- 労働衛生(有害業務に係るもの)
- 4.有機溶剤中毒
- 有機溶剤中毒
- Sec.1
1有機溶剤中毒
■有機溶剤
有機溶剤は、塗装や洗浄、接着作業に用いられる液体の有機化合物である。性質として揮発性と脂溶性がある。
① 揮発性の性質として蒸気になりやすい。空気よりも比重が重く、低所にたまりやすい。
また引火性があるので燃えやすい。
② 脂溶性の性質として油にも脂肪にも溶けやすい。体内への侵入経路としては蒸気を吸入するものと、皮膚からの吸収がある。
■有機溶剤による疾病
有機溶剤による一般的症状として、高濃度ばく露による急性中毒の場合、中枢神経系抑制作用で酩酊状態になり、呼吸不全になる危険性がある。低濃度ばく露による慢性中毒では頭痛、不眠、めまいなどの不定愁訴(しゅうそ)が引き起こされる。
「有機溶剤による代表的な疾病」
有機溶剤 |
症状 |
① 二硫化炭素 |
中毒症状として意識障害などの精神障害があり、長時間ばく露になると網膜細動脈瘤を伴う脳血管障害をおこす。 |
② ベンゼン |
高濃度ベンゼンを長期間吸い込むと、造血器障害を引き起こし、再生不良性貧血を生じる。また低濃度ベンゼンを長期間吸い込むと、白血病になる危険性を持つ。 |
③ ノルマルヘキサン |
頭痛、目まいなどの症状があり、慢性中毒になると末梢神経障害が起こり、歩行困難などの多発性神経炎が引き起こされる。 |
④ 酢酸メチル |
長期ばく露で視神経障害を起こし、視力低下や視野狭窄(きょうさく)を生じる。 |
⑤ メタノール |
メチルアルコールともいう。網膜損傷、視神経障害による失明を引き起こす。 |
⑥ トリクロルエチレン |
肝障害、腎障害を引き起こす。 |
⑦ トルエン |
めまい、歩行困難、精神錯乱を生じさせる。 |
⑧ キシレン |
興奮状態や麻酔状態を経て死亡に至ることがある。 |
⑨ アニリン |
皮膚や粘膜が青紫色になる症状のチアノーゼを引き起こす。 |
⑩ ジメチルホルムアミド |
頭痛、めまい、肝機能障害を引き起こす。 |
【アウトプット】
5. マンガン中毒では、指の骨の溶解、皮膚の硬化などの症状がみられる。
6. 鉛中毒では、感情不安定、幻覚などの精神障害や手指の震えなどの症状がみられる。
7. 有機溶剤は、空気より軽く呼吸器から吸収されやすく、皮膚から吸収されることはない。
8. メタノールの健康障害に視力低下や視野狭窄、二硫化炭素には意識障害などの精神障害がある。