• 憲法―11.内閣
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  • 内閣の組織
  • Sec.1

1内閣の組織

堀川 寿和2021/12/01 11:03

内閣は、首長である内閣総理大臣及びその他の国務大臣で組織される合議体である(66条1項)。

内閣の構成員とその資格

 内閣総理大臣は国会議員の中から国会の議決により指名され(67条1項)、国会の指名に基づき、天皇が任命する(6条1項)。国務大臣は内閣総理大臣により任命されるが(68条1項)、その過半数は国会議員の中から選ばれなければならない(68条1項但書)。国務大臣の数は14人以内であるが、特別に必要のある場合は17人以内であれば増員することができる(内閣法2条2項)。

 内閣総理大臣およびその他の国務大臣は『文民』でなければならない(66条2項)。『文民』の意味については争いがあり、職業軍人の経歴がある者、自衛官の経歴がある者及び自衛官である者の取り扱いが問題になる。


内閣総理大臣の権限

 旧憲法下では、内閣総理大臣は『同輩中の主席』といわれる程度の地位にしかなかったのに対して、現行憲法では、内閣の首長(66条1項)としての地位にふさわしい権限を与えられている。


(1) 国務大臣の任命・罷免

 内閣総理大臣は、国務大臣を任命し、また、任意に罷免することができる(68条)。


(2) 内閣を代表する権能

 内閣総理大臣は、内閣を代表して、議案の国会への提出、一般国務及び外交関係についての国会への報告、行政各部の指揮監督を行う(72条)。また、内閣の法律執行責任と政令制定・執行責任を明らかにするために、内閣を代表して法律や政令への連署を行う(74条)。


(3) 国務大臣の訴追に対する同意権

 国務大臣は、その在任中、内閣総理大臣の同意がなければ訴追されない(75条)。しかし、これによって検察官が当該国務大臣を起訴する権限が消滅するわけではなく(75条但書)、当該国務大臣が国務大臣の職を退けば、内閣総理大臣の同意なくして起訴することができるようになる。


(4) 閣議の主宰

 内閣がその職権を行うのは閣議によるが(内閣法4条1項)、閣議を主宰するのは内閣総理大臣である(内閣法4条2項)。

 「内閣総理大臣は、内閣の重要政策に関する基本的な方針その他の案件を発議することができる」(内閣法4条2項)。「各国務大臣は、案件の如何を問わず、内閣総理大臣に提出して、閣議を求めることができる」(内閣法4条3項)。また、「内閣総理大臣は、閣議にかけて決定した方針に基づいて、行政各部を指揮監督する」(内閣法6条)。

 閣議の定足数や表決数等の議事に関する成文法は存在せず、閣議は慣例に従って行われている。慣例によると、閣議は非公開であり、閣議決定は全員一致による。


(5) 内閣総理大臣臨時代理指名権

 「内閣総理大臣に事故のあるとき、または内閣総理大臣が欠けたときは、そのあらかじめ指定する国務大臣が、臨時に、内閣総理大臣の職務を行う」(内閣法9条)。


(6) 各省大臣の任命権

 各省大臣は、国務大臣の中から、内閣総理大臣によって任命される(国家行政組織法5条2項)。


(7) 議院への出席

 「内閣総理大臣その他国務大臣は、両議員の一に議席を有すると否とにかかわらず、何時でも議案について発言するため議院に出席することができる。又、答弁又は説明のため出席を求められたときは、出席しなければならない」(63条)。