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■砂防えん堤
砂防えん堤は、渓流から流出する砂礫の捕捉や調節などを目的とした構造物であり、もっとも代表的な砂防施設である。
(1) 砂防えん堤の各部の名称
砂防えん堤の各部の名称は、次のとおり。
本えん堤 |
水通し |
水通しは、えん堤上流からの流水の越流部として本えん堤に設置され、その断面は一般に逆台形であり、本えん堤を越流する流量に対して十分な大きさとする。 |
袖 |
袖は、その天端から洪水を越流させないことを前提とした構造物であり、両岸に向かって上り勾配とし、土石などの流下による衝撃に対し強固な構造とする。 |
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水抜き |
水抜きは、本えん堤施工中の流水の切替えや堆砂後の浸透水を抜いて本えん堤にかかる水圧を軽減するために、必要に応じて設けられる。 |
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前庭保護工 |
前庭保護工は、本えん堤を越流した落下水による前庭部の洗掘を防止するために設けられる構造物であり、本えん堤の下流側に設置される。 |
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副えん堤 |
副えん堤は、本えん堤の基礎地盤の洗掘及び下流河床低下の防止のために設ける。 |
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側壁護岸 |
側壁護岸は、水通しからの落下水が左右の渓岸を侵食することを防ぐための構造物である。 |
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水たたき |
水たたきは、本えん堤を越流した落下水の衝撃を緩和し、洗掘を防止するために、前庭部に設けられるコンクリート構造物である。 |
Point1 水通しの断面は逆台形である。矩形断面〔=長方形断面〕ではない。
Point2 名称が似ているため「水通し」と「水抜き」を混同しないように注意。
(2) 砂防えん堤の一般的な施工順序
砂防えん堤を砂礫の堆積層上に施工する場合の一般的な順序は、①→②→③・④→⑤の順となる。
Point 砂防えん堤の施工は、一般に最初に本えん堤の基礎部を施工し、次に副えん堤を施工する。
(3) 砂防えん堤の施工上の留意点
砂防えん堤を施工するにあたっての留意点は、次のとおりである。
① 砂防えん堤は、強固な岩盤に施工することが望ましい。 ② 本えん堤の堤体基礎の根入れは、岩盤では1m以上、砂礫層では2m以上行うのが通常である。 ③ 本えん堤下流の法勾配は、越流土砂による損傷を避けるため一般に1:0.2程度とする。 |
Point 砂防えん堤の堤体基礎の根入れは、岩盤の場合であっても行わなければならない。
■地すべり防止工ー1
(1) 抑制工と抑止工
地すべり防止工は、抑制工と抑止工に大別できる。
地すべり防止工では、抑制工、抑止工の順に実施し、抑止工だけの施工を避けるのが一般的である。
① 抑制工
抑制工は、地すべりの地形、土質、地下水の状態などの地すべりの誘因となる自然的条件を変化させることによって地すべり運動を停止又は緩和させるものである。
抑制工としては、水路工、横ボーリング工、集水井工、排水トンネル工、排土工、押え盛土工などがある。
② 抑止工
抑止工は、すべり面を貫いた杭等の構造物を設けることにより地すべり推力に対抗し、地すべり運動の全部又は一部を停止させるものである。
抑止工としては、杭工、シャフト工などがある。
[地すべりの名称]
引用:池谷浩ほか『現場技術者のための 砂防・地すべり・がけ崩れ・雪崩防止工事ポケットブック』178頁(山海堂、2001)
(2) 抑制工
① 水路工
水路工は、地表面の水を水路に集め、速やかに地すべり地域外に排除する工法である。
Point 水路工は、地表水が地すべり地域内に浸透しないよう、地表水を地すべり地域外に排除することを目的としている。
② 横ボーリング工
横ボーリング工は、帯水層をねらってボーリングを行い、地下水を排除する工法である。
横ボーリング工の掘進勾配は、集水した地下水が自然流下するように、地すべり斜面に向かって水平よりやや上向き〔概ね仰角5~10度〕に施工する。
③ 集水井工
集水井工は、地下水が集水できる堅固な地盤に、井筒を設けて集水孔などで地下水を集水し、排水は、原則として、排水ボーリングによって自然排水を行う。
Point 集水井工の排水は、原則として自然配水によって行う。ポンプによる強制配水は行わない。
④ 排水トンネル工
排水トンネル工は、地すべり規模が大きい場合に用いられる工法であり、原則として安定した地盤内にトンネルを設け、ここから帯水層に向けてボーリングを行い、トンネルを使って排水する工法である。
Point 排水トンネル工のトンネルは、原則として安定した地盤に設置しなければならない。地すべり土塊内に設けることはできない。
⑤ 排土工
排土工は、地すべり頭部に存在する不安定な土塊を排除し、斜面の土塊の滑動力を減少させる工法である。中小規模の地すべり防止工によく用いられる。
Point 排土工は地すべり「頭部」の土塊を排除する。脚部〔=末端域〕に存在する土塊を排除するのではない。
引用:池谷浩ほか『現場技術者のための 砂防・地すべり・がけ崩れ・雪崩防止工事ポケットブック』232頁(山海堂、2001)
⑥ 押さえ盛土工
押え盛土工は、地すべり土塊の下部に盛土を行うことにより、地すべりの滑動力に対する抵抗力を増加させる工法である。