- 行政法ー2.行政組織法
- 2.権限の委任・代理・代決(専決)
- 権限の委任・代理・代決(専決)
- Sec.1
1権限の委任・代理・代決(専決)
行政官庁の権限は、法律によって始めて付与されるものである以上、その権限は当該行政官庁が自ら行使し、その権限の範囲内でのみ活動できる。もっとも、例えば病気など一定の事由が発生したときに、例外的に、委任・代理および代決(専決)といわれる方法によって他の行政機関に権限の全部または一部を行使させることができる。
■権限の委任・代理・代決(専決)
(1) 権限の委任
権限の委任とは、行政機関が法律上定められた自己の権限の一部を他の行政機関の権限に移すものである。権限が委任されると、当該権限が、そのまま受任行政庁へ移るので、委任行政庁は自ら権限を失い、受任行政庁が自己の名前と責任で権限を行使することになるわけである。委任機関は受任機関を指揮監督することは、原則としてできない。しかし、上級機関が下級機関に権限を委任した場合には、例外的に、下級機関を指揮監督することができる。
権限の委任をする場合には、法律の根拠を要する。委任は法律によって与えられた行政機関の権限を他の機関の手に移してしまうからである。
(2) 権限の代理
権限の代理とは、ある行政機関の権限の全部または一部を他の行政機関が代わって行使し、ある行政機関が自ら行使したと同様の法律効果を生じさせる法律関係をいう。権限そのものは代理機関に移転しない。代理は、その原因から見て、さらに2つの種類に区分される。
① 授権代理:本来の行政庁が有する権限の付与行為(=授権)によって代理関係が発生する場合。この場合、委任とは異なり権限の移動が生じないため、必ずしも法律の根拠が必要ではない。
② 法定代理:本来の行政庁が有する権限の付与行為ではなく、法定事実(行政庁が欠けたときまたは病気等)の発生に基づいて、法律の定めるところより代理関係が生ずる場合。この法定代理には、さらに2つの種類がある。
(a) 狭義の法定代理
法定事実の発生により、当然に代理関係が生ずる場合(国家公務員法11条3項等)。
(b) 指定代理
法律事実の発生により、あらかじめ本来の行政庁が指定しておいた機関に代理権が生ずる場合(内閣法9条、10条等)。
(3) 代決(専決)
行政庁が専決規程などで、その補助機関に対して日々の事務処理についての具体的決定を委ねるが、外部に対する関係では、あくまで本来の行政庁自身の名で行われるものをいう。内部的委任ともいう。
【権限の委任・代理 まとめ】
権限の委任 | 権限の代理 | ||
授権代理 | 法定代理 | ||
行使しうる権限の範囲 | 権限の一部のみ(本来の行政庁の存在意義がなくなるから) | 権限の一部 | 権限の全てを当然に代理 |
権限の行使方法 | 委任を受けた機関がその名と責任で行使 | 代理する行政機関が代理関係を明示して権限行使 | |
法律の根拠の要否 | 必要(権限の移動があるため) | 不要(権限の移動がないため) | 性質上当然に法律の根拠がある |
外部への公示の要否 | 必要 | 不要 |