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1建築関連の法律

堀川 寿和2021/12/16 10:59

 建築関連の法律としては、「耐震改修法」「バリアフリー法」「省エネ法」「建築物省エネ法」があり、いずれかの法律から例年1~2問程度出題される。その中でも、「耐震改修促進法」は頻出で、3~4年ごとに出題されている。

 その他各種の法令からも、1問程度出題されることがある。この分野は、いくつかの法律をまとめて1問として出題されている。


高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(バリアフリー法)

(1) バリアフリー法の目的および基本理念

① バリアフリー法の目的

 「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」(以下「バリアフリー法」という。)は、「高齢者、障害者等の自立した日常生活および社会生活を確保することの重要性に鑑み、公共交通機関の旅客施設および車両等、道路、路外駐車場、公園施設ならびに建築物の構造および設備を改善するための措置、一定の地区における旅客施設、建築物等およびこれらの間の経路を構成する道路、駅前広場、通路その他の施設の一体的な整備を推進するための措置、移動等円滑化に関する国民の理解の増進及び協力の確保を図るための措置その他の措置を講ずることにより、高齢者、障害者等の移動上および施設の利用上の利便性および安全性の向上の促進を図り、もって公共の福祉の増進に資すること」を目的としている。


② バリアフリー法の基本理念

 バリアフリー法に基づく措置は、高齢者、障害者等にとって日常生活または社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものの除去に資することおよび全ての国民が年齢、障害の有無その他の事情によって分け隔てられることなく共生する社会の実現に資することを旨として、行われなければならない。


(2) バリアフリー法の規制の対象

 バリアフリー法では、「特定建築物」または「特別特定建築物」の「建築主等」〔建築物の建築をしようとする者または建築物の所有者、管理者もしくは占有者〕に、一定の義務または努力義務が課される。

特定建築物「特定建築物」とは、学校、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、ホテル、事務所、共同住宅、老人ホームその他の多数の者が利用する政令で定める建築物またはその部分をいい、これらに附属する建築物特定施設〔出入口、廊下、階段、エレベーター、便所、敷地内の通路、駐車場その他の建築物またはその敷地に設けられる施設で政令で定めるもの〕を含む
特別特定建築物「特別特定建築物」とは、不特定かつ多数の者が利用し、または主として高齢者、障害者等が利用する特定建築物であって、移動等円滑化が特に必要なものとして政令で定めるものをいう。
なお、「政令で定めるもの」の中に共同住宅含まれない


【規制の対象となる建築物】



Point 「特定建築物」には、共同住宅(マンションを含む)が含まれるが、「特別特定建築物」に、共同住宅(マンションを含む)は含まれない。 


(3) 特別特定建築物の建築主等の基準適合義務等

① 政令で定める規模以上の特別特定建築物

(a) 基準適合義務

 建築主等は、特別特定建築物の政令で定める規模以上〔床面積の合計2,000㎡以上〕の建築(用途の変更をして特別特定建築物にすることを含む)をしようとするときは、当該特別特定建築物(以下「新築特別特定建築物」という。)を、「建築物移動等円滑化基準」〔移動等円滑化のために必要な建築物特定施設の構造および配置に関する政令で定める基準〕に適合させなければならない。


Point 「特別特定建築物」の政令で定める規模以上の建築をしようとするときは、当該特別特定建築物を「建築物移動等円滑化基準」に適合させる義務が課されているマンションは、「特別特定建築物」ではないので、この義務付けの対象外である。


(b) 基準適合維持義務

 建築主等は、その所有し、管理し、または占有する新築特別特定建築物を「建築物移動等円滑化基準」に適合するように維持しなければならない。


② 政令で定める規模に満たない特別特定建築物

 建築主等(上記①の基準適合義務が適用される者を除く。)は、その建築をしようとし、または所有し、管理し、もしくは占有する特別特定建築物を「築物移動等円滑化基準」適合させるために必要な措置を講ずるよう努めなければならない。


(4) 特定建築物の建築主等の努力義務

 建築主等は、特定建築物(特別特定建築物を除く)の建築(用途の変更をして特定建築物にすることを含む)をしようとするときは、当該特定建築物を「建築物移動等円滑化基準」に適合させるために必要な措置を講ずるよう努めなければならない

 建築主等は、特定建築物の建築物特定施設の修繕または模様替をしようとするときは、当該建築物特定施設を「建築物移動等円滑化基準」に適合させるために必要な措置を講ずるよう努めなければならない


Point 「特定建築物」は、「建築物移動等円滑化基準」への適合は義務付けられておらず、努力義務となっている。「特定建築物」であるマンションは、この努力義務の対象となっている。




(5) 特定建築物の建築等および維持保全の計画の認定等

① 特定建築物の建築等および維持保全の計画の認定

 建築主等は、特定建築物の「建築等」〔建築、修繕または模様替(修繕または模様替にあっては、建築物特定施設に係るものに限る)〕をしようとするときは、特定建築物の建築等および維持保全の計画を作成し、所管行政庁の認定を申請することができる。

 所管行政庁は、当該申請に係る特定建築物の建築等および維持保全の計画が以下の基準に適合すると認めるときは、認定をすることができる。

(a) 「計画に係る建築物特定施設の構造および配置ならびに維持保全に関する事項」が、「建築物移動等円滑化基準」を超え、かつ、「高齢者、障害者等が円滑に利用できるようにするために誘導すべき主務省令で定める建築物特定施設の構造および配置に関する基準」〔「建築物移動等円滑化誘導基準」と呼ばれる〕に適合すること。
(b) 「特定建築物の建築等の事業に関する資金計画」が、特定建築物の建築等の事業を確実に遂行するため適切なものであること。

 この認定を受けた特定建築物を「認定特定建築物」という。


Point 特定施設の構造および配置に関する基準として、「建築物移動等円滑化基準」と「建築物移動等円滑化誘導基準」が定められている。


② 認定特定建築物の容積率の特例

 上記①の認定を受けると、「認定特定建築物」は、以下のような建築物の容積率の特例(容積率制限の緩和)の適用を受けることができる。

建築物の容積率の算定の基礎となる延べ面積には、「認定特定建築物」の建築物特定施設の床面積のうち、移動等円滑化の措置をとることにより通常の建築物の建築物特定施設の床面積を超えることとなる場合における政令で定める床面積は、算入されない。


Point 高齢者、障害者等の円滑な利用を確保するための基準を満たす特定建築物の建築主は、所管行政庁の認定を受けることにより、認定特定建築物は、建築物の容積率の特例の適用を受けることができる。


③ 認定特定建築物の表示制度

 認定建築主等〔上記①の認定を受けた者〕は、認定特定建築物の建築等をしたときは、当該認定特定建築物、その敷地またはその利用に関する広告等に、当該認定特定建築物が特定建築物の建築等および維持保全の計画の認定を受けている旨の表示を付することができる。


Point 特定建築物が認定を受けている旨の表示を付すことは義務ではない

(6) 国民の責務

 国民は、高齢者、障害者等の自立した日常生活および社会生活を確保することの重要性について理解を深めるとともに、これらの者が公共交通機関を利用して移動するために必要となる支援その他のこれらの者の円滑な移動および施設の利用を確保するために必要な協力をするよう努めなければならない


(7) 建築物移動等円滑化基準

 「建築物移動等円滑化基準」〔移動等円滑化のために必要な建築物特定施設の構造および配置に関する基準〕のうち主なものは、以下のとおり。


① 廊下等

 不特定かつ多数の者が利用し、または主として高齢者、障害者等が利用する廊下等は、以下のものでなければならない。

(a) 表面は、粗面とし、または滑りにくい材料で仕上げること。
(b) 階段または傾斜路(階段に代わり、またはこれに併設するものに限る。)の上端に近接する廊下等の部分(不特定かつ多数の者が利用し、または主として視覚障害者が利用するものに限る。)には、視覚障害者に対し段差または傾斜の存在の警告を行うために、点状ブロック等を敷設すること。


Point 不適切な例として、御影石の表面磨き仕上げなどがある。


② 階段

 不特定かつ多数の者が利用し、または主として高齢者、障害者等が利用する階段は、以下のものでなければならない。

(a) 踊場を除き、手すりを設けること。
(b) 表面は、粗面とし、または滑りにくい材料で仕上げること。
(c) 踏面の端部とその周囲の部分との色の明度、色相または彩度の差が大きいことにより段を容易に識別できるものとすること。
(d) 段鼻の突き出しその他のつまずきの原因となるものを設けない構造とすること。
(e) 段がある部分の上端に近接する踊場の部分(不特定かつ多数の者が利用し、または主として視覚障害者が利用するものに限る。)には、視覚障害者に対し警告を行うために、点状ブロック等を敷設すること。
(f) 主たる階段は、回り階段でないこと。ただし、回り階段以外の階段を設ける空間を確保することが困難であるときは、この限りでない。


Point1 階段の踊場には、手すりは不要である。


Point2 階段の踏面(ふみづら)に影ができないよう複数の照明を設けることは、適切である。

③ 階段に代わり、またはこれに併設する傾斜路

 不特定かつ多数の者が利用し、または主として高齢者、障害者等が利用する傾斜路(階段に代わり、またはこれに併設するものに限る。)は、次に掲げるものでなければならない。

(a) 勾配が12分の1を超え、または高さが16cmを超える傾斜がある部分には、手すりを設けること。
(b) 表面は、粗面とし、または滑りにくい材料で仕上げること。
(c) その前後の廊下等との色の明度、色相または彩度の差が大きいことによりその存在を容易に識別できるものとすること。
(d) 傾斜がある部分の上端に近接する踊場の部分(不特定かつ多数の者が利用し、または主として視覚障害者が利用するものに限る。)には、視覚障害者に対し警告を行うために、点状ブロック等を敷設すること。


④ 駐車場

(a) 不特定かつ多数の者が利用し、または主として高齢者、障害者等が利用する駐車場を設ける場合には、そのうち1つ以上に、車椅子使用者が円滑に利用することができる駐車施設(以下「車椅子使用者用駐車施設」という。)を1つ以上設けなければならない。
(b) 車椅子使用者用駐車施設は、以下のものでなければならない。
ⅰ)幅は、350cm以上とすること。
ⅱ)当該車椅子使用者用駐車施設から利用居室までの経路の長さができるだけ短くなる位置に設けること。


⑤ 移動等円滑化経路

 「移動等円滑化経路」とは、高齢者、障害者等が円滑に利用できる経路をいう。一定の場合に設置することが義務付けられており、この経路上は、さらに詳細な基準が設けられている。


(a) 移動等円滑化経路の設置義務

 次のⅰ~ⅳのいずれかに該当する場合は、下記の経路の1つ以上(ⅳに該当する場合は全て)を、移動等円滑化経路としなければならない。


移動等円滑化経路が必要になる場合移動等円滑化経路とする経路
建築物に、「利用居室」〔不特定かつ多数の者が利用し、または主として高齢者、障害者等が利用する居室〕を設ける場合道等から当該利用居室までの経路
建築物またはその敷地に車椅子使用者用便房を設ける場合利用居室から当該車椅子使用者用便房までの経路
建築物またはその敷地に車椅子使用者用駐車施設を設ける場合当該車椅子使用者用駐車施設から利用居室までの経路
建築物が公共用歩廊である場合その一方の側の道等から当該公共用歩廊を通過し、その他方の側の道等までの経路


Point マンションのエントランス回りも、移動等円滑化経路となりうる。


(b) 移動等円滑化経路の基準

 移動等円滑化経路は、以下のものでなければならない。


ⅰ)移動等円滑化経路上

当該移動等円滑化経路上に階段またはを設けないこと。
ただし、傾斜路またはエレベーターその他の昇降機を併設する場合は、この限りでない。


ⅱ)移動等円滑化経路を構成する出入口

 当該移動等円滑化経路を構成する出入口は、以下のものであること。

イ) 幅は、80cm以上とすること。
ロ) 戸を設ける場合には、自動的に開閉する構造その他の車椅子使用者が容易に開閉して通過できる構造とし、かつ、その前後に高低差がないこと。


ⅲ)移動等円滑化経路を構成する廊下等

 当該移動等円滑化経路を構成する廊下等は、以下のものであること。

イ) 幅は、120cm以上とすること。
ロ) 50m以内ごとに車椅子の転回に支障がない場所を設けること。
ハ) 戸を設ける場合には、自動的に開閉する構造その他の車椅子使用者が容易に開閉して通過できる構造とし、かつ、その前後に高低差がないこと。


ⅳ)移動等円滑化経路を構成する傾斜路

 当該移動等円滑化経路を構成する傾斜路(階段に代わり、またはこれに併設するものに限る。)は、以下のものであること。

イ) 幅は、階段に代わるものにあっては120cm以上、階段に併設するものにあっては90cm以上とすること。
ロ) 勾配は、12分の1を超えないこと。ただし、高さが16cm以下のものにあっては、8分の1を超えないこと。
ハ) 高さが75cmを超えるものにあっては、高さ75cm以内ごとに踏幅が150cm以上の踊場を設けること。



ⅴ)移動等円滑化経路を構成するエレベーターおよびその乗降ロビー

 当該移動等円滑化経路を構成するエレベーターおよびその乗降ロビーは、以下のものであること。

イ) 籠〔人を乗せ昇降する部分〕は、利用居室、車椅子使用者用便房または車椅子使用者用駐車施設がある階および地上階に停止すること。
ロ) 籠および昇降路の出入口の幅は、80cm以上とすること。
ハ) 籠の奥行きは、135cm以上とすること。
ニ) 乗降ロビーは、高低差がないものとし、その幅および奥行きは、150cm以上とすること。
ホ) 籠内および乗降ロビーには、車椅子使用者が利用しやすい位置に制御装置を設けること。
ヘ) 籠内に、籠が停止する予定の階およびかごの現在位置を表示する装置を設けること。
ト) 乗降ロビーに、到着する籠の昇降方向を表示する装置を設けること。


エネルギーの使用の合理化等に関する法律(省エネ法)

 「エネルギーの使用の合理化等に関する法律」(以下「省エネ法」という。)は石油危機をきっかけに、省エネを促進するために作られた法律である。


(1) 「エネルギーの使用の合理化等に関する法律」の目的

 省エネ法は、その目的を、次のように定めている。

この法律〔省エネ法〕は、内外におけるエネルギーをめぐる経済的社会的環境に応じた燃料資源の有効な利用の確保に資するため、工場等、輸送、建築物および機械器具等についてのエネルギーの使用の合理化に関する所要の措置、電気の需要の平準化に関する所要の措置その他エネルギーの使用の合理化等を総合的に進めるために必要な措置等を講ずることとし、もって国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。

 省エネ法が規制する事業分野は、工場等、輸送、建築物および機械器具等であり、建築物や建築材料〔建築材料は機械器具等に含まれる〕もその規制の対象とされている。


(2) 基本方針の設定・公表

 経済産業大臣は、工場等、輸送、建築物、機械器具等に係るエネルギーの使用の合理化および電気の需要の平準化を総合的に進める見地から、エネルギーの使用の合理化等に関する基本方針(以下「基本方針」という。)を定め、これを公表しなければならない。


(3) 建築物に係る措置(建築物の所有者等の努力義務)

① 努力義務の対象者

 努力義務の対象者は、以下のとおり。

(a) 建築物の建築をしようとする者
(b) 建築物の所有者(所有者と管理者が異なる場合にあっては、管理者)
(c) 建築物の直接外気に接する屋根、壁または床(これらに設ける窓その他の開口部を含む。)の修繕または模様替をしようとする者
(d) 建築物への空気調和設備等の設置または建築物に設けた空気調和設備等の改修をしようとする者


② 努力義務の内容

 上記の者は、基本方針の定めるところに留意して、建築物の外壁、窓等を通しての熱の損失の防止および建築物に設ける「空気調和設備等」(空気調和設備その他の政令で定める建築設備)に係るエネルギーの効率的利用のための措置を適確に実施することにより、建築物に係るエネルギーの使用の合理化に資するよう努めるとともに、建築物に設ける電気を消費する機械器具に係る電気の需要の平準化に資する電気の利用のための措置を適確に実施することにより、電気の需要の平準化に資するよう努めなければならない

 なお、「電気の需要の平準化」とは、電気の需要量の季節または時間帯による変動を縮小させることをいう。


(4) 熱損失防止建築材料に係る措置

① 熱損失防止建築材料製造事業者等の努力義務

 「熱損失防止建築材料」(建築物の外壁、窓等を通しての熱の損失の防止の用に供される建築材料)の製造、加工または輸入の事業を行う者(以下「熱損失防止建築材料製造事業者等」という。)は、基本方針の定めるところに留意して、その製造、加工または輸入に係る熱損失防止建築材料につき、熱の損失の防止のための性能の向上を図ることにより、熱損失防止建築材料に係るエネルギーの使用の合理化に資するよう努めなければならない。


② 建材トップランナー制度

 「特定熱損失防止建築材料」については、熱損失防止性能の向上に関する基準を設け、その達成を促している。この制度は、一般に「建材トップランナー制度」と呼ばれている。


(a) 特定熱損失防止建築材料

 建材トップランナー制度の対象となる「特定熱損失防止建築材料」とは、熱損失防止建築材料(建築物の外壁、窓等を通しての熱の損失の防止の用に供される建築材料)のうち、我が国において大量に使用され、かつ、建築物において熱の損失が相当程度発生する部分に主として用いられるものであって熱損失防止性能の向上を図ることが特に必要なものとして政令で定めるものをいう。

 特定熱損失防止建築材料として指定されているものは、以下のとおり。

ⅰ)断熱材
ⅱ)サッシ
ⅲ)複層ガラス


(b) 熱損失防止建築材料製造事業者等の判断の基準となるべき事項の設定・公表

 「特定熱損失防止建築材料」については、経済産業大臣は、特定熱損失防止建築材料ごとに、当該性能の向上に関し熱損失防止建築材料製造事業者等の判断の基準となるべき事項を定め、これを公表しなければならない。

 この判断の基準となるべき事項は、当該特定熱損失防止建築材料のうち熱損失防止性能が最も優れているものの当該性能、当該特定熱損失防止建築材料に関する技術開発の将来の見通しその他の事情を勘案して定められ、これらの事情の変動に応じて必要な改定が行われる。


建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(建築物省エネ法)

 「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」(以下「建築物省エネ法」という。)は、前述の「省エネ法」で行われてきた建築物の省エネ対策を一層強化するために作られた法律である。


(1) 「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」の目的

 建築物省エネ法は、その目的を、次のように定めている。

この法律〔建築物省エネ法〕は、社会経済情勢の変化に伴い建築物におけるエネルギーの消費量が著しく増加していることに鑑み、建築物のエネルギー消費性能の向上に関する基本的な方針の策定について定めるとともに、一定規模以上の建築物の建築物エネルギー消費性能基準への適合性を確保するための措置、建築物エネルギー消費性能向上計画の認定その他の措置を講ずることにより、エネルギーの使用の合理化等に関する法律と相まって、建築物のエネルギー消費性能の向上を図り、もって国民経済の健全な発展と国民生活の安定向上に寄与することを目的とする。


(2) 建築主等の努力義務

① 省エネルギー性能基準への適合

 建築主(*)は、その建築(建築物の新築、増築または改築をいう。)をしようとする建築物について、建築物エネルギー消費性能基準に適合させるために必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

* 下記(3)の①エネルギー消費性能基準適合義務、②エネルギー消費性能確保計画届出義務の対象者を除く


② 省エネルギー性能の向上

 建築主は、その修繕等(建築物の修繕・模様替、建築物への空気調和設備等の設置または建築物に設けた空気調和設備等の改修をいう。)をしようとする建築物について、建築物の所有者、管理者または占有者は、その所有し、管理し、または占有する建築物について、エネルギー消費性能の向上を図るよう努めなければならない。


【建築主等の努力義務】


努力義務の内容対象者対象となる建築物
1省エネルギー性能基準への適合建築主建築(建築物の新築・増築・改築)をしようとする建築物
2省エネルギー性能の向上建築主修繕等(建築物の修繕・模様替、建築物への空気調和設備等の設置・建築物に設けた空気調和設備等の改修)をしようとする建築物
建築物の所有者・管理者・占有者所有・管理・占有する建築物


(3) 建築主が講ずべき措置等

① 特定建築物の建築主の省エネルギー性能基準への適合義務

(a) 省エネルギー性能基準適合義務の対象となる建築物

 省エネルギー性能基準適合義務の対象となる建築物は「特定建築物」である。

 特定建築物とは、「非住宅部分」の床面積の合計が2,000㎡以上である建築物をいう。


Point 特定建築物は、非住宅部分の床面積の合計が2,000㎡以上となる建築物なので、住宅専用マンション特定建築物には該当しない。したがって、住宅専用マンションには、省エネルギー性能基準への適合義務は適用されない。


(b) 特定建築物の建築主の省エネルギー性能基準適合義務

建築主は、特定建築行為をしようとするときは、当該特定建築物(非住宅部分に限る)を建築物エネルギー消費性能基準に適合させなければならない。



(c) 特定建築行為

 「特定建築行為」とは、以下の行為をいう。

ⅰ)特定建築物の新築
ⅱ)特定建築物の増築または改築(非住宅部分の増築または改築に係る部分の床面積の合計が300㎡以上であるものに限る)
ⅲ)特定建築物以外の建築物の増築(非住宅部分の増築に係る部分の床面積の合計が300㎡以上であるものであって、当該建築物が増築後において特定建築物となる場合に限る)


② 中規模以上の建築物の省エネルギー性能確保計画の届出

(a) 建築物の建築に関する届出義務

 建築主は、以下の行為をしようとするときは、その工事に着手する日の21日前までに、当該行為に係る建築物のエネルギー消費性能の確保のための構造および設備に関する計画を所管行政庁に届け出なければならない。

ⅰ)特定建築物以外の建築物の新築であって、その床面積の合計が300㎡以上のもの
ⅱ)建築物の増築または改築であって、その部分の床面積の合計が300㎡以上のもの(特定建築行為に該当するものを除く)


Point 住宅専用マンションは「特定建築物以外の建築物」になるので、床面積の合計が300㎡以上住宅専用マンションを新築する場合や、既存の住宅専用マンションの増築・改築する部分の床面積の合計が300㎡以上の場合は、省エネ計画の届出が必要になる。


(b) 所管行政庁の指示・命令

 所管行政庁は、この届出があった場合において、その届出に係る計画が建築物エネルギー消費性能基準に適合せず、当該建築物のエネルギー消費性能の確保のため必要があると認めるときは、その届出を受理した日から21日以内に限り、その届出をした者に対し、その届出に係る計画の変更その他必要な措置をとるべきことを指示することができる。

 指示を受けた者が、正当な理由がなくてその指示に係る措置をとらなかったときは、所管行政庁は、その者に対し、相当の期限を定めて、その指示に係る措置をとるべきことを命ずることができる。


【建築主が講ずべき措置等】

建築物の種類非住宅部分住宅部分

床面積の合計
大規模2,000㎡以上
特定建築物
省エネルギー性能基準
適合義務
届出義務
基準に適合せず、必要と認める場合、
指示・命令等
中規模
300㎡以上
2,000㎡未満
届出義務
基準に適合せず、必要と認める場合、指示・命令等
小規模300㎡未満
努力義務
省エネルギー性能向上


(5) 建築物エネルギー消費性能向上計画の認定等

① 建築物エネルギー消費性能向上計画の認定

 建築主等〔建築主または建築物の所有者・管理者・占有者をいう〕は、エネルギー消費性能の向上のための建築物の新築等をしようとするときは、「建築物エネルギー消費性能向上計画」を作成し、所管行政庁の認定を申請することができる。

 所管行政庁は、当該申請に係る建築物エネルギー消費性能向上計画が所定の認定基準に適合すると認めるときは、その認定をすることができる。


② 認定建築物エネルギー消費性能向上計画に係る建築物の容積率の特例

 上記①の認定を受けると、以下のような建築物の容積率の特例(容積率制限の緩和)の適用を受けることができる。

建築物の容積率の算定の基礎となる延べ面積には、認定建築物エネルギー消費性能向上計画に係る建築物の床面積のうち、建築物エネルギー消費性能向上計画の認定基準に適合させるための措置をとることにより通常の建築物の床面積を超えることとなるものとして国土交通大臣が定める床面積が、当該建築物の延べ面積の10分の1を限度として、算入されない。


Point 建築物エネルギー消費性能向上計画の認定を受けると建築基準法による容積率制限の特例が適用される〔その他の特例はない〕。 


(6) 建築物のエネルギー消費性能に係る認定等(省エネに関する表示制度)

① 建築物のエネルギー消費性能に係る認定

 建築物の所有者は、所管行政庁に対し、当該建築物について建築物エネルギー消費性能基準に適合している旨の認定を申請することができる。

 所管行政庁は、当該申請に係る建築物が建築物エネルギー消費性能基準に適合していると認めるときは、その旨の認定をすることができる。


Point 建築物の所有者であれば、建築物のエネルギー消費性能に係る認定の申請をすることができる。既存建築物でもよく、エネルギー消費性能の向上のための修繕、模様替等をすることは要件となっていない。


② 認定を受けている旨の表示

 上記①の認定を受けた者は、当該認定を受けた建築物(以下「基準適合認定建築物」という。)、その敷地またはその利用に関する広告等に、当該基準適合認定建築物が認定を受けている旨の表示を付することができる。