーターを接資する必要がない。
(a) 高さ31mを超える部分を階段室、昇降機その他の建築設備の機械室、装飾塔、物見塔、屋窓その他これらに類する用途に供する建築物
(b) 高さ31mを超える部分の各階の床面積の合計が500㎡以下の建築物 (c) 高さ31mを超える部分の階数が4以下の主要構造部を耐火構造とした建築物で、当該部分が床面積の合計100㎡以内ごとに耐火構造の床もしくは壁または特定防火設備でその構造が一定の要件を満たすものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるものまたは国土交通大臣の認定を受けたもの(廊下に面する窓で開口面積が1㎡以内のものに設けられる一定の防火設備を含む。)で区画されているもの (d) 高さ31mを超える部分を機械製作工場、不燃性の物品を保管する倉庫その他これらに類する用途に供する建築物で主要構造部が不燃材料で造られたものその他これと同等以上に火災の発生のおそれの少ない構造のもの |
③ 非常用エレベーターの設置および構造の基準
非常用エレベーターの設置および構造は、上記(3)のエレベーターの設置および構造の基準に適合させるほか、以下の基準に適合させなければならない(主なもの)。
(a) 乗降ロビーの床面積は、非常用エレベーター1基について10㎡以上とすること。
(b) 非常用エレベーターには、籠を呼び戻す装置を設け、かつ、当該装置の作動は、避難階またはその直上階もしくは直下階の乗降ロビーおよび中央管理室において行うことができるものとしなければならない。 (c) 非常用エレベーターの籠の定格速度は、60m以上としなければならない。 |
(b)の「籠を呼び戻す装置」とは、各階の乗降ロビーおよび非常用エレベーターの籠内に設けられた通常の制御装置の機能を停止させ、籠を避難階またはその直上階もしくは直下階に呼び戻す装置をいう。
■昇降機設備の維持管理
(1) 点検・整備等
エレベーターを含む昇降機設備を安全・快適に利用するためには、適切な維持管理を行う必要がある。昇降機の故障を未然に防ぐためには、予防保全が重要になる。予防保全とは、定期的に点検をして故障する前に劣化した部品の交換などを行うことである。
昇降機は製造業者ごとに使用部品が異なるために、一般に、製造業者またはその系列の保守業者と保守契約を結んで保守点検が行われる。定期的に行うのが一般的であり、通常は月1回または2回である。
Point エレベーターの保守業者は、各部位の点検を、日本産業規格(JIS)の昇降機の検査標準等に基づいて行っている。
(2) 建築基準法に基づく昇降機の定期検査・報告
昇降機の所有者は、昇降機について、国土交通省令で定めるところにより、定期に、一級建築士もしくは二級建築士または昇降機等検査員〔昇降機等検査員資格者証の交付を受けている者〕に検査をさせて、その結果を特定行政庁に報告しなければならない。
Point1 昇降機の定期検査の報告の時期は、おおむね6月から1年までの間隔をおいて特定行政庁が定める時期とされている。昇降機の定期検査は、年1回以上行わなければならないとされている。
Point2 昇降機の安全性の確保のため、法に基づく定期検査を行っていることを明らかにするとともに、利用者に「安心」、「安全」を提供することを目的として、エレベーターの籠内の見えやすい位置に、「定期検査報告済証」を掲示することとされている。
(3) 保守契約の種類
昇降機設備の保守契約には、一般的にFM(フルメンテナンス)契約とPOG(パーツ・オイル・グリース)契約の2種類がある。この保守契約の種類に応じて、保守管理方式をフルメンテナンス方式、POG方式という。
Point マンション標準管理委託契約書では、フルメンテナンス方式(FM契約)とPOG方式(POG契約)の両方式のいずれかを選択することとなっている。
① フルメンテナンス契約(FM契約)
フルメンテナンス(Full Maintenance)契約は、定期点検・整備を行うだけでなく、定期点検時や故障発生時などに、消耗品の交換だけではなく、劣化した部品の取替え、機器の修理を状況に合わせて行うことを内容とした契約方式である。したがって、定額の保守料金には、保守点検(清掃・給油・調整)や少額の消耗品の修理・交換にかかる費用だけではなく、高額な部品の修理・交換にかかる費用も含まれている。そのため、年間の経費は一定で予算は立てやすいが、保守料金は割高となる傾向がある。
Point フルメンテナンス契約であっても、乗場扉・三方枠の塗装、意匠変更による改造等一定のものは保守契約の対象外である。
② POG契約(パーツ・オイル・グリース契約)
POG(Parts Oil and Grease)契約とは、消耗部品付契約のことで、定期点検、管理仕様範囲内の消耗品の交換は含まれるが、それ以外の部品の取替え、修理は含まない契約方式である。つまり、主として定期点検・整備のみを行う契約である。したがって、定額の保守料金には、点検(清掃・給油・調整)や少額の消耗品の修理・交換にかかる費用は含まれているが、高額な部品の修理・交換にかかる費用は含まれておらず、これらの部品の修理等が必要な場合は、費用を別途支払う必要がある。フルメンテナンス契約と比べて保守料金は割安となるが、契約外の修理等に必要な費用を定額保守料金とは別に予算計上しておく必要がある。
Point POG契約の定額の保守料金には、建築基準法に基づく定期検査に要する費用も含まれている。
【フルメンテナンス契約とPOG契約】
保守点検 | 定期検査 | 消耗品 修理・交換 | 部品 修理・交換 | 籠本体 交換など | |
フルメンテナンス契約 | ○ | ○ | ○ | ○ | × |
POG契約 | ○ | ○ | ○ | × | × |
(4) 「昇降機の適切な維持管理に関する指針」
昇降機は、建築基準法によって「常時適法な状態に維持するように努めなければならないと定められているが、建築基準法には、昇降機の維持管理について詳細な規定は存在しないため、昇降機の安全性を確保するためのガイドラインとして、所有者・管理者が昇降機の適切な維持管理のためになすべき事項、保守点検業者の選定にあたって留意すべき事項等を取りまとめた「昇降機の適切な維持管理に関する指針」を、国土交通省が公表している。
昇降機の適切な維持管理に関する指針 第一章 総則
第1 目的 この指針は、所有者が昇降機を常時適法な状態に維持することができるよう、建築基準法(昭和25年法律第201号。以下「法」という。)第8条第1項の規定の趣旨に鑑み、また、同条第2項の規定により国土交通大臣が定める指針(昭和60年建設省告示第606号)に規定された事項の具体的方策を示すものとして、昇降機の適切な維持管理に関して必要な事項を定め、もって昇降機の安全性の確保に資することを目的とする。 第2 用語の定義
第3 基本的考え方
第4 関係者の役割
4 所有者と管理者が異なる場合において、第一章第3及び第4(第3項を除く。)、第二章(第6第1項から第4項までを除く。)、第三章並びに第四章中「所有者」とあるのは、その役割に応じ「管理者」と読み替えるものとする。
第二章 昇降機の適切な維持管理のために所有者がなすべき事項
第2 不具合の発生時の対応
第3 事故・災害の発生時の対応
第4 昇降機の安全な利用を促すための措置
第5 定期検査等
第6 文書等の保存・引継ぎ等
第三章 保守点検業者の選定に当たって留意すべき事項
第2 保守点検業者に対する情報提供 1 所有者は、保守点検業者の選定に当たっては、あらかじめ、保守点検業者に対して委託しようとする業務の内容を提示するとともに、保守点検業者の求めに応じて、第二章第6第1項及び第2項に規定する文書等を閲覧させるものとする。 2 所有者は、保守点検業者の選定に当たっては、可能な限り、保守点検業者に対して保守・点検の業務を委託しようとする昇降機を目視により確認する機会を提供するものとする。 第3 保守点検業者の知識・技術力等の評価 所有者は、保守点検業者の昇降機に関する知識・技術力等を評価する際には、別表2に示す「保守点検業者の選定に当たって留意すべき事項のチェックリスト」を参考としつつ、必要に応じて、保守点検業者に関係資料の提出を求め、又は保守点検業者に対するヒアリング等の実施に努めるものとする。 第四章 保守点検契約に盛り込むべき事項 1 所有者は、保守点検業者と保守点検契約を締結する際には、契約金額等の契約に関する一般的な事項に加えて、別表3に示す「保守点検契約に盛り込むべき事項のチェックリスト」を参考としつつ、昇降機の適切な維持管理の確保に努めるものとする。 2 所有者は、保守点検契約に付随する仕様書として、点検の項目又は頻度、部品の修理又は交換の範囲、緊急時対応等に関する技術的細目が規定されていることを確認するものとする。 |