- 憲法ー11.内閣
- 4.国の行政組織
- 国の行政組織
- Sec.1
1国の行政組織
内閣は行政作用を統括する地位にあり、内閣総理大臣は内閣を代表して行政各部を指揮監督することから(72条)、行政組織が内閣の下に形成される。
■国の行政機関の組織
国の行政機関の組織について定めるのは国家行政組織法であるが(国家行政組織法3条1項)、行政組織のために置かれる国の行政機関の設置、廃止、任務および所掌事務もまた法律事項である(国家行政組織法3条2項、4条)。
■独立行政委員会
国の行政機関の組織について問題となるのが、独立行政委員会の存在である。独立行政委員会とは、法律により一定の行政分野について内閣から独立した地位でその職権を行うことが認められている合議制の行政機関である。人事院、公正取引委員会、中央労働委員会、国家公安委員会などが独立行政委員会の例として挙げられる。これら独立行政委員会については、その存在が「行政権は内閣に属する」と定める65条に違反するか否かが問題となる。例えば、「公正取引委員会の委員長及び委員は、独立してその職権を行う」(独占禁止法28条)とされ、公正取引委員会は内閣の指揮監督下にないようにもみえるからである。
(1) 違憲説
65条および72条を厳格に解釈し、65条および72条は、すべての行政機関を内閣の指揮監督下におくことを要求しているところ、独立行政委員会は内閣の指揮監督下にないから違憲であるとする説。独立行政委員会が現代社会で重要な役割を果たしているという実情にそぐわない少数説である。
(2) 合憲説
① 内閣の指揮監督下にあるから合憲とする説
65条はすべての行政機関を内閣の指揮監督下におくことを要求しているが、独立行政委員会は、内閣に委員任命権(独占禁止法29条2項など)や予算作成権があることから、内閣の指揮監督下にあると解し、合憲であるとする説。
しかし、これによれば、最高裁判所長官以外のすべての裁判官の任命権が内閣にあることから、裁判所も内閣の指揮監督下にあることになってしまうと疑問が出されている。
② 内閣の指揮監督下になくとも合憲とする説
65条はすべての行政機関を内閣の指揮監督下におくことを要求していないため、独立行政委員会は合憲であるとする説。この説は、65条の解釈について、次のいずれかの立場または複数の立場をとることから導き出される。
(a) 41条は国会を「唯一の」立法機関とし、76条1項は司法権が「すべて」最高裁判所および下級裁判所に属するとしているが、行政権について65条はこのような規定形式をとっていないから、65条1項は行政権のすべてを内閣に集中させることを要求したものではない。
(b) 65条にいう行政とは、政治的作用の執政を意味し、非政治的作用をその職務とする独立行政委員会は、内閣の指揮監督下にある必要はない。
(c) 独立行政委員会の職務には、高度の中立性や専門技術性が求められ、そもそも内閣の指揮監督になじまないものがあるため、内閣から独立していても65条に反しない。
(d) 65条が行政権を内閣に帰属させている趣旨は、国会に対する責任体制を確保する点にあるところ、独立行政委員会に対して内閣の指揮監督が不十分な部分は、国会がコントロールを及ぼすことで補うことができるため、国会、内閣の双方により十分な指揮監督を及ぼしているということができ、65条に反しない。
(e) 権力分立は、元来、行政府を牽制することにその意義があると考えれば、国会が内閣とは独立の行政機関を設けて、そこに行政権の一部を帰属させても65条に反しない。