- 適正化法ー7.宅地建物取引業法
- 5.自ら売主制限
- 自ら売主制限
- Sec.1
1自ら売主制限
宅建業者が自ら売主となり、宅建業者以外の者が買主となる宅地建物の売買契約では、消費者である買主を保護するために、売主である宅建業者に、とくに厳しい規制が課されている。ここでは、そのなかでも主なものを見ておく。
■担保責任についての特約の制限
(1) 原則
宅建業者は、自ら売主となり、宅建業者以外の者が買主となる宅地建物の売買契約において、その目的物が種類・品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任に関し、民法に規定するものより買主に不利となる特約をしてはならない。そして、これに反する特約は、無効となる。
Point1 「宅地建物の種類・品質に関する契約不適合があっても担保責任を負わない」旨の特約は無効となる。
Point2 買主も宅建業者である場合は、担保責任を負わない旨の特約も有効である。
(2) 例外
担保責任を追及することができる期間について、その目的物の引渡しの日から2年以上となる特約をする場合は、民法に規定するものより買主に不利となる特約であってもすることができる。
Point1 「宅地建物の引渡しの日から2年間、担保責任を負う」旨の特約は有効である。この場合は、買主が不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知したときであっても、売主は担保責任を負わなくてよくなるので、買主には不利となるが、特約は有効になる。
Point2 「宅地建物の引渡しの日から1年間、担保責任を負う」旨の特約は無効である。この場合、担保責任を負う期間は、民法の原則通りとなる。つまり、担保責任を負う期間が「引渡しの日から2年間」になるのではなく、引渡しの日から2年を経過していても、買主が不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知したときは、売主は担保責任を追わなければならない。
■手付の額の制限等
(1) 手付の性質
宅建業法では、宅建業者が自ら売主となり、宅建業者以外の者が買主となる売買契約で手付を受領したときは、その手付がいかなる性質のものであっても、解約手付とみなすことになっている。
宅建業者が、自ら売主となる宅地建物の売買契約の締結に際して手付を受領したときは、その手付がいかなる性質のものであっても、買主はその手付を放棄して、売主である宅建業者はその倍額を現実に提供して、契約の解除をすることができる。ただし、相手方が契約の履行に着手した後は、契約を解除することはできない。
これに反する特約で買主に不利なものは無効になる。 |
Point1 宅建業者が自ら売主となり、宅建業者でない者が買主となる売買契約では、たとえば、手付が解約手付ではなく、証約手付として受領されたものであっても、解約手付として扱われるということである。
Point2 宅建業者は手付の額を買主に返還すれば、手付解除することができる旨の特約は、無効になる。
(2) 手付の額の制限
宅建業者は、自ら売主となる宅地建物の売買契約の締結に際して、代金の額の10分の2を超える額の手付を受領することができない。 |
宅建業法によって手付を解約手付とみなしても、手付の額が高額すぎると、買主が手付放棄によって解除しにくくなるからである。宅建業者が代金額の10分の2を超える手付を受領している場合、10分の2を超える部分については、解約手付としては無効になる。
■手付金等の保全措置
不動産の売買には、契約成立と同時に「手付金」が支払われる場合が多い。手付金は、契約が滞りなく進めば、そのまま代金の一部とされる。しかし、宅建業者が破産をした場合は、売買の目的物は銀行などに差し押さえられ、手に入らなくなる。そればかりか、交付した手付金も返ってこないことになり、買主にとって酷な結果となりかねない。そこで、万が一の場合を考えて、交付した手付金等について、その返還請求権が発生した場合に、銀行等に連帯保証をしてもらうなど、その返還を確実にする手段が「手付金等の保全措置」である。
(1) 手付金等の保全措置
宅建業者は、宅地建物の売買で自ら売主となり、宅建業者でない者が買主となるものに関しては、保全措置を講じた後でなければ、買主から手付金等を受領してはならない。 |
保全措置が必要になる手付金等は、代金に充当されるものであって、契約の締結の日以後その宅地建物の引渡し前に支払われるものをいう。手付金に限らず、中間金や内金など、名称は問わない。
(2) 保全措置が不要になる場合(例外)
次の場合は、保全措置を講じなくてもよい。
① 取引の対象である宅地建物について買主への所有権移転の登記がされたとき、または買主が所有権の登記をしたとき
② 宅建業者が受領しようとする手付金等の額(既に受領した手付金等があるときは、その額を加えた額)が次の金額以下であるとき。 イ) 未完成物件:代金額の5%以下であり、かつ、1,000万円以下であるとき ロ) 完成物件:代金額の10%以下であり、かつ、1,000万円以下であるとき ※ 未完成物件か完成物件かは契約締結時で判断する。 |
例外の①は、買主に登記が移転、もしくは買主自身が登記をすることによって、誰に対しても所有権を対抗できるようになるからである。例外の②は、交付する手付金等が、代金額に比べ僅少なため、保全措置をとるまでのことはないとしたものである。
(3) 手付金等の保全方法
銀行等による連帯保証 | 保険事業者による保証保険 | 指定保管機関による保管 | |
未完成物件 | ○ | ○ | × |
完成物件 | ○ | ○ | ○ |
「銀行等による連帯保証」とは、宅建業者が、銀行・その他の金融機関との間で、将来生じるかもしれない「手付金等の返還債務」について連帯保証人となってもらう契約を結ぶものである。
「保険事業者による保証保険」とは、宅建業者が、将来生じるかもしれない「手付金等の返還債務」について、保険事業者の保険に加入するものである。
「指定保管機関による保管」とは、宅建業者が、あらかじめ国土交通大臣が指定する保管機関(保証協会など)との間に、手付金を保管してもらう契約(寄託契約)をしておき、実際に「手付金等の返還債務」が発生した場合に、その保管機関から返還してもらうものである。