- 労働生理
- 4.疲労及びその予防
- 疲労及びその予防
- Sec.1
1疲労及びその予防
■疲労
職場での疲労を予防するために、作業方法や作業分析、疲労の原因の対策等が必要になってくる。
(1) 疲労の種類
疲労には以下のような種類がある。
疲労の種類 |
内容 |
① 動的疲労 |
動的作業による疲労 |
② 静的疲労 |
静的作業による疲労 |
③ 局所疲労 |
身体の一部だけの筋肉疲労 |
④ 精神的疲労 |
精神的活動による疲労 |
⑤ 産業疲労 |
仕事の作業を原因として起こる心身の疲労 |
⑥ 全身疲労 |
全身の疲労となる作業による疲労 |
・ 筋肉の疲労からくるものを「身体的疲労」ともいう。
(2) 疲労と休息
疲労には、心身の過度な働きを制限して活動を休めて、休息をとらせる役割もある。身体的疲労に対しては全身を安静に保つことが疲労回復に効果的でもある。精神的疲労に対しては安静に保つよりも適度に体を動かすほうが疲労回復に効果がある。
(3) 疲労の検査・測定方法
疲労状態を調べる方法として、厚生労働省の「労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリスト」等のチェック表を用いて自覚的症状を調べる方法がある。疲労の他覚的症状の調査方法には次のものがある。
他覚的症状調査 |
検査内容 |
① 作業量の調査 |
単位時間当たりの作業能率を調べる。 |
② フリッカー検査 |
高速で点滅する光を見て、点滅するものとして認識できる限界を調べる。 |
③ 二点弁別閾検査 (にてんべんべついき) |
身体の部位を2点同時に刺激し、2点として感じられる最小間隔から感覚神経の機能を調べる。 |
④ 心拍変動(HRV) |
心拍変動(HRV)を解析し、自律神経の機能を調べる。 |
■睡眠
「休息・休養・睡眠」が疲労回復の3大因子といわれているが、睡眠の効果が最も大きいと考えられている。
(1) レム睡眠とノンレム睡眠
睡眠には有名なレム睡眠とノンレム睡眠の2つの種類がある。
睡眠の種類 |
内容 |
① レム睡眠 |
身体の力は抜けているが大脳は活発に活動している睡眠で、夢を見ていることが多い。 |
② ノンレム睡眠 |
大脳を休ませてその機能を回復するための睡眠で、ノンレム睡眠時にはストレスが取り除かれたりしている。 |
・ 「レム」とは、左右に眼球が急速に動くことによる急速眼球運動(Rapid Eye Movements)がはじまり、この眼球運動の「REM」という頭文字から「レム睡眠」と呼ばれている。
・ 「ノンレム」とは、レム睡眠のような急速眼球運動がないことから、ノンレム睡眠(Non Rapid Eye Movement)と呼ばれている。
・ 眠りにおちてすぐに深い眠りのノンレム睡眠になり、次に浅い眠りのレム睡眠になる。だいたい90分周期でノンレム睡眠とレム睡眠を繰り返している。
(2) 睡眠の役割
睡眠中は副交感神経系の働きが活発になり、心身の安定を図るよう調節するために、体温低下・心拍数減少・呼吸数の減少がみられる。この睡眠により、脳の疲労回復・成長ホルモンの分泌・免疫力の強化・血圧や血糖値の調節・情報整理等の役割を果たしている。
(3) 睡眠不足の弊害
睡眠が不足すると、感覚機能や集中力が低下し、周囲の刺激に対する反応が鈍るので作業能率が落ち、災害が発生しやすい状況となる。
(4) 睡眠と覚醒のリズム
睡眠と覚醒リズムは体温やホルモン分泌と同様に、脳内の体内時計によって1日のリズムに調節されている。このリズムを概日リズム(サーカディアンリズム)という。
しかしながら人の体内時計周期が約25時間であるので睡眠障害を生じている。このことを概日リズム睡眠障害という。朝の光を浴びることによって体内時計のズレは修正できている。
(5) 安眠
安眠のための生活習慣として次のような留意事項がある。
① 就寝直前の過食は肥満を招き、不眠の原因にもなる。
② 食事は就寝の2~3時間前までに済ませて、就寝前の空腹あるいは満腹の状態で寝ることを避けておく。
③ 就寝前は多量の水分摂取は控えておく。
④ 毎朝決まった時間に目を覚ますようにする。
⑤ 日中、適度な疲労を感じる程度に運動を行うことが効果的。
⑥ 寝付けない場合には、体を横たえて安静を保つだけでも疲労はある程度回復することができる。
■職業適性
職業適性検査によって、個人特性と職務適性を踏まえて、適切な配置を行うことが望ましい。また場合によっては性格検査や心理テスト等も行われるケースもある。
【アウトプット】次の記述の正誤を答えよ。
20. ストレスにより、自律神経系と内分泌系によるホメオスタシスが維持できなくなり、精神・神経的疾患、内科的疾患などを招く場合がある。
21. 寒冷にさらされて体温が下がると、皮膚血管が収縮するので血液量が増加し放熱を促進、体温の低下を防いでくれる。
22. 不感蒸泄とは、人間は発汗のほかに、常時、呼気や皮膚表面からも水分を蒸発させていることである。
23. 睡眠は、レム睡眠とノンレム睡眠に分類され、レム睡眠は夢を見ていることが多い。
24. サーカディアンリズム睡眠障害は、十分な睡眠によって修正できる。