• 法令上の制限税その他ー3.国土利用計画法
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1国土利用計画法の概要

堀川 寿和2021/11/25 14:22

「国土利用計画法」からは、毎年1問出題される。この法律は、地価の不当な上昇を抑制するために、土地取引を規制している。その内容には「許可制」と「届出制」があり、さらに届出制には「事前届出制」と「事後届出制」があるが、圧倒的に重要なのは「事後届出制」である。出題の9割以上は「事後届出」の要否およびその手続となっているので、まずはここに絞って完璧にマスターすること。国土利用計画法での失点は合否に直結すると認識し、確実に得点できるようになるまで問題演習あるのみである。

土地取引の規制

 国土利用計画法は、不当な地価上昇を抑制するために、「事後届出制」、「事前届出制」および「許可制」を用意している。


(1) 事後届出制

 原則は、「事後届出制」である。国土利用計画法は、一定規模以上の土地取引を行った場合に、都道府県知事への事後届出を義務付けている。


(2) 事前届出制

 地価が上昇しているような区域があると、そこは「注視区域」または「監視区域」に指定される。これらの区域が指定されると、その区域内は「事前届出制」となり、一定規模以上の土地取引を行う前に、都道県知事に事前届出をすることが義務付けられる。


(3) 許可制

 投機的取引が集中して行われ、地価が急激に上昇しているような区域があると、そこは「規制区域」に指定される。この区域が指定されると、その区域内は「許可制」となり、土地取引を行うには、都道府県知事の許可が必要になる。


【届出制と許可制(まとめ)】

区域の指定なし事後届出制
注視区域事前届出制
監視区域事前届出制
規制区域許可制


注視区域・監視区域・規制区域の指定

(1) 注視区域・監視区域・規制区域の指定

 地価が上昇している区域は、都道府県知事によって、注視区域、監視区域または規制区域に指定される。地価が急激に上昇する可能性は、注視区域、監視区域、規制区域の順に、高くなっていく。


① 注視区域の指定

 都道府県知事は、当該都道府県の区域のうち、次の要件に該当する区域を、5年以内の期間を定めて、注視区域として指定することができる。

地価が一定の期間内に社会的経済的事情の変動に照らして相当な程度を超えて上昇し、または上昇するおそれがあるものとして国土交通大臣が定める基準に該当し、これによって適正かつ合理的な土地利用の確保に支障を生ずるおそれがあると認められる区域


② 監視区域の指定

 都道府県知事は、当該都道府県の区域のうち、次の要件に該当する区域を、5年以内の期間を定めて、監視区域として指定することができる。

地価が急激に上昇し、または上昇するおそれがあり、これによって適正かつ合理的な土地利用の確保が困難となるおそれがあると認められる区域


③ 規制区域の指定

 都道府県知事は、当該都道府県の区域のうち、次の要件に該当する区域を、5年以内の期間を定めて、規制区域として指定するものとする。

1. 都市計画区域にあっては、その全部または一部の区域で土地の投機的取引が相当範囲にわたり集中して行われ、または行われるおそれがあり、および地価が急激に上昇し、または上昇するおそれがあると認められるもの
2. 都市計画区域以外の区域にあっては、①の事態が生ずると認められる場合において、その事態を緊急に除去しなければ適正かつ合理的な土地利用の確保が著しく困難となると認められる区域


(2) 指定の手続

① 注視区域・監視区域の指定の手続

土地利用審査会・関係市町村の意見を聞く
   ↓
指定の公告(指定の効力発生)

 都道府県知事は、注視区域または監視区域を指定しようとする場合には、あらかじめ、土地利用審査会および関係市町村長の意見を聴かなければならない。

 都道府県知事は、注視区域または監視区域を指定する場合には、その旨ならびにその区域および期間を公告しなければならない。注視区域または監視区域の指定は、この公告によってその効力を生ずる。


② 規制区域指定の手続

指定の公告(指定の効力発生)
   ↓(2週間以内)
土地利用審査会の確認の請求
   ↓(2週間以内)
確認の結果の通知
 ‐‐‐‐‐‐
(確認を受けられなかったとき)
   ↓
確認を受けられなかった旨の公告(指定の時にさかのぼって指定の効力消滅)

 都道府県知事は、規制区域を指定する場合は、その旨ならびにその区域および期間を公告しなければならない。規制区域の指定は、都道府県知事の公告によって、その効力を生ずる。

 都道府県知事は、規制区域指定の公告をしたときは、その公告の日から起算して2週間以内に、関係市町村長の意見を付して規制区域の指定が相当であることについて土地利用審査会の確認を求めなければならない。

 土地利用審査会は、確認を求められたときは、2週間以内に、規制区域の指定が相当であるかどうかの決定をし、都道府県知事にその旨を通知しなければならない。

 都道府県知事は、規制区域の指定について土地利用審査会の確認を受けられなかったときは、その旨を公告しなければならない。この公告があったときは、規制区域の指定は、その指定の時にさかのぼって、その効力を失う。


土地取引の規制の対象となる行為(「土地売買等の契約」)

 届出制や許可制といった土地取引の規制の対象となる行為は、「土地売買等の契約」である。

「土地売買等の契約」とは、次の要件を満たすものである。

① 「土地に関する権利」の移転または設定(移転等)であること
② 対価を得て行われること
③ 契約(予約を含む)によること


(1) 土地に関する権利

 「土地売買等の契約」は、「土地に関する権利」の移転等でなければならない。

 「土地に関する権利」とは、土地に関する所有権、地上権、賃借権またはこれらの権利の取得を目的とする権利をいう。これらの権利の取得を目的とする権利とは、たとえば、予約完結権などである。これらの権利の移転等が「土地売買等の契約」に該当する。

 抵当権、地役権、永小作権などの権利は「土地に関する権利」には含まれない。したがって、たとえば、抵当権設定契約は「土地売買等の契約」には該当しないので、届出または許可(届出等)は不要である。


(2) 対価の授受

 「土地売買等の契約」は、売買などのように、対価を得て行われるものでなければならない。

対価は、金銭に限らない。したがって、交換も対価の授受があるものとされ、「土地売買等の契約」に該当する。

 それに対して、贈与などによる権利の移転等は対価の授受を伴わないため、「土地売買等の契約」には該当しない。

 地上権または賃借権の設定の対価とは、権利の設定にともない支払われる権利金などの一時金である。したがって、権利金の授受がある場合は、権利設定の対価があるため、「土地売買等の契約」に該当する。

 それに対して、単に地代や賃料が支払われるだけの場合は、権利設定の対価がないため、「土地売買等の契約」には該当せず、届出等は不要である。


(3) 契約(予約を含む)

 「土地売買等の契約」は、契約によるものでなければならない。

契約には予約も含み、また、停止条件付や解除条件付の契約も含む。

 それに対して、契約の解除や予約完結権の行使などによる権利の移転等は、契約によるものではないので「土地売買等の契約」には該当せず、届出等は不要である。

 また、相続や時効取得などによる権利の移転等も、契約によるものではないので「土地売買等の契約」には該当せず、届出等は不要である。


【土地売買等の契約(まとめ)】

届出等が必要な場合届出等が不要な場合
① 売買契約(予約を含む)
② 交換契約
③ 予約完結権の譲渡
④ 共有持分の譲渡
⑤ 地上権・賃借権設定契約(権利設定の対価があるもの)
① 抵当権設定契約
② 贈与
③ 地上権・賃借権設定契約(権利設定の対価がないもの)
④ 相続・遺産分割・遺贈・合併
⑤ 解除
⑥ 時効取得
⑦ 予約完結権の行使


Point1 地上権・賃借権の設定契約は、権利設定の対価がある(権利金等の授受がある)ときは届出等が必要であるが、権利設定の対価がない(単に地代・賃料の授受があるのみ)ときは届出等が不要である。


Point2 予約完結権の譲渡は届出が必要だが、予約完結権の行使は届出が不要である。