- 労働生理
- 3.労働による人体機能の変化
- 労働による人体機能の変化
- Sec.1
1労働による人体機能の変化
■ストレス
(1) ストレスの意味
外部から様々な要因で心身に疲労が蓄積して環境に順応できなくなってくる状態をストレスという。このストレス状態を引き起こす原因となる刺激をストレッサーといい、ストレス状態はホメオスタシス(■2 体温 を参照)によって保たれていたバランスが崩れた状態でもあり、生体はこの状態に適応しようとストレス反応を起こす。
(2) ストレスの原因
ストレッサーには以下のような分類がされている。
「外的ストレッサーと内的ストレッサー」
ストレッサー |
環境や状態 |
詳細 |
① 外的ストレッサー |
a) 物理的環境 |
職場騒音・気温・湿度・悪臭 |
b) 社会的環境 |
昇進や昇格・転勤・配置換え、人間関係等 |
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② 内的ストレッサー |
a) 心理的・情緒的状態 |
緊張や不安・悩み・不安・寂しさ・怒り |
b) 身体的・生理的状態 |
疲労・睡眠不足・健康障害 |
(3) ストレス反応
ストレッサーは自律神経と内分泌系を介して心身活動を亢進(こうしん=たかぶり、進むこと)する。特に「ノルアドレナリン」・「アドレナリン」・「カテコールアミン」・「副腎皮質ホルモン」が深く関与している。
特にストレスがあると、副腎皮質ホルモン等の分泌が増えることがある。
(4) ストレス反応の仕組み
ストレッサーはまず、大脳皮質でとらえられて、視床下部から副腎皮質刺激放出ホルモンが分泌される。
① 自律神経系の、ノルアドレナリンやアドレナリンが分泌され、体の各器官に心拍数の増加や血圧上昇などを促して、ストレス防御をする。
② 内分泌系の、副腎皮質やコルチゾールが分泌され、代謝活動や免疫系を活性化させてストレスから体を守っている。
(5) ストレスによる疾患
ストレスに長時間さらされ続けると、自律神経系や内分泌系によるホメオスタシスが維持できなくなり、心身の健康障害が生じることがある。ストレス関連疾患として以下のものがあげられる。
主なストレス関連疾患 |
疾患名称 |
① 精神・神経的疾患 |
自律神経失調症、うつ病、神経症 |
② 内科的疾患 |
本態性高血圧症、狭心症、胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍 過敏性腸症候群、過換気症候群 |
■体温
(1) ホメオスタシス
体温調節に見られるような外部環境に変化しても、身体内部の状態を一定に保とうとする性質を恒常性といい、このような仕組みをホメオスタシスという。ホメオスタシスは自律神経系と内分泌系によって調節がされている。
(2) 体温調節
体温調節は産熱と放熱のバランスを維持して体温を一定に保とうと機能している。
「体温調節」
体温調節 |
詳細 |
① 体温調節の中枢 |
間脳の視床下部にある。 |
② 産熱 |
栄養素の酸化や分解などの化学的反応によって行われる。 |
③ 放熱 |
放射(ふく射)や伝導、汗による蒸発など物理的な過程で行われる。 |
(3) 体温調節の仕組み
体温調節の仕組みで寒冷と高温の仕組みがある。
体温調節の仕組み |
詳細 |
① 寒冷なとき |
寒冷にさらされて体温が正常より下がると、皮膚血管が収縮して、血液量を減らして体温の低下を防いでくれる。これにより体内の代謝活動を高ぶらせて熱の産生を増やす(代謝活動の亢進)。 |
② 高温なとき |
高温にさらされて体温が正常より上がると、皮膚血管が拡張して、血液量を増加して放熱を促進、そして発汗によって体温を下げる。これにより体内の代謝活動を抑制して熱産生を減らす。 |
(4) 発汗
発汗により体の表面から汗が蒸発すると、気化熱が奪われる。もし体重70kgの人が100gの汗が蒸発したとすると、計算上体温が1℃下がる。
発汗には体内の熱を放散する役割を果たす温熱性発汗と、精神的緊張や感動による精神的発汗があり、労働した際にはこの両方が現れている。また発汗量が多いと塩分も体内の水分とともに減少する。よって水分だけを補給すると血液中の塩分濃度が低下してけいれん引き起こすおそれがある。
(5) 不感蒸泄
発汗のない状態であっても皮膚や呼吸器から1日850gの水分が蒸発している。このことを不感蒸泄(じょうせつ)といい、これに伴う放熱は全放熱量の25%程度を占めている。