- 憲法―1.総論
- 4.国民主権
- 4.国民主権
- Sec.1
14.国民主権
■国民主権の概念と意味
(1) 主権の概念(3つの意義)
① 国家権力そのもの(立法・行政・司法を包括した国家の統治権) ex.41条「国権」
② 対内的には最高、対外的には独立という国家の最高独立性 ex.前文3項「自国の主権を維持」
③ 国の政治の在り方を最終的に決定する権威 ex.前文1項「主権が国民に存する」
(2) 国民主権の意味
前文・1条で「主権が国民に存する」という場合の『主権』とは、国の政治の在り方を最終的に決定する権威の意味である。これは、自分の力で政治を動かしていくという『権力性』と、権力の行使を正当化する根拠という『正当性』という二つの側面を表している。
『権力性』を重視して、主権の意味を理解しようとすれば、主権者たる「国民」とは、実際に国政に関して意思決定をすることのできる『有権者』を意味することになり、『直接民主制』に結びつきやすい。
逆に、『正当性』を重視して、主権の意味を理解しようとすれば、主権者たる「国民」とは、有権者というような活動能力を持つ具体的な個々人の集合体ではなく、一つの統一体としての「全国民」を意味することになり、『間接民主制(代表民主制)』に結びつきやすい。
通説は、国民主権の意味について、正当性の側面から理解することを基本としつつ、権力性と正当性が不可分に結合したものであると解している。
この主権の行使方法は、「国民によって正当に選挙された代表者を通じて行使する」ことが基本である(前文1段、43条)。
これを間接民主制、または代表民主制という。
ただし、例外的に直接民主制的な制度が3つ規定されている。
1. 最高裁判所裁判官の国民審査(79条2項)
2. 地方特別法の住民投票(95条) 3. 憲法改正の国民投票(96条) |
■天皇制との関係
国民主権の原理との関係で問題となるのは天皇制である。旧憲法下では、天皇は国家元首であり、統治権の総攬者であり、主権者でもあったが、日本国憲法においては、天皇は「日本国の象徴」であり、「日本国民統合の象徴」である(1条)。
『象徴』とは、抽象的・無形的・非感覚的なものを具体的・有形的・感覚的なものによって具象化する作用ないしはその媒介物をいう。天皇の象徴的機能は旧憲法下でも認められていたが、日本国憲法で象徴天皇制を採用した趣旨は、天皇が、旧憲法下における天皇のような統治権の総覧者ではなく、国の象徴たる役割以外の役割を持たないことを強調することにある。
皇位継承に関し、憲法自身は世襲に関する具体的なルールを定めず、「国会の議決した皇室典範」に委任している。皇室典範も普通の法律と同様に、国会により改正することができるため、現在は認められていない女帝制度や生前退位制度も導入可能と考えられている。
結局、天皇の権能は「国事に関する行為」に限定され、国政に関する権能を有しない(4条1項)。国民主権の原理と天皇制が併存しうる所以である。
その他、天皇に関してはChapter16を参照。