• 民法ー6.担保物権
  • 7.質権
  • 質権
  • Sec.1

1質権

堀川 寿和2021/12/03 15:02

質権

(1) 質権の内容

 質権とは、債権者が、債権の担保として債務者または第三者から受け取った物を、弁済を受けるまで留置し、弁済がないときは目的物を競売し、競売代金から他の債権者に優先して弁済を受けることができる担保物権である(342条)。

 例えば、BがAから金銭を借りようとする場合、自己所有の時計を担保としてAに引き渡し、Aは、貸した金銭を返してもらうまで時計を手もとに留めておき、もし期日に返済がないときは、これを競売したり、その所有権を取得したりすることによって、他の債権者に先立って貸金を回収する場合がこれにあたる。

 民法上、質権には、動産質(動産を目的物とするもの、352条以下)、不動産質(不動産を目的物とするもの、356条以下)、権利質(財産権を目的とするもの、362条以下)の3種類がある。


(2) 質権の特色

① 質権は約定担保物権であり、通常債権者(質権者)と債務者(質権設定者)の間で、債務者の所有物に設定するという契約をする(質権設定契約)。しかし、この場合の質権設定者は第三者であっても構わない。債権者は回収さえできればいいのであり、担保となる目的物が誰の所有物であっても関係ないからである。この場合に、目的物のみを提供してくれる第三者を『物上保証人』という。

② 質権設定契約は、『要物契約』である。要物契約とは、目的物の引渡しを以って契約が成立するものをいう。つまり、質権の設定は、債権者にその目的物を引き渡すことによって、その効力を生ずる(344条)。

③ 質権者は、質権の目的物を自己で占有しなければならず、質権設定者に引き続き目的物を占有させることはできない(345条)。

④質権は、譲り渡すことができない物をその目的とすることができない(343条)。つまり、譲渡性のある目的物にしか設定することができない。

⑤ 債権が弁済されないときに、質権目的物をそのまま質権者のものにしてしまう「流質契約」は禁止されている(349条)。これを許すと、債権者が債務者の足元を見て、貸し出す金額に不相応な高額の物を差し入れさせるおそれがあるからである。