• 主な医薬品とその作用
  • 8.内服アレルギー用薬(鼻炎用内服薬を含む。)
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1内服アレルギー用薬(鼻炎用内服薬を含む。)

U222022/03/24 15:24

内服アレルギー用薬(鼻炎用内服薬を含む。)ー1

(点鼻薬、点眼薬はそれぞれを参照)

 

1)アレルギーの症状、薬が症状を抑える仕組み

アレルギー(過敏反応)を生じる仕組み等に関する出題については、第1章-1)(副作用)を参照して作成のこと。どのような物質がアレルゲン(抗原)となってアレルギーを生じるかは、人によって異なり、複数の物質がアレルゲンとなることもある。主なものとしては、小麦、卵、乳、そば、落花生、えび、かに等の食品、ハウスダスト(室内塵(じん))、家庭用品が含有する化学物質や金属等が知られており、スギやヒノキ、ブタクサ等の花粉のように季節性のものもある。

アレルゲンが皮膚や粘膜から体内に入り込むと、その物質を特異的に認識した免疫グロブリン(抗体)によって肥満細胞が刺激され、細胞間の刺激の伝達を担う生理活性物質であるヒスタミンやプロスタグランジン等の物質が遊離する。肥満細胞から遊離したヒスタミンは、周囲の器官や組織の表面に分布する特定のタンパク質(受容体)と反応することで、血管拡張(血管の容積が拡張する)、血管透過性亢進(血漿タンパク質が組織中に漏出する)等の作用を示す。

なお、蕁麻疹(じんましん)についてはアレルゲンとの接触以外に、皮膚への物理的な刺激等によってヒスタミンが肥満細胞から遊離して生じるもの(寒冷蕁麻疹、日光蕁麻疹、心因性蕁麻疹など)も知られている。また、食品(特に、サバなどの生魚)が傷むとヒスタミンに類似した物質(ヒスタミン様物質)が生成することがあり、そうした食品を摂取することによって生じる蕁麻疹もある。

 

急性鼻炎、アレルギー性鼻炎及び副鼻腔炎に関する出題については、(鼻に用いる薬)を参照して作成のこと。

 

内服アレルギー用薬は、蕁麻疹や湿疹、かぶれ及びそれらに伴う皮膚の痒み又は鼻炎に用いられる内服薬の総称で、ヒスタミンの働きを抑える作用を示す成分(抗ヒスタミン成分)を主体として配合されている。また、抗ヒスタミン成分に、急性鼻炎、アレルギー性鼻炎又は副鼻腔炎による諸症状の緩和を目的として、鼻粘膜の充血や腫れを和らげる成分(アドレナリン作動成分)や鼻汁分泌やくしゃみを抑える成分(抗コリン成分)等を組み合わせて配合されたものを鼻炎用内服薬という。

内服アレルギー用薬(鼻炎用内服薬を含む。)ー2

2)代表的な配合成分等、主な副作用

a)抗ヒスタミン成分

肥満細胞から遊離したヒスタミンが受容体と反応するのを妨げることにより、ヒスタミンの働きを抑える作用を示す成分(抗ヒスタミン成分)として、クロルフェニラミンマレイン酸塩、カルビノキサミンマレイン酸塩、クレマスチンフマル酸塩、ジフェンヒドラミン塩酸塩、ジフェニルピラリン塩酸塩、ジフェニルピラリンテオクル酸塩、トリプロリジン塩酸塩、メキタジン、アゼラスチン、エメダスチン、ケトチフェン等が用いられる。

メキタジンについては、まれに重篤な副作用としてショック(アナフィラキシー)、肝機能障害、血小板減少を生じることがある。

内服薬として摂取された抗ヒスタミン成分は、吸収されて循環血流に入り全身的に作用する。例えば、ヒスタミンは、脳の下部にある睡眠・覚醒に大きく関与する部位において覚醒の維持・調節を行う働きを担っているが、抗ヒスタミン成分によりヒスタミンの働きが抑えられると眠気が促される(-3(眠気を促す薬)参照。)。重大な事故につながるおそれがあるため、抗ヒスタミン成分が配合された内服薬を服用した後は、乗物又は機械類の運転操作を避けることとされている。

ジフェンヒドラミン塩酸塩、ジフェンヒドラミンサリチル酸塩等のジフェンヒドラミンを含む成分については、吸収されたジフェンヒドラミンの一部が乳汁に移行して乳児に昏睡を生じるおそれがあるため、母乳を与える女性は使用を避けるか、使用する場合には授乳を避ける必要がある。

抗ヒスタミン成分は、ヒスタミンの働きを抑える作用以外に抗コリン作用も示すため、排尿困難や口渇、便秘等の副作用が現れることがある。排尿困難の症状がある人、緑内障の診断を受けた人では、症状の悪化を招くおそれがあり、使用する前にその適否につき、治療を行っている医師又は処方薬の調剤を行った薬剤師に相談がなされるべきである。

b)抗炎症成分

皮膚や鼻粘膜の炎症を和らげることを目的として、グリチルリチン酸二カリウム、グリチルリチン酸、グリチルリチン酸モノアンモニウム、ブロメライン、トラネキサム酸等が配合されている場合がある。生薬成分として、グリチルリチン酸を含むカンゾウが用いられることもある。

これらの成分の働き、副作用等に関する出題については、-1(かぜ薬)又は-1(咳止め・痰を出しやすくする薬)を参照して問題作成のこと。

c)アドレナリン作動成分

 

鼻炎用内服薬では、交感神経系を刺激して鼻粘膜の血管を収縮させることによって鼻粘膜の充血や腫れを和らげることを目的として、プソイドエフェドリン塩酸塩、フェニレフリン塩酸塩、メチルエフェドリン塩酸塩等のアドレナリン作動成分が配合されている場合がある。

メチルエフェドリン塩酸塩については、血管収縮作用により痒みを鎮める効果を期待して、アレルギー用薬でも用いられることがある。

内服薬として摂取されたアドレナリン作動成分は、吸収されて循環血流に入り全身的に作用する。プソイドエフェドリン塩酸塩以外のアドレナリン作動成分における留意点等に関する出題については、-1(咳止め・痰を出しやすくする薬)を参照して作成のこと。

プソイドエフェドリン塩酸塩については、他のアドレナリン作動成分に比べて中枢神経系に対する作用が強く、副作用として不眠や神経過敏が現れることがある。また、交感神経系に対する刺激作用によって心臓血管系や肝臓でのエネルギー代謝等への影響も生じやすく、心臓病、高血圧、糖尿病又は甲状腺機能障害の診断を受けた人、前立腺肥大による排尿困難の症状がある人では、症状を悪化させるおそれがあり、使用を避ける必要がある。自律神経系を介した副作用として、めまいや頭痛、排尿困難が現れることがある。

パーキンソン病の治療のため医療機関でセレギリン塩酸塩等のモノアミン酸化酵素阻害剤が処方されて治療を受けている人が、プソイドエフェドリン塩酸塩が配合された鼻炎用内服薬を使用した場合、体内でのプソイドエフェドリンの代謝が妨げられて、副作用が現れやすくなるおそれが高く、使用を避ける必要がある。一般用医薬品の販売に従事する専門家においては、プソイドエフェドリン塩酸塩が配合された鼻炎用内服薬の購入者等に対して、その医薬品を使用しようとする人がモノアミン酸化酵素阻害剤で治療を受けている可能性がある場合には、治療を行っている医師又は処方薬の調剤を行った薬剤師に事前に確認するよう説明がなされることが重要である。

なお、プソイドエフェドリン塩酸塩、メチルエフェドリン塩酸塩については、依存性がある成分であり、長期間にわたって連用された場合、薬物依存につながるおそれがある。医薬品を本来の目的以外の意図で使用する不適正な使用、又はその疑いがある場合における対応に関する出題については、第1章-2)(不適正な使用と有害事象)を参照して作成のこと。

d)抗コリン成分

鼻炎用内服薬では、鼻腔内の粘液分泌腺からの粘液の分泌を抑えるとともに、鼻腔内の刺激を伝達する副交感神経系の働きを抑えることによって、鼻汁分泌やくしゃみを抑えることを目的として、ベラドンナ総アルカロイド、ヨウ化イソプロパミド等の抗コリン成分が配合されている場合がある。

ベラドンナはナス科の草本で、その葉や根に、副交感神経系の働きを抑える作用を示すアルカロイドを含む。

抗コリン成分に共通する留意点等に関する出題については、-3(胃腸鎮痛鎮痙薬)を参照して作成のこと。

e)ビタミン成分

皮膚や粘膜の健康維持・回復に重要なビタミンを補給することを目的として、ビタミンB6(ピリドキサールリン酸エステル、ピリドキシン塩酸塩)、ビタミンB2(リボフラビンリン酸エステルナトリウム等)、パンテノール、パントテン酸カルシウム等、ビタミンC(アスコルビン酸等)、ニコチン酸アミド等が配合されている場合がある。

f)生薬成分

 シンイ

モクレン科のタムシバ、コブシ、ボウシュンカ、マグノリア・スプレンゲリ又はハクモクレン等の蕾(つぼみ)を基原とする生薬で、鎮静、鎮痛の作用を期待して用いられる。

 サイシン

ウマノスズクサ科のウスバサイシン又はケイリンサイシンの根及び根茎を基原とする生薬で、鎮痛、鎮咳、利尿等の作用を有するとされ、鼻閉への効果を期待して用いられる。

 ケイガイ

シソ科のケイガイの花穂を基原とする生薬で、発汗、解熱、鎮痛等の作用を有するとされ、鼻閉への効果を期待して用いられる。

 

内服アレルギー用薬(鼻炎用内服薬を含む。)ー3

 漢方処方製剤

漢方の考え方に基づくと、生体に備わっている自然治癒の働きに不調を生じるのは、体内における様々な循環がバランスよく行われないことによるとされている。漢方処方製剤では、使用する人の体質と症状にあわせて漢方処方が選択されることが重要である。皮膚の症状を主とする人に適すとされるものとして、茵蔯蒿湯(いんちんこうとう)、十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)、消風散(しょうふうさん)、当帰飲子(とうきいんし)、等が、鼻の症状を主とする人に適すとされるものとして、葛根湯加川芎辛夷(かっこんとうかせんきゅうしんい)、小青竜湯(しょうせいりゅうとう)、荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)、辛夷清肺湯(しんいせいはいとう)等がある。

これらのうち茵蔯蒿湯、辛夷清肺湯を除き、いずれも構成生薬としてカンゾウを含む。また、葛根湯加川芎辛夷と小青竜湯は、構成生薬としてマオウを含む。構成生薬にカンゾウ又はマオウを含む漢方処方製剤に共通する留意点に関する出題については、-1(咳止め・痰を出しやすくする薬)を参照して作成のこと。

また、いずれも比較的長期間(1ヶ月以上)服用されることがあり、その場合に共通する留意点に関する出題については、ⅩⅣ-1(漢方処方製剤)を参照して問題作成のこと。

 

a)茵蔯蒿湯(いんちんこうとう)

体力中等度以上で口渇があり、尿量少なく、便秘するものの蕁麻疹、口内炎、皮膚の痒みに適すとされるが、体の虚弱な人(体力の衰えている人、体の弱い人)、胃腸が弱く下痢しやすい人では、激しい腹痛を伴う下痢等の副作用が現れやすい等、不向きとされる。

b)十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)

体力中等度なものの皮膚疾患で、発赤があり、ときに化膿するものの化膿性皮膚疾患・急性皮膚疾患の初期、蕁麻疹、湿疹・皮膚炎、水虫に適すとされるが、体の虚弱な人(体力の衰えている人、体の弱い人)、胃腸が弱い人では不向きとされる。

短期間の使用に限られるものではないが、化膿性皮膚疾患・急性皮膚疾患の初期、急性湿疹に用いる場合は、漫然と長期の使用は避け、1週間位使用して症状の改善がみられないときは、いったん使用を中止して専門家に相談がなされるなどの対応が必要である。

c)消風散(しょうふうさん)

体力中等度以上の人の皮膚疾患で、痒みが強くて分泌物が多く、ときに局所の熱感があるものの湿疹・皮膚炎、蕁麻疹、水虫、あせもに適すとされるが、体の虚弱な人(体力の衰えている人、体の弱い人)、胃腸が弱く下痢をしやすい人では、胃部不快感、腹痛等の副作用が現れやすい等、不向きとされる。

d)当帰飲子(とうきいんし)

体力中等度で冷え症で、皮膚が乾燥するものの湿疹・皮膚炎(分泌物の少ないもの)、痒みに適すとされるが、胃腸が弱く下痢をしやすい人では、胃部不快感、腹痛等の副作用が現れやすい等、不向きとされる。

e)葛根湯加川芎辛夷(かっこんとうかせんきゅうしんい)

比較的体力のあるものの鼻づまり、蓄膿(ちくのう)症、慢性鼻炎に適すとされるが、体の虚弱な人(体力の衰えている人、体の弱い人)、胃腸が弱い人、発汗傾向の著しい人では、悪心、胃部不快感等の副作用が現れやすい等、不向きとされる。

f)荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)

体力中等度以上で皮膚の色が浅黒く、ときに手足の裏に脂汗をかきやすく腹壁が緊張しているものの蓄膿症、慢性鼻炎、慢性扁桃炎、にきびに適すとされるが、胃腸の弱い人では、胃部不快感等の副作用が現れやすい等、不向きとされる。まれに重篤な副作用として肝機能障害、間質性肺炎が現れることが知られている。

g)辛夷清肺湯(しんいせいはいとう)

体力中等度以上で、濃い鼻汁が出て、ときに熱感を伴うものの鼻づまり、慢性鼻炎、蓄膿症に適すとされるが、体の虚弱な人(体力の衰えている人、体の弱い人)、胃腸虚弱で冷え症の人では、胃部不快感等の副作用が現れやすいなど、不向きとされている。まれに重篤な副作用として肝機能障害、間質性肺炎、腸間膜静脈硬化症が現れることが知られている。

 

3)相互作用、受診勧奨

【相互作用】 一般用医薬品のアレルギー用薬(鼻炎用内服薬を含む。)は、複数の有効成分が配合されている場合が多く、他のアレルギー用薬(鼻炎用内服薬を含む。)、抗ヒスタミン成分、アドレナリン作動成分又は抗コリン成分が配合された医薬品(かぜ薬、睡眠補助薬、乗物酔い防止薬、鎮咳去痰薬、口腔咽喉薬、胃腸鎮痛鎮痙薬等)などが併用された場合、同じ成分又は同種の作用を有する成分が重複摂取となり、効き目が強すぎたり、副作用が起こりやすくなるおそれがある。一般の生活者においては、「鼻炎の薬」と「蕁麻疹の薬」等は影響し合わないとの誤った認識がなされることも考えられるので、医薬品の販売等に従事する専門家において適宜注意を促していくことが重要である。

また、アレルギー用薬(鼻炎用内服薬を含む。)と鼻炎用点鼻薬((鼻に用いる薬)参照。)のように、内服薬と外用薬でも同じ成分又は同種の作用を有する成分が重複することもあり、それらは相互に影響し合わないとの誤った認識に基づいて、併用されることのないよう注意が必要である。

漢方処方製剤、生薬成分が配合された医薬品における相互作用に関する一般的な事項については、ⅩⅣ(漢方処方製剤・生薬製剤)を参照して問題作成のこと。

 

【受診勧奨】 蕁麻疹や鼻炎等のアレルギー症状に対する医薬品の使用は、基本的に対症療法である。一般用医薬品のアレルギー用薬(鼻炎用内服薬を含む。)は、一時的な症状の緩和に用いられるものであり、長期の連用は避け、5~6日間使用しても症状の改善がみられない場合には、医師の診療を受けるなどの対応が必要である。

アレルギー症状を軽減するには、日常生活におけるアレルゲンの除去・回避といった根源的な対応が図られることが重要であり、何がアレルゲンとなって症状が生じているのかが見極められることが重要である。アレルゲンを厳密に特定するには医療機関における検査を必要とし、その上で、アレルゲンに対して徐々に体を慣らしていく治療法(減感作療法)等もある。

皮膚症状が治まると喘息が現れるというように、種々のアレルギー症状が連鎖的に現れることがある。このような場合、一般用医薬品によって一時的な対処を図るよりも、医療機関で総合的な診療を受けた方がよい。

なお、アレルギー症状が現れる前から予防的に一般用医薬品のアレルギー用薬(鼻炎用内服薬を含む。)を使用することは適当でない。アレルギー症状に対する医薬品の予防的使用は、医師の診断や指導の下で行われる必要がある。

また、一般用医薬品(漢方処方製剤を含む。)には、アトピー性皮膚炎による慢性湿疹等の治療に用いることを目的とするものはないことから、アトピー性皮膚炎が疑われる場合やその診断が確定している場合は、医師の受診を勧めることが重要である。

皮膚感染症(たむし、疥癬(かいせん)等)により、湿疹やかぶれ等に似た症状が現れることがある。その場合、アレルギー用薬によって一時的に痒み等の緩和を図ることは適当でなく、皮膚感染症そのものに対する対処を優先する必要がある。

医薬品が原因となってアレルギー症状を生じることもあり、使用中に症状が悪化・拡大したような場合には、医薬品の副作用である可能性を考慮し、その医薬品の服用を中止して、医療機関を受診するなどの対応が必要である。特に、アレルギー用薬の場合、一般の生活者では、使用目的となる症状(蕁麻疹等)と副作用の症状(皮膚の発疹・発赤等の薬疹)が見分けにくいことがあり、医薬品の販売等に従事する専門家において適宜注意を促していくことが重要である。

鼻炎症状はかぜの随伴症状として現れることも多いが、高熱を伴っている場合には、かぜ以外のウイルス感染症やその他の重大な病気である可能性があり、医療機関を受診するなどの対応が必要である。