- 民法ー3.物権(担保物権を除く)
- 4.所有権
- 所有権
- Sec.1
1所有権
■所有権とは
(1) 所有権の内容
所有権とは、所有者が、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益および処分をする権利いう(206条)。例えば、不動産の所有者は、その不動産を自分で利用することも、人に貸すことも、売却することも、壊すことも、もちろん自由なのである。
使用 | その物を用法に従って用いる(建物に居住する) |
収益 | その物から収入を得る(建物を賃貸し、賃料を受領する) |
処分 | その物を譲渡したり壊したりする(建物を他に売却する) |
Point 所有権は、法令の制限を受ける。所有権に制約を加える法律はきわめて多く、主なものとして、都市計画法、建築基準法、土地収用法、農地法、土地区画整理法、文化財保護法、消防法などがある。
(2) 土地所有権の範囲
土地の所有権は、法令の制限内において、その土地の上下に及ぶ(207条)。ただし、無限に土地の上下に及ぶわけではなく、利用可能な地上・地下にのみ及ぶ。
■所有権の取得
(1) 所有権取得の方法
所有権を取得する方法は、他人の所有権に基づくか否かにより、承継取得と原始取得に分けられる。
① 承継取得
承継取得とは、売買や相続などのように、他人の所有権に基づいて所有権を取得することをいう。承継取得は、前の所有者の所有権を前提としているので、前の所有者の所有権の制限や負担も承継する。
②原始取得
原始取得とは、他人の所有権に基づかないで所有権を取得することをいう。原始取得は、前の所有者の所有権とは無関係の新たな権利取得なので、前の所有者の所有権の制限や負担は承継しない。
Point「取得時効」や「即時取得」による所有権の取得は、原始取得である。
(2) 所有権特有の取得原因(原始取得)
民法は、所有権特有の取得原因に関する規定を設けている。これらは、すべて原始取得である。
① 無主物先占
所有者のない動産は、所有の意思をもって占有することによって、その所有権を取得する(239条1項)。
たとえば、海で魚を釣ったら、その魚の所有権を取得する。
Point所有者のない不動産は、国庫に帰属する(239条2項)。したがって、所有の意思をもって占有しても、占有者のものとはならない。
② 遺失物の拾得
遺失物は、遺失物法の規定による公告をした後3か月以内にその所有者が判明しないときは、これを拾得した者がその所有権を取得する(240条)。
参考 遺失物法では、拾得者から所有者不明の遺失物の提出を受けた警察署長は、
所有者を探すための公告をしなければならない旨を規定している(遺失物法7条)。
③ 埋蔵物の発見
埋蔵物は、遺失物法の規定による公告をした後6か月以内にその所有者が判明しないときは、これを発見した者がその所有権を取得する(241条本文)。ただし、他人の所有する物の中から発見された埋蔵物については、これを発見した者およびその他人が等しい割合でその所有権を取得する(241条ただし書)。
④ 付合
イ)不動産の付合
不動産の所有者は、その不動産に従として付合した物の所有権を取得する(242条本文)。ただし、権原によってその物を附属させた他人の権利を妨げない(242条ただし書)。
たとえば、何の権限もない者が他人の土地にリンゴの木を植えた場合、その木は土地所有者の所有となる。しかし、土地を賃借している者が、賃借している他人の土地にリンゴの木を受けた場合は、その木は土地賃借人の所有となる。
ロ)動産の付合
所有者を異にする数個の動産が、付合により、損傷しなければ分離することができなくなったときは、その合成物の所有権は、主たる動産の所有者に帰属する(243条前段)。分離するのに過分の費用を要するときも、これと同様の扱いとなる(243条後段)。
付合した動産について主従の区別をすることができないときは、各動産の所有者は、その付合の時における価格の割合に応じてその合成物を共有する(244条)。
⑤ 混和
動産の付合に関する規定は、所有者を異にする物が混和して識別することができなくなった場合について準用される(245条)。
⑥ 加工
他人の動産に工作を加えた者(以下「加工者」という)があるときは、その加工物の所有権は、材料の所有者に帰属する(246条1項本文)。ただし、工作によって生じた価格が材料の価格を著しく超えるときは、加工者がその加工物の所有権を取得する(246条1項ただし書)。
この場合において、加工者が材料の一部を供したときは、その価格に工作によって生じた価格を加えたものが他人の材料の価格を超えるときに限り、加工者がその加工物の所有権を取得する(246条2項)。
Point 付合、混和、加工によって生じた物の所有権の帰属(誰の所有となるのか)についての規定は任意規定とされているため、当事者の間で所有権の帰属について取り決めがあれば、その取り決めが優先する。