• 憲法―10.国会
  • 1.国会の地位
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1国会の地位

堀川 寿和2021/12/01 10:28


 日本国憲法は、立法権を国会に(41条)、行政権を内閣に(65条)、司法権を裁判所に(76条)、それぞれもたせている。また、国会と内閣との関係では議院内閣制を採用し(66条3項等)、裁判所に違憲立法審査権を与えて(81条)、国家機関を相互に抑制と均衡の関係に立たせている。その限りでは、国会は国家権力の一端を担う機関にすぎないようにみえる。

『国権の最高機関』

 そこで考えなければならないのが、41条にいう『国権の最高機関』がどのような意味をもっているのかという問題である。『最高機関』の意味については、統括機関説と政治的美称説との争いがある。


(1) 統括機関説

 国会は「国家の活動を創設し、保持し、又終局的に決定する機関」という表現に代表される説である。これによれば、内閣や裁判所は、国会の下位にあって、国会の意思に従わなければならないことになる。


(2) 政治的美称説(通説)

 『最高機関』とは、国会が国民を代表していることから、国政の中心的地位を占める重要機関であることを強調する政治的美称であって、法的意味をもたないとする説である。


『唯一の立法機関』

 また、国会は『国の唯一の立法機関』でもある(41条)。国会が立法権を独占するという意味であるが、国会中心立法の原則と国会単独立法の原則を内容とする。


(1) 国会中心立法の原則

 憲法に特別の定めがある場合を除き、国会以外の国家機関によって実質的意味の法律(国民の権利義務に直接関係のある一般的法規範、すなわち、法規)を定めることは許されないという原則である。したがって、行政機関は執行命令(法律を執行するための命令)と委任命令(法律の委任に基づく命令)を定めることができるのみである(73条6号参照)。旧憲法において緊急勅令や独立命令を定めることができたのとは異なり、国会の議決を経ることなく、法規を定めることは許されない。



 国会中心立法の原則の例外として憲法が定めるのは、各議院の規則制定権 (58条2項)、最高裁判所の規則制定権(77条1項)である。地方公共団体の条例制定権の規定(94条)も『特別の定め』に当たるか否かについては争いがある。


(2) 国会単独立法の原則

 国会による立法は、国会の議決のみで成立し、国会以外の機関の参与を必要としないという原則である。旧憲法において、立法権が天皇と帝国議会によって行使され(同5条)、しかも、天皇に法律の裁可権があった(同6条)のと対照的である。

 ※ 地方自治特別法の住民投票は、国会単独立法の原則の例外である。


国民の代表機関としての国会

 「両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する」(43条1項)。ここで、『全国民を代表する選挙された議員』とは、国会議員が国民のうち一部の利益を代表するものではないことを意味する。現在、国会議員は、衆議院では小選挙区と比例代表、参議院では選挙区と比例代表から選出される。このうち、特に、衆議院小選挙区と参議院選挙区から選出される国会議員については、当選するには各人が各選挙区の有権者に支持されることを要するが、いったん選出されると、各国会議員はそれぞれの選挙区の代表ではなくなるということである。したがって、国会議員は、それぞれの選挙区の有権者の指示どおりに行動する必要はない。

 また、国会議員は、政党その他の団体に所属しているとしても、所属団体の指示どおりに行動する必要もない。所属団体の指示どおりに行動しない国会議員が所属団体から除名されることがあるとしても(例えば、ある議案の議決に際して党議拘束をかけているのに、これに反する行動に出た結果、党規にしたがって除名されるとしても)、国会議員の地位を失うわけではない。