- 憲法ー6.人身の自由
- 2.奴隷的拘束および苦役からの自由
- 奴隷的拘束および苦役からの自由
- Sec.1
1奴隷的拘束および苦役からの自由
■18条の意義
18条は、奴隷的拘束及び意に反する苦役からの自由を保障する。身体が不当な拘束を受けることのない自由は、人間の尊厳に関わる根源的なものだからである。
■『奴隷的拘束』
(1) 『奴隷的拘束』の意味
奴隷的拘束とは、自由な人格者であることと両立しない程度に身体の自由が拘束されている状態をいう。
例:たこ部屋、監獄部屋、奴隷、人身売買による拘束(娼妓契約)
(2) 『奴隷的拘束』の禁止
18条は全ての非人道的な自由の拘束を禁止するものであり、人を奴隷的拘束に置くことは絶対的に禁止され、たとえ本人の真意に基づく同意があっても、犯罪による処罰の場合であっても許されない。
cf. 『その意に反する苦役』については、犯罪による処罰の場合は許される。
(3) 保障の範囲
18条は私人間に直接適用される。
■『その意に反する苦役』
(1) 『その意に反する苦役』の意味
『その意に反する苦役』とは、『奴隷的拘束』にいたらない程度の人格に対する一定の苦痛を伴う身体の自由の拘束をいう。
(2) 『意に反する苦役』の禁止
『意に反する苦役』の禁止については、18条自身が『犯罪による処罰』の例外を認めているが、これ以外の例外は認められないと解されている。
① 『意に反する苦役』にあたるとされる具体例
(a) 徴兵制
兵役の義務(徴兵制)を課すことが『苦役』にあたるかについては争いがあるが、憲法は兵役義務を規定していないので、兵役の強制は本条に違反すると解するのが通説である。
cf. 18条の母法であるアメリカ憲法では、祖国を防衛することは国民の当然の義務であるとして、徴兵制は苦役にあたらないとする見解が一般的である。
② 「意に反する苦役」にあたらないとされる具体例
(a) 非常災害その他の緊急、時における応急的な労務負担
例:災害救助、消防
(b) 国家作用の実施に協力する義務
例1: 議院または裁判所に出頭して証言する義務
例2: 納税その他のために必要な申告・届出・報告をする義務
(3) 犯罪による処罰の例外
犯罪による処罰の場合は、「意に反する苦役」であっても例外的に許される。
例:懲役刑における一定の労働強制