- 適正化法ー7.宅地建物取引業法
- 3.重要事項の説明義務等
- 重要事項の説明義務等
- Sec.1
1重要事項の説明義務等
■重要事項の説明
「重要事項の説明」は、宅建業者の行う商品説明である。ここでは、重要事項の説明は、顧客に対し、その物件を買っても(借りても)よいかどうかを決めてもらうために説明するということを理解しておこう。
(1) 重要事項の説明義務
宅建業者は、権利を取得しようとする者に対して、その者が権利を取得しようとしている宅地建物に関し、その売買、交換または貸借の契約が成立するまでの間に、取引士をして、重要事項を記載した書面(重要事項説明書・35条書面)を交付して説明をさせなければならない。 |
(2) 重要事項の説明
① 説明義務者
説明義務を負っているのは宅建業者である。
② 説明の相手方
説明の相手方は、権利を取得しようとする者である。つまり、売買の場合は買主、交換の場合は相手方(代理・媒介のときは各当事者)、貸借の場合は借主である。
③ 説明の時期
説明の時期は、契約が成立するまでの間である。これは重要事項説明をする時期であって、重要事項説明書をこの期間に交付していればよいということではない。また、すべての重要事項説明を契約が成立するまでの間に行う必要がある。重要事項説明は、これから買うかどうかを決めてもらう、その材料を提供するのだから、契約が成立した後に説明しても意味がない。
④ 説明の担当者
実際に説明を担当するのは、取引士である。取引士であれば誰でもよいので、専任の取引士である必要はない。取引士は、取引士証を、説明の相手方に提示してから説明しなければならない。
⑤ 説明の方法
説明は、重要事項説明書を交付して行う。買主等の説明の相手方の承諾を得られたとしても、書面の交付を省略することはできない。この書面には取引士(専任の取引士である必要はない)が記名しなければならず、これを省略することはできない。
なお、この書面の交付に代えて、政令で定めるところにより、説明の相手方の承諾を得て、取引士に、当該書面に記載すべき事項を電磁的方法であって記名に代わる措置を講ずるものとして国土交通省令で定めるものにより提供させることができる。
Point 説明の場所に制限はなく、どこで説明してもかまわない。
⑥ 説明の相手方が宅建業者である場合
説明の相手方が宅建業者である場合は、取引士が記名した重要事項説明書を交付するだけでよく、取引士による説明を省略することができる。この場合に、書面の内容を説明してもかまわないが、相手方が宅建業者であれば、説明を担当する者が取引士でなくても、宅建業法に違反しない。
なお、この書面の交付に代えて、政令で定めるところにより、交付の相手方である宅建業者の承諾を得て、当該書面に記載すべき事項を電磁的方法であって取引士の記名に代わる措置を講ずるものとして国土交通省令で定めるものにより提供することができる。
■説明事項(重要事項説明書の記載事項)
重要事項説明では、少なくとも次の事項について、これらの事項を記載した書面を交付して、説明しなければならない。
(1) 対象となる宅地または建物に直接関係する事項
① 登記記録に記録された事項
② 都市計画法、建築基準法等の法令に基づく制限の概要 ③ 私道に関する負担に関する事項(建物の貸借の契約以外のものであるとき) ④ 飲用水・電気・ガスの供給施設および排水施設の整備状況(これらの施設が整備されていない場合においては、その整備の見通しおよびその整備についての特別の負担に関する事項) ⑤ 宅地造成または建物建築の工事完了時における形状、構造等(未完成物件のとき) ⑥ 建物状況調査(実施後1年を経過していないものに限る)を実施しているかどうか、およびこれを実施している場合におけるその結果の概要(既存の建物のとき) ⑦ 建物の建築および維持保全の状況に関する書類の保存の状況(既存の建物のとき) ⑧ 宅地建物が造成宅地防災区域内にあるときは、その旨 ⑨ 宅地建物が土砂災害警戒区域内にあるときは、その旨 ⑩ 宅地建物が津波災害警戒区域内にあるときは、その旨 ⑪ 宅地建物が所在する市町村の長が水防法に基づき提供する図面〔=水害ハザードマップ〕に当該宅地建物の位置が表示されているときは、当該図面における当該宅地建物の所在地 ⑫ 建物について、石綿の使用の有無の調査の結果が記録されているときは、その内容 ⑬ 建物(昭和56年6月1日以降に新築の工事に着手したものを除く)が耐震診断を受けたものであるときは、その内容 ⑭ 建物が住宅性能評価を受けた新築住宅であるときは、その旨(建物の売買・交換の契約のとき) |
Point1 (1)④では、施設が整備されていない場合は、その整備の見通しを説明しなければならない。
Point2 (1)⑥では、建物状況調査が実施されていない場合に、建業者が自ら建物状況調査を実施して説明をする必要はない。
Point3 (1)⑫では、耐震診断が実施されていない場合に、宅建業者が自ら耐震診断を実施して説明をする必要はない。
Point4 (1)⑬では、住宅性能評価の具体的な評価内容まで説明をする必要はない。
(2) 取引条件に関する事項
① 代金、交換差金および借賃以外に授受される金銭の額およびその金銭の授受の目的
② 契約の解除に関する事項 ③ 損害賠償額の予定または違約金に関する事項 ④ 手付金等を受領しようとする場合における手付金等の保全措置の概要(業者が自ら売主の場合) ⑤ 支払金または預り金を受領しようとする場合において、保証の措置・保全措置を講ずるかどうか、およびその措置を講ずる場合におけるその措置の概要 ⑥ 代金または交換差金に関する金銭の貸借のあっせんの内容およびそのあっせんに係る金銭の貸借が成立しないときの措置 ⑦ 宅地建物が種類・品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任の履行に関し保証保険契約の締結その他の措置を講ずるかどうか、およびその措置を講ずる場合におけるその措置の概要 ⑧ 割賦販売に関する事項(割賦販売の場合のみ) イ) 現金販売価格 ロ) 割賦販売価格 ハ) 宅地建物の引渡しまでに支払う金銭の額・支払時期・支払方法 ニ) 賦払金の額・支払時期・支払方法 |
Point4 宅地建物の引渡しの時期、登記の申請時期、天災その他不可抗力による損害の負担に関する事項は、説明事項(重要事項説明書の記載事項)ではない。これらは、後述の契約締結後に交付すべき書面(37条書面)の記載事項である。
(3) マンション(区分所有建物)の場合に加わる説明事項
建物の売買・交換の契約の場合は次に掲げるもののすべてが、建物の貸借の契約の場合は③および⑧のみが説明事項となる。
① 1棟の建物の敷地に関する権利の種類および内容
② 共用部分に関する規約の定め(案を含む)があるときは、その内容 ③ 専有部分の用途その他の利用の制限に関する規約の定め(案を含む)があるときは、その内容 ④ 1棟の建物またはその敷地の一部を特定の者にのみ使用を許す旨の規約の定め(案を含む)があるときは、その内容 ⑤ 1棟の建物の計画的な維持修繕のための費用、通常の管理費用その他のその建物の所有者が負担しなければならない費用を特定の者にのみ減免する旨の規約の定め(案を含む)があるときは、その内容 ⑥ 1棟の建物の計画的な維持修繕のための費用の積立てを行う旨の規約の定め(案を含む)があるときは、その内容および既に積み立てられている額 ⑦ 建物の所有者が負担しなければならない通常の管理費用の額 ⑧ 1棟の建物およびその敷地の管理が委託されているときは、その委託を受けている者の氏名(法人にあっては、その商号または名称)および住所(法人にあっては、その主たる事務所の所在地) ⑨ 1棟の建物の維持修繕の実施状況が記録されているときは、その内容 |
Point5 (3)②~⑥の規約の定めには案も含んでいるので、規約が案の状態であれば、その規約の案の内容を説明しなければならない
Point6 (3)③では、管理規約にペット飼育禁止、ペットの飼育制限、楽器演奏禁止、ピアノの使用の制限などの制限があるときは、そのことについて説明しなければならない。
Point7 (3)④は、専用使用権に関する規約の定めである。
Point8 (3)⑥は、修繕積立金に関する規約の定めである。定めがある場合は、すでに積み立てられている修繕積立金の額も説明しなければならない。
Point9 (3)⑧では、管理事務の内容やその実施方法など、管理委託契約の内容まで説明する必要はない。
(4) 貸借の場合に加わる説明事項
① 台所、浴室、便所その他の建物の設備の整備の状況(完成物件のとき)
② 契約期間および契約の更新に関する事項 ③ 定期借地権を設定しようとするとき、または定期建物賃貸借もしくは終身建物賃貸借をしようとするときは、その旨 ④ 宅地建物の用途その他の利用に係る制限に関する事項 ⑤ 敷金その他いかなる名義をもって授受されるかを問わず、契約終了時において精算することとされている金銭の精算に関する事項 ⑥ 宅地建物の管理が委託されているときは、その委託を受けている者の氏名(法人にあっては、その商号または名称)および住所(法人にあっては、その主たる事務所の所在地) ⑦ 契約終了時における宅地の上の建物の取壊しに関する事項を定めようとするときは、その内容 |
■説明事項(重要事項説明書の記載事項)のまとめ
(1) 対象となる宅地建物に直接関係する事項
説明事項(重要事項説明書の記載事項) | 売買・交換 | 宅地の貸借 | 建物の貸借 |
登記記録に記録された事項 | ○ | ○ | ○ |
都市計画法・建築基準法等の法令に基づく制限の概要 | ○ | ○ | ○ |
私道に関する負担に関する事項 | ○ | ○ | × |
飲用水・電気・ガスの供給施設および排水施設の整備状況 | ○ | ○ | ○ |
宅地造成または建物建築の工事完了時における形状・構造等(未完成物権のとき) | ○ | ○ | ○ |
建物状況調査の結果の概要(既存建物のとき) | ○ | × | ○ |
建物の建築および維持保全の状況に関する書類の保存の状況(既存の建物のとき) | ○ | × | × |
当該宅地建物が造成宅地防災区域内か否か | ○ | ○ | ○ |
当該宅地建物が土砂災害警戒区域内か否か | ○ | ○ | ○ |
当該宅地建物が津波災害警戒区域内か否か | ○ | ○ | ○ |
水防法に基づき作成された水害ハザードマップにおける当該宅地建物の所在地 | ○ | ○ | ○ |
石綿使用調査の内容 | ○ | × | ○ |
耐震診断の内容 | ○ | × | ○ |
住宅性能評価を受けた新築住宅である場合 | ○ | × | × |
○…説明しなければならない ×…説明しなくてよい
(2) 取引条件に関する事項
説明事項(重要事項説明書の記載事項) | 売買・交換 | 宅地の貸借 | 建物の貸借 |
代金、交換差金および借賃以外に授受される金額 | ○ | ○ | ○ |
契約の解除に関する事項 | ○ | ○ | ○ |
損害賠償額の予定または違約金に関する事項 | ○ | ○ | ○ |
手付金等の保全措置の概要(業者が自ら売主の場合) | ○ | × | × |
支払金または預り金の保全措置の概要 | ○ | ○ | ○ |
金銭の貸借のあっせん | ○ | × | × |
種類・品質に関する担保責任の履行に関する措置の概要 | ○ | × | × |
割賦販売に係る事項 | ○ | × | × |
○…説明しなければならない ×…説明しなくてよい
(3) マンション(区分所有建物)の場合に加わる説明事項
説明事項(重要事項説明書の記載事項) | 売買・交換 | 貸借 |
敷地に関する権利の種類および内容 | ○ | × |
共用部分に関する規約の定め(案を含む) | ○ | × |
専有部分の用途その他の利用の制限に関する規約の定め(案を含む) | ○ | ○ |
専用使用権に関する規約の定め(案を含む) | ○ | × |
所有者が負担すべき費用を特定の者にのみ減免する旨の規約の定め(案を含む) | ○ | × |
計画修繕積立金等に関する事項(規約の定めについては案を含む) | ○ | × |
通常の管理費用の額 | ○ | × |
管理の委託先 | ○ | ○ |
建物の維持修繕の実施状況の記録 | ○ | × |
○…説明しなければならない ×…説明しなくてよい
(4) 貸借の場合に加わる説明事項
説明事項(重要事項説明書の記載事項) | 土地の貸借 | 建物の貸借 |
建物の設備の整備の状況(完成物件のとき) | × | ○ |
契約期間および更新に関する事項 | ○ | ○ |
定期借地権・定期建物賃貸借・終身建物賃貸借 | ○ | ○ |
用途その他の利用の制限に関する事項 | ○ | ○ |
敷金等の精算に関する事項 | ○ | ○ |
管理の委託先 | ○ | ○ |
契約終了時における宅地上の建物の取壊しに関する事項 | ○ | × |
○…説明しなければならない ×…説明しなくてよい