- 民法ー6.担保物権
- 4.抵当権の効力
- 抵当権の効力
- Sec.1
1抵当権の効力
■抵当権の効力が及ぶ範囲
不動産について抵当権が設定された場合に、どの範囲の物に効力が及ぶのか、抵当権を実行して競売にかけるときにどこまで売却し、優先弁済を受けることができるのか、が問題となる。
(1)付加一体物
抵当権は、抵当地の上に存する建物を除き、その目的である不動産(抵当不動産)に付加して一体となっている物に及ぶ(370条本文)。
Point 建物に抵当権が設定された場合に、建物内に設置されていたテレビや冷蔵庫などの家電製品は、建物に付加して一体となっている物とはいえないので、抵当権の効力は及ばない。
(2)果実
果実とは、物から生まれる収益をいう。野菜・果物のようなものを天然果実といい、地代・家賃などのように物の使用の対価として受ける金銭を法定果実という。
抵当権は、その担保する債権について不履行があったときは、その後に生じた抵当不動産の果実(天然果実・法定果実)に及ぶ(371条)。ただし、金銭等の払い渡し前に差押えしなければならない。賃料等の払い渡しがなされ、抵当権設定者がこれを受領してしまうと、抵当権の効力はもはや及ばず、受領した金銭を差し押さえることもできない。
■抵当権の順位
(1)優先弁済の順位
抵当権は、同一の不動産に複数設定することができる。
同一の不動産について数個の抵当権が設定されたときは、その抵当権の順位は、登記の前後による(373条)。つまり、登記の順で優先弁済を受けることができる。
(2)順位昇進の原則
先順位の抵当権が弁済その他の原因で消滅すると、後順位の抵当権の順位は当然に昇進する。
事例D所有地に、A・B・Cの順で抵当権が設定され、これを登記している場合に、Dが、Aに、債務を弁済した。この場合、後順位抵当権者B・Cの順位が繰り上がる。
(3)抵当権の順位の変更
抵当権の順位は、各抵当権者の合意によって変更することができる(374条1項本文)。ただし、利害関係を有する者があるときは、その承諾を得なければならない(374条1項ただし書)。利害関係を有する者とは、たとえば、転抵当権者や被担保債権の差押債権者などである。
この順位の変更は、その登記(抵当権の順位の変更の登記)をしなければ、その効力を生じない(374条)。
Point1抵当権の順位の変更の登記は効力発生の要件であり、対抗要件ではない。
Point2抵当権の順位の変更をするにあたり、抵当権設定者の同意・承諾は不要である。
事例D所有地に、A・B・Cの順で抵当権が設定されこれを登記している場合において、AC間で順位の変更をするときは、A・B・Cの各抵当権者の合意によらなければならない。この順位変更は、その登記をすることによって効力を生じる。なお、抵当権設定者Dの承諾は不要である。