• 行政法ー2.行政組織法
  • 4.国の行政組織
  • 国の行政組織
  • Sec.1

1国の行政組織

堀川 寿和2021/12/06 09:39

 国の行政は、内閣が行うことが基本であるが、すべて内閣が単独で行うことは不可能なので、内閣の統轄下で、府・省・その外局としての庁や委員会が置かれている。


内閣

内閣は、行政権における最高機関であり、国会の指名に基づいて任命された首長たる内閣総理大臣および内閣総理大臣により任命された国務大臣をもって組織される合議体である(内閣法2条1項)。内閣は、国家行政組織を統括する(国家行政組織法2条)。


(1) 内閣総理大臣

 内閣総理大臣は、内閣の首長である(内閣法2条)。内閣総理大臣は、閣議を主宰し、内閣の重要政策に関する基本的な方針その他の案件を発議することができる(同法4条2項)。

 内閣総理大臣は、閣議にかけて決定した方針に基づいて、行政各部を指揮監督する。


(2) 国務大臣

 内閣の構成員である内閣総理大臣以外の大臣を国務大臣という。国務大臣は、内閣総理大臣により任命される。各大臣は、別に法律の定めるところにより、原則として、主任の大臣として、行政事務を分担管理する。


(3) 内閣府

① 内閣府の設置・任務

 内閣府は内閣に設置され(内閣府設置法2条)、内閣の重要政策に関する内閣の事務を助けることを任務とする(同法3条1項)。


② 内閣府の長

 内閣府の長は、内閣総理大臣である(内閣府設置法6条1項)。


③ 内閣総理大臣の権限

 内閣総理大臣は、内閣府の事務を統括し、職員の服務について統督する(内閣府設置法7条1項)。

 内閣総理大臣は、内閣府に係る主任の行政事務について、法律もしくは政令を施行するため、または法律もしくは政令の特別の委任に基づいて、内閣府の命令として内閣府令を発することができる(同法7条3項)。


④ 特命担当大臣の設置

 内閣総理大臣は、内閣の重要政策に関して行政各部の施策の統一を図るために特に必要がある場合においては、内閣府に、国務大臣をもって充てられる特命担当大臣を置くことができる(内閣府設置法9条)。


国家行政組織法上の行政機関

(1) 国の行政機関

 行政組織のため置かれる国の行政機関は、省、委員会および庁の3種であり、その設置および廃止は、別に法律の定めるところによる(国家行政組織法3条2項)。

 国家行政組織法上の国の行政機関は次のとおり。



委員会
総務省公害等調整委員会消防庁
法務省公安審査委員会出入国在留管理庁
公安調査庁
外務省

財務省
国税庁
文部科学省
スポーツ庁
文化庁
厚生労働省中央労働委員会
農林水産省
林野庁
水産庁
経済産業省
資源エネルギー庁
特許庁
中小企業庁
国土交通省運輸安全委員会観光庁
気象庁
海上保安庁
環境省原子力規制委員会
防衛省
防衛装備庁


Point 独立行政法人は国家行政組織法上の国の行政機関ではない。独立行政法人は、独立行政法人通則法および個別法の定めるところにより設立される法人である。


(2) 省

① 省の設置

 省は、内閣の統轄の下に各省大臣の分担管理する行政事務および当該大臣が掌理する行政事務をつかさどる機関として設置される(国家行政組織法3条3項)。


② 各省の長

 各省の長は、それぞれ各省大臣とし、内閣法にいう主任の大臣として、それぞれ行政事務を分担管理する(同法5条1項)。各省大臣は、国務大臣のうちから、内閣総理大臣が命ずるが、内閣総理大臣が自ら当たることを妨げない(同法5条3項)。


③ 各省大臣の権限

 各省大臣は、その機関の事務を統括し、職員の服務について、これを統督する(国家行政組織法10条)。各省大臣は、その機関の所掌事務について、命令または示達をするため、所管の諸機関および職員に対し、訓令または通達を発することができる(同法14条2項)。

 各省大臣は、主任の行政事務について、法律または政令の制定、改正または廃止を必要と認めるときは、案をそなえて、内閣総理大臣に提出して、閣議を求めなければならない(同法11条)。

 各省大臣は、主任の行政事務について、法律もしくは政令を施行するため、または法律もしくは政令の特別の委任に基づいて、それぞれその機関の命令として省令を発することができる(同法12条1項)。


④ 各省に設置される機関

 各省には、各省大臣の下に副大臣および大臣政務官の他、大臣を助け、省務を整理し、各部局および機関の事務を監督する職として事務次官が置かれる(国家行政組織法16条・17条・18条)。


(3) 委員会・庁

① 委員会・庁の設置

 委員会および庁は、省に、その外局として設置される(国家行政組織法3条3項)。


② 委員会・庁の長

 委員会の長は、委員長とされ、庁の長は、長官とされる(国家行政組織法6条)。


③ 委員会(の委員長)・庁の長官の権限

 各委員会の委員長および各庁の長官は、その機関の事務を統括し、職員の服務について、これを統督する(国家行政組織法10条)。各委員会および各庁の長官は、その機関の所掌事務について、命令または示達をするため、所管の諸機関および職員に対し、訓令または通達を発することができる(同法14条2項)。

 各委員会及び各庁の長官は、別に法律の定めるところにより、政令及び省令以外の規則その他の特別の命令を自ら発することができる(同法13条1項)

(4) 国の機関(省・委員会・庁)に設置することができる機関等

① 審議会等

 国の行政機関には、法律の定める所掌事務の範囲内で、法律または政令の定めるところにより、重要事項に関する調査審議、不服審査その他学識経験を有する者等の合議により処理することが適当な事務をつかさどらせるための合議制の機関(審議会等)を設置することができる(国家行政組織法8条)。


② 施設等機関

 国の行政機関には、法律の定める所掌事務の範囲内で、法律または政令の定めるところにより、試験研究機関、検査検定機関、文教研修施設(これらに類する機関および施設を含む。)、医療更生施設、矯正収容施設および作業施設を設置することができる(国家行政組織法8条の2)。


③ 特別の機関

 国の行政機関には、特に必要がある場合においては、法律の定める所掌事務の範囲内で、法律の定めるところにより、特別の機関を設置することができる(国家行政組織法8条の3)。


独立行政機関

  独立行政機関とは、国においては、会計検査院や人事院のように、内閣の指揮監督から独立してその権限を行使する行政機関をいう。その権限や所掌事務の性格から、中立・公正が要求されるために、このような行政機関が存在する。このほかに、公正取引委員会のような行政委員会も独立行政機関である。


Point 人事院や会計検査院は、独立行政機関であって、国家行政組織法上の国の行政機関ではない。