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1計算、定款変更その他

堀川 寿和2021/12/07 14:23

計算、定款変更その他

(1) 株式会社の計算等

① 意義

 『株式会社の計算』とは、株式会社の行う経済活動の成果を会計的に処理することをいう。株式会社においては、株主は間接有限責任を負うにすぎず、会社債権者にとって債権の満足を得るための責任財産は、会社財産だけである。このため、株式会社における計算の規制については、会社および株主の利益を保護することのみならず、会社債権者のために会社財産を確保することが目的となる。


② 会計帳簿等

(a) 会計帳簿

 株式会社は、法務省令で定めるところにより、適時に、正確な会計帳簿を作成しなければならない(432条1項)。

 そして、会計帳簿の閉鎖の時から10年間、その会計帳簿およびその事業に関する重要な資料を保存しなければならない(同条2項)。

(b) 計算書類等

 株式会社は、法務省令で定めるところにより、各事業年度に係る計算書類(貸借対照表、損益計算書その他株式会社の財産および損益の状況を示すために必要かつ適当なものとして法務省令で定めるものをいう)および事業報告ならびにこれらの附属明細書を作成しなければならない(435条2項)。

 そして、計算書類を作成した時から10年間、当該計算書類およびその附属明細書を保存しなければならない(同条4項)。

(c) 連結計算書類

 『連結計算書類』とは、会計監査人設置会社およびその子会社から成る企業集団の財産および損益の状況を示すために必要かつ適当なものとして法務省令で定めるものをいう。

会計監査人設置会社は、法務省令で定めるところにより、各事業年度に係る連結計算書類を作成することができる(444条1項)が、事業年度の末日において大会社であって金融商品取引法24条1項の規定により有価証券報告書を内閣総理大臣に提出しなければならないものは、当該事業年度に係る連結計算書類を作成しなければならない(同条3項)。


③ 資本金の額等

(a) 資本金の額および準備金の額

 株式会社の資本金の額は、会社法に別段の定めがある場合を除き、設立または株式の発行に際して株主となる者が当該株式会社に対して払込みまたは給付をした財産の額とされている(445条1項)。もっとも、払込みまたは給付に係る額の2分の1を超えない額は、資本金として計上しないでおくことができ(同条2項)、資本金として計上しないこととした額は、資本準備金として計上しなければならない(同条3項)。

(b) 資本金の額の減少等

 株式会社は、原則として、株主総会の特別決議(309条2項9号)により、資本金の額を減少することができる(447条1項3項)。

また、株式会社は、原則として、株主総会の決議により、準備金の額を減少することができる(448条1項3項)。

cf. 株式会社が資本金または準備金の額を減少する場合(減少する準備金の額の全部を資本金とする場合を除く)には、当該株式会社の債権者は、当該株式会社に対し、資本金等の額の滅少について異議を述べることができる(449条1項)。


(c) 資本金の額の増加等

 株式会社は、株主総会の決議により、剰余金の額を減少して、資本金の額を増加することができる(450条1項・2項)。

 また、株式会社は、株主総会の決議により、剰余金の額を減少して、準備金の額を増加することができる(451条1項・2項)。


④ 剰余金の配当の規制

 剰余金の配当により株主に対して交付する金銭等(当該株式会社の株式を除く)の帳簿価額の総額は、当該行為がその効力を生ずる日における分配可能額を超えてはならない(461条1項8号)。これに違反して株式会社が当該行為をした場合には、当該行為により金銭等の交付を受けた者ならびに当該行為に関する職務を行った業務執行者(職務執行取締役(指名委員会等設置会社にあっては、執行役)その他当該業務執行取締役の行う業務の執行に職務上関与した者として法務省令で定めるもの)等は、当該株式会社に対し、連帯して、当該金銭等の交付を受けた者が交付を受けた金銭等の帳簿価額に相当する金銭を支払う義務を負う(462条1項6号)。


(2) 株式会社の定款の変更

 株式会社は、その成立後、株主総会の特別決議(309条2項11号)によって、定款を変更することができる(466条)。


(3) 株式会社の解散

① 意義

 『株式会社の解散』とは、株式会社がその目的である営業活動をやめ、法人格の消滅をきたすべき状態に入ることをいう。


② 解散事由

 株式会社は、次の事由によって解散する(471条)。

1. 定款で定めた存続期間の満了

2. 定款で定めた解散の事由の発生

3. 株主総会の特別決議(309条2項11号)

4. 合併(合併により当該株式会社が消滅する場合に限る)

5. 破産手続開始の決定

6. 解散を命ずる裁判


(4) 株式会社の清算

① 意義

 『株式会社の清算』とは、解散等により営業活動を停止した株式会社の法人格を消滅させるに当たって、その財産関係を整理することをいう。

 清算をする株式会社(『清算株式会社』という)は、清算の目的の範囲内において、清算が結了するまではなお存続するものとみなされる(476条)。


② 清算の開始原因

株式会社は、次の場合には、会社法の定めるところにより、清算をしなければならない(475条)。

1. 解散した場合(合併により解散した場合および破産手続開始の決定により解散した場合であって当該破産手続が終了していない場合を除く)

2. 設立の無効の訴えに係る請求を認容する判決が確定した場合

3. 株式移転の無効の訴えに係る請求を認容する判決が確定した場合