• 民法ー6.担保物権
  • 1.担保物権
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  • Sec.1

1担保物権

堀川 寿和2021/12/03 14:03

 担保物権とは、債権の履行の確保のために、債権者が債務者または第三者に属する財産の上に優先的に権利を行使することが法律上認められる物権をいう。つまり、債権の履行が滞った場合に、この担保物権を行使して債務者または第三者の財産を金銭に換えてしまい、その金銭の中から優先的に債権を回収することができるという物権である。このように、「金銭に換える」という部分に特に着目するため、「物の交換価値を把握する物権」という表現を使うことがある。

 民法上、留置権・先取特権・質権・抵当権の4種類が定められている。このうち留置権と先取特権は法律上当然に発生する担保物権であり、『法定担保物権』という。質権と抵当権は当事者の設定行為により発生するので、『約定担保物権』という。


担保物権の持つ性質

 担保物権には、他の物権にはない以下の4つの特質がある。


(1) 付従性

 担保物権は、被担保債権があって初めて存在し、被担保債権が消滅したら担保物権も消滅する。


(2) 随伴性

 被担保債権が他人に移転すれば、担保物権もそれに伴って移転する。


(3) 不可分性

 被担保債権の全ての弁済を受けるまでは、目的物全部に対して担保物権を行使できる。つまり、担保物権を分割して扱うことはできないということ。


(4) 物上代位性

 目的物が売却ないしは賃貸され、そのことによる収益が得られたときは、その収益に対しても担保物権の効力を及ぼすことができるという性質。担保物権の本質ともいえる性質だが、留置権にだけはこの性質がないので注意。


担保物権を有することによる優先的な扱い

 上記の4つの特質の他、担保物権を有する債権者は担保物権を有さない「一般債権者」よりも優先して債権の回収をはかることができる。担保物権の優先弁済的効力である。

 一般債権者同士は「債権者平等の原則」に服する。


【債権者平等の原則】

債権は、内容が互いに衝突するものが同一債務者に対して複数成立しうるという本質を持っている。このとき、複数の債権相互間には優劣関係がない。債務者の個々の財産、あるいは全財産を処分して債権の弁済に充てる場合には、債権成立の時の先後にかかわらず、債権額に応じて按分比例的に分配される。これを「債権者平等の原則」という。