- 商法・会社法ー2.会社法
- 8.組織再編
- 組織再編
- Sec.1
1組織再編
■組織再編
(1) 事業の譲渡等
① 事業譲渡
事業譲渡とは、一定の事業目的のために組織化され、有機的一体として機能する財産の全部または一部を譲渡することである。これによって、譲渡会社がその財産によって営んでいた営業的活動の全部または重要な一部を譲受人に受け継がせ、譲渡会社がその譲渡の限度に応じ法律上当然に競業避止業務を負う結果を伴う(21条)。譲渡会社は、当事者の別段の意思表示がない限り、同一市町村の区域内・隣接市町村の区域内において、その事業を譲渡した日から20年間は、同一の事業を行ってはならない(21条1項)。
事業の譲渡は会社間の契約によって行われるが、これにより株主に重大な影響が及ぶため、株主保護の観点から、事業の全部の譲渡(467条1項1号)および事業の重要な一部(総資産額の5分の1を超える事業)の譲渡(467条1項2号)などの場合は、株主総会の特別決議が要求される(309条2項11号)。事業譲渡の決議の前に反対の通知をし、当該株主総会で反対した株主等(いわゆる反対株主)は、株式会社に対して、自己の有する株式の買取りを請求することができる(469条)。
② 事業の譲受
事業の全部の譲受け(467条1項3号)とは、一定の事業目的のために組織化され、有機的一体として機能する財産の譲受けであり、譲受会社が譲渡人の事業活動を承継し、譲渡会社が競業避止義務を負担する契約をいう。この場合も株主総会の特別決議が要求される(309条2項11号)。事業譲渡の場合と同様、反対株主には株式買取請求権がある。
③ 事業の譲渡等の効果
事業譲渡の結果、有機的一体として機能する財産が譲渡会社から譲受会社に移転する。しかし、譲渡会社が第三者に負っていた債務は、当然には譲受会社に移転しない。ただし、譲受会社が譲渡会社の商号を引き続き使用する場合には、譲受会社も譲渡会社の事業によって生じた債務を弁済する責任を負う(22条1項)。また、譲受会社が譲渡会社の商号を引き続き使用しない場合であっても、債務を引受ける旨の公告をしたときは、譲渡会社の債権者は、その譲受会社に対して弁済の請求をすることができる(23条1項)。
(2) 合併
① 意義
合併とは、2以上の会社が契約により、法定の手続にしたがって1つの会社になることをいう。合併には、吸収合併と新設合併とがある。
② 合併の種類
(a) 吸収合併
会社が他の会社とする合併であって、合併により消滅する会社の権利義務の全部を合併後存続する会社に承継させるものをいう(2条27号)。
(b) 新設合併
2以上の会社がする合併であって、合併により消滅する会社の権利義務の全部を合併により設立する会社に承継させるものをいう(2条28号)。
③ 合併の手続
合併は存続会社と消滅会社との間の合併契約により行われる(748条)。合併契約を締結したときは、合併契約の内容など所定の事項を記載した書面または電磁的記録を本店に備え置き、一定期間、株主および債権者の閲覧に供しなければならない。株主の利益を守るために、契約によって定められて日に存続会社および消滅会社の双方において株主総会を開催し、合併にはその特別決議による承認が必要になる。合併の決議の前に反対の通知をし、当該株主総会において反対した株主等は、会社に対して株式の買取を請求することができる(785条)。会社債権者を保護するために、合併当時会社に対し債権を有する者には、合併についての異議申し立ての機会を提供しなければならない。そして、異議を申し出た債権者に対しては、原則として弁済をするか相当の担保を提供しなければならない。吸収合併の場合は、合併の効力発生日に、存続会社が消滅会社の権利義務を承継する。存続会社の変更登記および消滅会社の解散登記をすることによって、合併は完了する。
(3) 会社分割
① 意義
会社分割とは、1つの会社を2つ以上の会社に分けることをいう。会社分割をすることができるのは、株式会社または合同会社に限られる(757条、762条1項)。会社分割には吸収分割と新設分割とがある。
② 会社分割の種類
(a) 吸収分割
『吸収分割』とは、株式会社または合同会社がその事業に関して有する権利義務の全部または一部を分割後他の会社に承継させることをいう(2条29号)。
(b) 新設分割
『新設分割』とは、1または2以上の株式会社または合同会社がその事業に関して有する権利義務の全部または一部を分割により設立する会社に承継させることをいう(2条30号)。
(4) 株式交換・株式移転
① 意義
株式交換および株式移転は、完全親会社(他の会社の発行済株式の全部を保有する会社)を創設するための制度である。
② 株式交換
『株式交換』とは、株式会社がその発行済株式(株式会社が発行している株式をいう)の全部を他の株式会社または合同会社に取得させることをいう(2条31号)。
株式会社が株式交換をする場合においては、当該株式会社の発行済株式の全部を取得する会社(株式会社または合同会社に限る。以下「株式交換完全親会社」という)との間で、株式交換契約を締結する(767条後段)等の一定の手続を履まなければならない。
合名会社または合資会社は、株式交換完全親会社となることができない。
③ 株式移転
『株式移転』とは、1または2以上の株式会社がその発行済株式の全部を新たに設立する株式会社に取得させることをいう(2条32号)。
株式会社は、株式移転をする場合においては、株式移転計画を作成する(772条1項後段)等の一定の手続を履まなければならない。
(5) 株式交付
『株式交付』とは、株式会社が他の株式会社をその子会社とするために当該他の株式会社の株式を譲り受け、当該株式の譲渡人に対して当該株式の対価として当該株式会社の株式を交付することをいう(2条32号の2)。
(6) 組織変更
『組織変更』とは、①株式会社がその組織を変更することにより合名会社、合資会社または合同会社となること、②合名会社、合資会社または合同会社がその組織を変更することにより株式会社となることをいう(2条26号)。
組織変更をするためには、組織変更計画を作成する(743条後段)等の一定の手続を履まなければならない。