- 行政法ー2.行政組織法
- 3.上級庁の指揮監督権
- 上級庁の指揮監督権
- Sec.1
1上級庁の指揮監督権
■上級庁の指揮監督権
行政庁は行政主体の意思を決定、表示する権能をもつが、行政庁毎にその表示する意思内容に矛盾があると行政主体の意思が分裂することになってしまう。そこで、行政意思の分裂を避けその統一を保持するため、上級行政庁はその系統下にある下級行政庁を指揮監督する上命下服のピラミッド構造をとり、最終的には、行政責任が最上級の行政庁に集中する建前がとられている。指揮監督権の内容としては主に以下の点が挙げられる。
① 監視権
下級行政機関の事務の執行を調査し、報告を徴するなどの権限
② 許認可権
下級行政機関の事務遂行を事前にチェックするため、あらかじめ権限行使につき許可や認可を求めるよう要求する権限(行政内部的なものであり、後述の行政行為とは概念が異なることに注意)
③ 指揮命令権(訓令・通達等の訓令権)
下級庁の行政内容を指示する権限
なお、上級行政庁が下級行政庁の権限行使を指揮するために発する命令を「訓令」という。訓令のうち、書面化したものが「通達」と呼ばれる。明文の規定がなくても行使できる。これは、行政組織内部の規律を維持するためのものであるので、国民を拘束する効力はない。
【国家行政組織法14条2項】
各省大臣、各委員会及び各庁の長官は、その機関の所掌事務について、命令又は示達するため、所管の諸機関及び職員に対し、訓令又は通達を発することができる。 |
④ 取消・停止権
下級行政機関の違法・不当な行為を取消しまたは停止する権限
⑤ 下級行政庁間の権限の争いを裁定する権限
下級行政機関の間で生じた権限の争いを裁定する権限