• 憲法―10.国会
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1国会の構成

堀川 寿和2021/12/01 10:31

 国会は衆議院と参議院とで構成される(二院制または両院制)(42条)。二院制がとられる場合、民選議員よりなる議院に対して、他の議院は、イギリスの上院(貴族院)のように貴族を代表するもの、アメリカの上院のように連邦を構成する支分国(州)を代表するものもあるが、わが国の参議院は、衆議院とともに民選の議員よりなることから、①民意を正しく反映させ多数党の横暴を抑制するという議事の慎重化・合理化機能や、②衆議院が解散その他の事由により活動できなくなったときに備えるという補充的機能を果たす。

各議院の構成

衆議院、参議院はともに、全国民を代表する選挙された議員によって組織されるが(43条)、議院ごとに議員の任期や選出方法は異なっている。衆議院議員の任期は4年であるが、衆議院が解散された場合、任期満了前でも衆議院議員の身分は失われる(45条)。他方、参議院議員の任期は6年であり、3年ごとに半数が改選される(46条)。また、両議院の議員の兼職は禁止されている(48条)。




 両議院の議員の定数は法律で定めることとしている(43条2項) のを受けて、公職選挙法では、衆議院議員の定数を465人とし、参議院議員の定数を242人としている(公職選挙法4条1項及び2項)。衆議院議員、参議院議員それぞれの選出方法および選挙権や被選挙権の要件については、前章の「選挙制度」を参照されたい。



議員の地位

(1) 議員の地位の得喪

① 議員の身分の取得

 議員の身分は、選挙の当選者に対して当選の告知がなされ、その住所・氏名等が公示されて、当選の効力が発生した日に取得される(公職選挙法102条)。

② 議員の身分の喪失

 議員がその身分を失うのは、次の各場合である。

(a) 任期が満了したとき

(b) 被選挙資格を失ったとき(国会法109条)

(c) 他の議院の議員となったとき(48条、国会法108条)

(d) 法律上兼職できない国または地方公共団体の公務員となったとき(国会法39条)

(e) 辞職したとき(国会法107条 「各議院は、その議員の辞職を許可することができる」)

(f) 懲罰として除名されたとき(58条2項、国会法122条4号)

cf. 両議院は、各々院内の秩序をみだした議員を懲罰することができる(58条2 項前段)。ただし、議員を除名するには、出席議員の3分の2以上の多数による議決を必要とする(同条同項但書)。懲罰には、このほか、公開議場における戒告、公開議場における陳謝や一定期間の登院停止がある(国会法122条1~3号)。

(g) 訴訟において選挙無効または当選無効の判決が確定したとき(公職選挙法204条以下)

(h) 資格争訟の裁判において資格のないことが確定したとき(55条)

cf. 「両議院は、各々その議員の資格に関する争訟を裁判する。但し、議員の議席を失はせるには、出席議員の3分の2以上の多数による議決を必要とする」

(i) 衆議院議員については、衆議院が解散されたとき(45、54条)


(2) 議員の特権

 議員は全国民の代表としてその職務を遂行できるよう、次の特権を与えられている。

① 歳費受領権(49条)

 「両議院の議員は、法律の定めるところにより、国庫から相当額の歳費を受ける」(49条)。

② 不逮捕特権(50条)

 両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、議院の要求があれば、会期中釈放されなければならない。政治的動機に基づく不当な逮捕などから議員の身体の自由を保障し、議員の職務の遂行が行政権力などによって妨げられないようにするためである。参議院の緊急集会が開かれている期間は、国会の会期ではないが(後述参照)、緊急集会中の参議院は国会の権能を代行することから、この期間中の参議院議員についても不逮捕特権が認められている(国会法100条)。なお、「法律の定める場合」とは、院外における現行犯罪の場合(国会法33条)、逮捕について議員の所属する議院の許諾がある場合(国会法34条)である。

③ 免責特権

 両議院の議員は、議院で行った演説、討論または表決について、院外で責任を問われない(51条)。『責任』とは、議院で行った演説等が他人の名誉を侵害する内容を含んでいたため不法行為が成立し損害賠償責任を負う場合や名誉毀損罪が成立する場合など、そうしたことを院外で行ったとすれば一般に負わされる民事法上の責任、刑事法上の責任などのことであり、これを免れさせることによって、議員が議院でその職務を遂行するに当たり自由に発言や表決を行うことができるようにしたものである。

 もっとも、免責特権が与えられているからといって、その他の責任を免れることができるわけではない。院内の秩序をみだした場合に議院から懲罰を受けることもあろうし(院内における責任=58条2項)、また、政党その他の所属団体の指示に反する行動をとった場合にその所属団体から除名その他の不利益処分を受けたり、選挙公約に反する行動をとった場合に選挙区の有権者から責任を問われたりすることもあろう(院外における政治的責任)。なお、国務大臣である国会議員が、国務大臣の立場として行った演説、討論等については、免責特権は及ばないとするのが通説である。


(3) 議員の権能

① 発議権

 議員は、法律案をはじめとする議案の発議権を有する(国会法56条1項)。ただし、発議には、衆議院で議員20人以上、参議院で議員10人以上の賛成を要し、特に、予算を伴う法律案の発議には、衆議院で議員50人以上、参議院で議員20人以上の賛成を要する(同条同項)。議員が単独で行使することのできる権能ではない。

② 質問権

 現在の議題と関係なく、内閣に対して質問を行うことができる権能である。

③ 質疑権

 現在、議題となっている議案について、委員長、少数意見の報告者、発議者または議案の提出者等に対して疑義をただす権能である(質問権との違いに注意せよ)。

④ 討論権

⑤ 表決権(51条、57条3項参照)