• 民法ー6.担保物権
  • 2.抵当権の内容
  • 抵当権の内容
  • Sec.1

1抵当権の内容

堀川 寿和2021/12/03 14:10

抵当権とは

 抵当権は、担保物権の1つであり、債務者または第三者(物上保証人)が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、債務が履行されない場合に競売に付し、その競売代金から他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受けることができる権利である(369条1項)。

抵当権は、当事者間の合意(抵当権設定契約)によって成立する。自己の所有する不動産に抵当権を設定した者を抵当権設定者といい、抵当権の設定を受けた債権者を抵当権者という。また抵当権により担保される債権を被担保債権という。


事例1 A銀行のBに対する貸金債権を担保するため、債務者であるBは自己の所有地にA銀行の抵当権を設定した。



事例2 A銀行のBに対する貸金債権を担保するため、第三者であるCは自己の所有地にA銀行の抵当権を設定した。この場合、債務者と抵当権設定者が別人となるが、Cのような、債務者以外の担保提供者を物上保証人という。




事例3 AのBに対する貸金債権を担保するため、B所有地にAの抵当権が設定されていたが、債務者Bが債務を弁済しないため、抵当権者Aは抵当権を実行し、B所有地を競売に付した。Bには、他に債権者C・Dがいたが、C・Dは何ら担保を有していない。

競売代金が3,000万円であった場合、ここからAは優先的に2,000万円の弁済を受けることができ、他の債権者C・Dは、残額である1,000万円からその債権金額に応じて弁済を受けることになる。




抵当不動産の使用・収益等

 抵当権が成立したあとも、担保として提供された不動産の占有は移転しないので、抵当権設定者は、いままでどおり抵当不動産を使用・収益することができる。そのほか、抵当権者の同意を得ることなく抵当不動産を売却など処分することができる。つまり、抵当権設定者は抵当権が設定された土地を賃貸して地代をとることもできるし、売ってしまうこともできる。


Point 抵当権設定者は抵当不動産を使用・収益することができるが、あくまでも通常の利用に限られ、これを逸脱するような行為(抵当不動産の担保価値を下げるような行為)までが認められるものではない。抵当権設定者がこのような侵害行為を行ったときは、抵当権者は、その排除を求めることができる。


抵当権の目的物


Point1地上権および永小作権も、抵当権の目的とすることができる(369条2項)。


Point2 同一の債権の担保として、数個の不動産に抵当権を設定することもできる(392条など)。たとえば、2,000万円の貸金債権を担保するために、債務者所有の建物とその敷地(土地)に抵当権を設定することができる。このような場合を、共同抵当という。