- 憲法―9.参政権
- 2.選挙権
- 選挙権
- Sec.1
1選挙権
選挙とは、有権者の集合体(有権者団)が公務員という国家機関を選定する集合的な行為であり、選挙権とは、選挙人として、選挙に参加することのできる資格又は地位を意味する。選挙権の法的性格については争いがある。
■選挙権
選挙とは、有権者の集合体(有権者団)が公務員という国家機関を選定する集合的な行為であり、選挙権とは、選挙人として、選挙に参加することのできる資格又は地位を意味する。選挙権の法的性格については争いがある。
(1) 権利説
選挙権は、国政への参加を国民に保障する権利である。
この説によると、選挙権は権利の内在的制約のみに服する。
[批判]
公務員という国家の機関を選定する権利であり、純粋な個人の権利とは異なった側面を持っている。
(2) 公務説
選挙権は、選挙人としての地位に基づいて公務員の選挙に関与する『公務』であり、個人の権利ではない。
この説は、公営選挙観(選挙の公正を重視し、各候補者は選挙の公正を確保するために定められたルールに従って運動すべきである)に結びつきやすく、立法裁量を広汎に認めるものである。
[批判]
1. 広汎な立法裁量を容認するので、選挙権に対する不当な制約を認めかねない。
2. 国民主権原理の基では、選挙権は主権者である国民の基本的権利として位置づけられねばならない。
(3) 二元説(通説)
選挙権には、参政の権利とともに、公務の執行という二重の性格が認められる。
この説によると、選挙権に対しては、その公務としての性格から、選挙の公正確保のための必要最小限度の制約は許されることになる。公職選挙法は、成年被後見人、一定の選挙犯罪者などについて選挙権を有しないと定めているが(公選法11条、252条)、これらは選挙権の公務としての特殊な性格に基づく最小限度の制限であるとされる。
[批判]
選挙権の公務性から権利の制限を容易に認めることになる。
cf. 判例は、選挙権を権利として位置づけるが、権利説と二元説のいずれの立場に立つのかは明らかでない。
判例 | 選挙犯罪者の選挙権等停止事件(最大判30.2.9) |
公職選挙法上の買収罪により処罰されたため、同法252条により被選挙権・選挙権の停止を受けることとなった者が、同条1項及び3項は、14条、44条に違反し、国民の参政権を不当に奪うものであると主張した事件。 |
《争点》 | 公職選挙法252条1項及び3項は、14条、44条に違反するか? |
《判旨》 | 最高裁は、公選法252条所定の選挙犯罪者は、現に選挙の公正を害し選挙に関与せしめるに不適当なものと認めるべきであるから、これを一定の期間公職の選挙に関与することから排除するのは相当であって、それは条理に反する差別待遇でも不当に参政権を奪うものでもないとした。 |