• 行政法ー2.行政組織法
  • 1.行政上の組織
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1行政上の組織

堀川 寿和2021/12/06 09:25

 行政法では、私人と行政との関係という視点から、行政の外部関係(行政と私人との関係)および行政の内部関係(行政内部での組織等の諸関係)とを区別して考えることができる。このうち、その内部関係について規定する法の総称を『行政組織法』という。行政組織の構造と各組織の関係、組織を構成する担い手の法的性質等がその具体的な内容となる。

 広い意味では、公務員法・公物法もこれに含まれる。


行政主体

 行政主体とは、行政上の権利・義務の主体となり、自己の名と責任で行政を行う団体をいう。法人格をもつ。行政主体の種類は以下のとおり。


(1) 国

 国は、最も重要な行政主体である。


(2) 地方公共団体

  地方公共団体には、普通地方公共団体として「都道府県」と「市町村」がある。他方、特別地方公共団体として、「特別区」(東京都の23区)、「地方公共団体の組合」、「財産区」がある。


地方公共団体普通地方公共団体都道府県
市町村
特別地方公共団体特別区
地方公共団体の組合
財産区


(3) その他の行政主体

 その他の行政主体として、①公共組合、②特殊法人、③独立行政法人、④国立大学法人などがある。


公共組合特別の法律に基づいて、公共的な事業を行うために一定の組合員によって組織される社団法人である。その目的の公共性のために、法律によって、組合員が強制的に法人への加入および経費の支払いを義務付けられ、その設立および解散に国の意思が介在し、かつ、国の監督の下で公権力の行使が認められている。
例: 土地区画整理法による土地区画整理組合、健康保険法による健康保険組合等
特殊法人法律により直接に設立される法人または特別の法律により特別の設立行為をもって設立するべきものとされる法人のうち、独立行政法人を除いたもの。その新設、廃止等に関する審査が総務省によって行われる。
例: 公庫(沖縄振興開発金融公庫)、事業団(日本私立学校振興・共済事業団)等
独立行政法人公共上の見地から確実に実施されることが必要な事務等であって、国が直接に実施する必要のないもののうち、民間の主体に委ねた場合には必ずしも実施されないおそれがあるものを効率的かつ効果的に行わせることを目的として、独立行政法人通則法および個別法の定めるところにより設立される法人。
例: 国立公文書館、造幣局、国立科学博物館等
国立大学法人国立大学を設置することを目的として、国立大学法人法の定めるところにより設立される法人。


(4) その他の公共的な業務を行う法人

 このほかに、公共的な業務を行う法人として、①認可法人、②指定法人がある。


認可法人民間の関係者が発起人となって自主的に設立する法人で、業務の公共性などの理由によって、設立については特別の法律に基づき主務大臣の認可が要件となっている法人。
指定法人特別の法律に基づき特定の行政事務を遂行するものとして行政庁により指定された民法上の法人であって、行政処分権限を付与されたものである。



行政機関

 行政主体はいずれも法人であるから、その事業を現実に行うためには行政主体のために、その手足となって行為する機関を設ける必要がある。このような機関を行政機関という。行政機関は様々な分類が可能であるが、とりわけ私人との関係の観点からは、以下のように種類分けすることができる。


行政庁行政主体の法律上の意思を決定し、これを外部に表示する権限をもった機関のことをいう(各省大臣・都道府県知事・市町村長・税務署長等)。行政庁の行った行為の効果は行政主体に帰属する。通常、行政行為を行うことができるのは行政庁である。行政庁にはその意思決定の方法によって、独任制(1人から成る)のもの(例えば大臣や市長村長など)や、合議制(複数人から成る)のもの(例えば公正取引委員会、公安委員会、人事委員会等)に区別される。
補助機関各省庁の事務次官、局長、事務官や、地方公共団体の副知事、副市町村長、事務吏員等のように、行政庁その他の行政機関の職務を補助する機関。
諮問機関行政庁から諮問を受けて意見を具申する機関。各種の審議会(法制審議会、中央教育審議会など)がこれにあたる。諮問機関の出した答申は、行政庁を法的には拘束しない。ただし、諮問手続が法律上要求されているにもかかわらず、これを無視した場合、あるいは不公正な審議手続きに基づいて行政決定を行った場合は、違法となる。この場合、常に無効となるわけではないが、瑕疵の程度により、取消しの対象となることがある。
参与機関行政庁の意見を拘束する議決を行う行政機関。諮問機関よりも、より専門性が高い。例えば、電波監理審議会の議決には、総務大臣の決定を拘束する力が認められている(電波法94条2項)。この他、労働保険審査会、検察官適格審査会などがある。参与機関の議決を経ずに行われた行政庁の行為は無効となる。
監査機関他の行政機関が行った事務や会計の処理を検査し、その適否を監査する機関。例えば、国の会計検査院や地方公共団体の監査委員(地方自治法195条1項)がある。
執行機関行政目的を実現するために必要とされる実力行使を行う機関。例えば、警察官、海上保安官、消防職員等。