- 法令上の制限税その他ー1.都市計画法
- 1.都市計画区域・準都市計画区域の指定
- 都市計画区域・準都市計画区域の指定
- Sec.1
1都市計画区域・準都市計画区域の指定
自分の土地だからといって、なんでも好きなようにできるわけではない。建築基準法や農地法等、さまざまな法律によって規制がかけられる。これらを総称して「法令上の制限」という。
まず、広い土地を購入する際に必要なのが「国土利用計画法」による届出である。もしその土地が農地であるならば「農地法」の許可も必要である。
土地を造成する場合には、「都市計画法」の開発許可が必要となったり、宅地造成工事規制区域内ならば「宅地造成等規制法」の許可が必要となったりする。
また、建物の建築に対しては、容積率制限、建蔽率制限、用途規制等、「建築基準法」の規制に従わなければならない。
さらに、土地の区画整理事業を行うときには「土地区画整理法」で規制される。
これらの法令上の制限は、宅地建物の購入者や賃借人に知っておいてもらう必要があるため、重要事項説明の説明事項となっている。宅建試験に出題されるのはそのためである。
法令上の制限は、内容が抽象的で、暗記しておかなければ対応できない問題が多いことから、苦手意識をもつ受験生が多い。しかし、同じような問題が繰り返し出題されており、キーワードと数値を覚えておくだけで大体の問題は解けるので、敬遠してしまうのはよくない。範囲を絞って、正確な知識を要領よく身につけよう。
『都市計画法』は、法令上の制限の基本となる法律であり、例年2問出題される。都市計画法の上に、建築基準法、土地区画整理法などが「乗っている」ようなイメージである。
都市計画法は、「住みよい都市作り」をするために、「都市の設計図を作る」法律である。すなわち、国民は憲法の定めるところにより、『居住・移転の自由(憲法22条)』や『財産権(同29条)』を有するわけだが、これらの自由があるからといって、各自が全く自己の思うままに好き勝手な土地に好き勝手な建物を建てて住んだり、商業利用したりしてもよいということになると、公道と繋がっていない建物が出来上がったり、明らかに場違いな商業ビルが住宅街のど真ん中に建築されたりするなど、都市は全く秩序のない、無茶苦茶な代物になってしまう。それは到底「住みよい都市」とはいえない。そこで、都市の健全な発展と秩序ある整備を図り、国土の均衡ある発展と公共の福祉の増進に寄与することを目的として定められたのが都市計画法である。 |
都市計画法は「計画的な街づくり」を行うために作られた法律である。
計画的な街づくりを行うためには、まず、これを行う場所を決めなければならない。それが、都市計画区域や準都市計画区域の指定である。計画的な街づくりは、原則として、『都市計画区域』または『準都市計画区域』の中で行い、都市計画区域または準都市計画区域外では行わない。
■都市計画区域の指定
(1) 都市計画区域の指定対象となる区域
『都市計画区域の指定』は、日本全国を計画的な都市づくりをやるところと、都市づくりは当面必要ないところに分ける作業である。すなわち、比較的人口密度の濃いところを『都市計画区域』として指定するのである。例えば、人間よりも動物のほうが多く住んでいるような田舎の地域で計画的な街づくりをする必要はない。そのようなところは都市計画区域として指定しないということである。
具体的には、次の①または②の区域に指定される。
① 市または人口、就業者数その他の事項が政令で定める要件に該当する町村の中心の市街地を含み、かつ、自然的および社会的条件ならびに人口、土地利用、交通量その他国土交通省令で定める事項に関する現況および推移を勘案して、一体の都市として総合的に整備し、開発し、および保全する必要がある区域
② 首都圏整備法・近畿圏整備法・中部圏開発整備法による都市開発区域その他新たに住居都市、工業都市その他の都市として開発し、および保全する必要がある区域 |
Point1 上記①の場合、必要があるときは、当該市町村の区域外にわたり、都市計画区域を指定することができる。
(2) 都市計画区域の指定権者・指定手続
都市計画区域は誰が指定するのかという問題である。
① 原則…都道府県が指定する。
例外…2以上の都府県の区域にわたって指定する場合は、国土交通大臣が指定する。 ② 都道府県は、あらかじめ関係市町村および都道府県都市計画審議会の意見を聴くとともに、国土交通大臣に協議し、その同意を得て指定する。 ③ 国土交通大臣は、あらかじめ関係都府県の意見を聴いて指定する。この場合、関係都府県が意見を述べるときは、あらかじめ関係市町村および都道府県都市計画審議会の意見を聴かなければならない。 |
※ 都市計画区域の指定は、都道府県が指定する場合にはその定める方法で国土交通大臣が指定する場合には官報で公告することによって行われる。『官報』とは、国の公告機関紙である。
Point2 都道府県が指定する場合には、国土交通大臣に協議し、その同意を得なければならない。
「2つ以上の都府県」にまたがる場合とされ、「道」が抜けている。これは、北海道と青森県にまたがって都市計画区域が指定されることはないからである。
また、現在までのところ、2つ以上の都府県にまたがって都市計画区域が指定されたことは一度もない。一方、2つ以上の市町村にまたがって指定されることはよくある。
『都道府県都市計画審議会』とは、都市計画に関する事項を調査審議する機関で、都道府県に置かれる。
■準都市計画区域の指定
(1) 準都市計画区域の指定対象となる区域
都市計画区域外には原則として都市計画法の規制がかからない。すると、それが例えば郊外の幹線道路の沿道などであれば、規制がかからないのをいいことに乱開発が進みかねない。そして将来、いざ都市計画区域に指定しようとしたときには、すでに無秩序な街ができあがってしまっているおそれがある。そこで、放っておくと将来の街づくりに支障が出るような都市計画区域外の区域を、土地利用の整序や環境保全のために準都市計画区域として指定できることになっている。準都市計画区域には都市計画区域にかかる規制の中の一定のものがかけられるので、乱開発の歯止めになるのである。
具体的には、次の区域に指定することができる。
都市計画区域外の区域のうち、相当数の建築物等の建築もしくは建設またはこれらの敷地の造成が現に行われ、または行われると見込まれる区域を含み、かつ、自然的および社会的条件ならびに農業振興地域の整備に関する法律その他の法令による土地利用の規制の状況その他国土交通省令で定める事項に関する現況および推移を勘案して、そのまま土地利用を整序し、または環境を保全するための措置を講ずることなく放置すれば、将来における一体の都市としての整備、開発および保全に支障が生じるおそれがあると認められる一定の区域 |
Point 準都市計画区域は、都市計画区域外の区域に指定される。
(2) 準都市計画区域の指定権者・指定手続
① 都道府県が指定する。
② 都道府県は、準都市計画区域を指定しようとするときは、あらかじめ関係市町村および都道府県都市計画審議会の意見を聴かなければならない。 |
Point 準都市計画区域は都道府県が指定する。
■都市計画の決定
(1) 都市計画の種類
都市計画区域や準都市計画区域を指定しただけでは計画的な街づくりは進まない。
次は、都市計画を決めなければならない。そのメニューは、都市計画法に定めが置かれている。
内容は大きく分けて11種類ある。
① 都市計画区域の整備、開発および保全の方針
② 区域区分 ③ 都市再開発方針等 ④ 地域地区 ⑤ 促進区域 ⑥ 遊休土地転換利用促進地区 ⑦ 被災市街地復興推進地域 ⑧ 都市施設 ⑨ 市街地開発事業 ⑩ 市街地開発事業等予定区域 ⑪ 地区計画等 |
Point 都市計画のメニューは11種類あるが、出題頻度の高い項目(②、④、⑧、⑪)だけを学習すれば十分である。
(2) 都市計画の決定
上記の11種類がそれぞれさらに細かく分かれているので、その中から、その都市計画区域にふさわしいものを選んでいく。それが『都市計画の決定』である。
都市計画区域においては、上記の11種類のすべての都市計画を定めることができる。
それに対して、準都市計画区域において定めることができる都市計画は、上記④の「地域地区」に関する都市計画のうち8種類のものと、⑧の「都市施設」に関する都市計画に限られる。