- 行政法ー2.行政組織法
- 5.公物法
- 公物法
- Sec.1
1公物法
公物とは、国・地方公共団体の管理によって直接に公の目的に供される個々の有体物のことをいう。例えば、河川や道路、官公署の建物などが挙げられる。
【参考】
特定の行政目的に強要される人的手段及び物的手段の総合体を意味する営造物という概念がある。公物は物的手段に限られ、「総合体ではなく個々の物を意味する点で、「営造物」概念と異なっている。つまり、「公物」は、「営造物」のうちの個々の物的施設を意味する。 |
■公物の分類
(1) 公共用物と公用物(目的による分類)
① 公共用物
「公共用物」とは、直接一般国民・住民の共同使用に供されることを目的とする物(例:公民館、道路、公園)をいう。
② 公用物
「公用物」とは、主として国・地方公共団体の使用に供される物(官公署の建物、国公立学校の校舎、公用車)をいう。
(2) 自然公物と人工公物(公物としての実体の備え方による分類)
① 自然公物
「自然公物」とは、自然のままの状態で公の用に役立ちうる実体を有する物(例:河川、海浜、湖沼)をいう。
② 人工公物
「人工公物」とは、人の手を加えることで初めてその実体を備える物(例:道路、公園、官公署の建物)をいう。
(3) 自有公物と他有公物(公物の管理権と所有権の関係による分類)
① 自有公物
「自有公物」とは、公物の管理主体が同時にその公物の所有者である物をいう。
② 他有公物
「他有公物」とは、公物の管理主体以外の者がその公物の所有者である物をいう。
■公物の成立・消滅
(1) 公物の成立
公共用物 | 公用物 | |
実体具備 | 必要 | |
公用開始 | 必要(公用開始とは、公の目的に供する意思およびその公示をいい、公衆を名あて人とする行政行為である。) | 不要(事実上の使用開始があればよい。) |
※ 海岸や河川は、本来自然のままで公共の用に供されていると考えられているため、「自然公物」については、その成立を観念することができない。
(2) 公物の消滅
① 公共用物
(a) 物の形態が永久的に変化して原状回復不能の場合。
(b) 公用廃止(公物を消滅させるという行政主体の意思表示)。
② 公用物
(a) 物の形態が永久的に変化して原状回復不能の場合。
(b) 事実上物の使用を中止した場合(公用廃止の意思表示は不要)。
■公物をめぐる法律関係
(1) 公物と私的所有権
① 公物について私人の所有権が当然に否定されるわけではない(例:私有公物)。
② 法律の明文によって私的所有権が否定されている例もある(河川法2条2項等)。
③ 海面下の土地は、そのままの状態では、私法上所有権の客体となる土地にあたらない(最判S61.12.16)。
(2) 公物の取得時効
判例 | 最判S51.12.24 |
本件係争地(公図上水路として表示されている国有地)は、古くから周辺の田とともに水田・畦畔として使用されていた。自作農創設特別措置法によって国(Y)から本件田の売渡を受けたXはこれに本件係争地も含まれていると信じ、その後も平穏公然にその占有を続けた。そして10年経過後、所有権の確認を求めて出訴した。 |
《判旨》 | 公共用財産が、長年の間事実上公の目的に供用されずに放置され、公共用財産としての形態、機能を全く喪失し、このものの上に他人の平穏かつ公然の占有が継続したが、そのため実際上公の目的が害されるようなこともなく、もはやその物を公共用財産として維持すべき理由がなくなった場合には、この公共用財産について黙示的に公用が廃止されたものとして、これにつき取得時効の成立を妨げない。
本件係争地については黙示の公用廃止があったものといえ、Xの時効取得が認められる。 |
(3) 公物(公共用物)の使用関係
① 一般使用(自由使用)
『一般使用』とは、許可等の特別の手続を必要とせずに、一般国民が好物を自由に使用することができる場合(例:道路や広場の通行、公園での休憩、海水浴)という。
② 許可使用
『許可使用』とは、一般使用と異なる形態での使用であり、一般的に禁止しておき、特定の場合にその禁止を解除することによって公物を使用することができる場合(例:道路でデモ行進をする)をいう。
③ 特許使用
『特許使用』とは、公物につき、一般の人には許されない特別の使用権(占用権)を設定することにより、公物を使用することができる場合(例:道路に電柱を立てる、公共施設を独占的に使用する)をいう。