- 法令上の制限税その他ー1.都市計画法
- 2.都市計画の内容
- 都市計画の内容
- Sec.1
1都市計画の内容
都市計画区域や準都市計画区域が指定されると、それぞれに、必要な都市計画が定められる。ここでは、都市計画にはどのようなものがあるのか、その具体的内容について学習する。
■区域区分
区域区分とは、市街化区域と市街化調整区域の区分である。実務上は、「線引き」と呼ばれる。
指定された都市計画区域に、全て住宅や工場、商店を建てたのでは、かえって息苦しく住みにくい街になる。そこで、都市計画区域の中にも、緑を残しておく地域が必要になる。緑を残して、そこでは農業や林業、漁業などをやってもらいたい。こういった地域を『市街化調整区域』という。
逆に、集中的に人口の密集を図り、都市生活の利便を図る地域もある。このようなところを『市街化区域』という。
都市計画法では、市街化区域および市街化調整区域は次のように定義されている。
① 市街化区域とは、1. すでに市街地を形成している区域、および、2. おおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域をいう。
② 市街化調整区域とは、市街化を抑制すべき区域をいう。 |
都市化がかなり進んでいる都市は、無秩序な乱開発による緑の減少を防ぐために、市街化区域(市街地にするところ)と市街化調整区域(緑を残すところ)に分ける必要がある。そこで、一定の大都市を含む都市計画区域では、区域区分を必ず定めるものとされている。しかし、そうでない田舎の都市では、かならずしも市街化区域と市街化調整区域の区分(区域区分)は必要ない。そこで、それぞれの地域の実情に応じて、必要に応じて区域区分を定めることができることになっている。したがって、都市計画区域でありながら、市街化区域でも市街化調整区域でもない『区域区分が定められていない都市計画区域』という区域も登場することになる。このような区域は、実務上は『非線引き都市計画区域』と呼ばれたりする。
Point1 都市計画区域について無秩序な市街化を防止し、計画的な市街化を図るため必要があるときは、都市計画に、市街化区域と市街化調整区域との区分(区域区分)を定めることができる。つまり、区域区分は必ず定めなければならないものではないというのが原則であり、「区域区分が定められていない都市計画区域」も存在する。
Point2 三大都市圏の一定の区域や指定都市の区域の全部または一部を含む都市計画区域においては、区域区分を必ず定めるものとされる。
【参考】三大都市圏の一定の区域とは、次の区域をいう。
① 首都圏整備法に規定する既成市街地または近郊整備地帯
② 近畿圏整備法に規定する既成市街地または近郊整備地帯 ③ 中部圏開発整備法に規定する都市整備区域 |
Point3 準都市計画区域には、区域区分を定めることができない。準都市計画区域は市街化を行う予定がないからである。
■地域地区
都市計画区域の中が「線引き」されたとして、それで都市計画が終わるわけではない。まだ、これから街にするところと、緑を残すところが分かれただけである。その後もっと細かい都市計画を定めないと、とても暮らしやすい都市にはならない。そこで、都市計画区域の中を、「ここは工場を建てるところ、ここは一戸建ての住宅街、この辺はマンション」といった具合に、細かく使い道に応じて分けていかなければならない。これが、『地域地区』に関する都市計画の決定である。
この『地域地区』は、土地の使い道(用途)に関する都市計画であるが、その中心的役割を果たす『用途地域』(基本的地域地区)とその補助的役割を有する『補助的地域地区』に分けることができる。
(1) 用途地域
用途地域は市街化区域には必ず定めるもので、13種類ある。非常に重要なので、その定義のポイントとその地域の簡単なイメージを押さえよう。なお、Chapter.2 の「建築基準法」において、この用途地域を基礎とした建築制限について学習することになる。
種類 | 定義 | 具体例 | |
住居系 | 第一種低層住居
専用地域 | 低層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため定める地域 | 閑静な住宅街 |
第二種低層住居
専用地域 | 主として低層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため定める地域 | コンビニ等の小店舗が存在し第1種低層住居専用地域よりも多少賑やかな住宅街 | |
田園住居地域 | 農業の利便の増進を図りつつ、これと調和した低層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため定める地域 | 都市の農地を保護するとともに、その活用のための農産物の直売所や農家レストランなどを建てることができる緑ゆたかな住宅街 | |
第一種中高層住居専用地域 | 中高層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため定める地域 | 6~7階建て程度の中高層マンションが建ち並んでいるところ | |
第二種中高層住居専用地域 | 主として中高層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため定める地域 | 必要な利便施設(大きめのスーパー等)や事務所が存在し、第1種中高層住居専用地域よりも多少賑やかなところ | |
第一種住居地域 | 住居の環境を保護するため定める地域 | 一戸建て住宅と中高層マンションが混在するところ | |
第二種住居地域 | 主として住居の環境を保護するため定める地域 | パチンコ店、麻雀店等の店舗が存在し、第1種住居地域と比べて、店舗や事務所が多く混在するところ | |
準住居地域 | 道路の沿道としての地域の特性にふさわしい業務の利便の増進を図りつつ、これと調和した住居の環境を保護するため定める地域 | 比較的大きな道路沿いの地域で、大きな駐車場があるスーパーや、自動車のショールーム等と住宅が調和して存在するところ | |
商業系 | 近隣商業地域 | 近隣の住宅地の住民に対する日用品の供給を行うことを主たる内容とする商業その他の業務の利便を増進するため定める地域 | 1階が店舗で、2階が住宅というような建物が多く存在し、住宅地に近接した商店街 |
商業地域 | 主として商業その他の業務の利便を増進するため定める地域 | 繁華街、デパートが存在するところ | |
工業系 | 準工業地域 | 主として環境の悪化をもたらすおそれのない工業の利便を増進するため定める地域 | 工場が多く存在するところではあるが、花火工場のような著しく危険な工場はなく、周囲の環境保全に配慮された地域 |
工業地域 | 主として工業の利便を増進するため定める地域 | 住居や店舗が混在する工場地帯 | |
工業専用地域 | 工業の利便を増進するため定める地域 | 石油コンビナートがあるところや臨海工業地帯で、住居や店舗がほぼ存在しない地域 |
用途地域を定めるべき場所については以下のとおりである。
① 市街化区域については、少なくとも用途地域を定める(必ず定める)ものとする。
② 市街化調整区域については、原則として、用途地域を定めないものとする。 |
用途地域を定めるとは、そこは住宅を建てたり、店舗を建てたり、工場を建てたりするための土地であるというのを定めることである。したがって、これから計画的に市街化をする『市街化区域』では定めるが、緑を確保しようという『市街化調整区域』では、原則として定めないのである。市街化調整区域で例外的に定めることがあるとすれば、将来的にその市街化調整区域を市街化区域に組み入れることが予定された場合等である。
用途地域に関する都市計画では、必ず次の事項を定めなければならない。
都市計画に定める事項 | 用途地域 |
建築物の高さの限度 | 第一種低層住居専用地域・第二種低層住居専用地域・田園住居地域 |
建築物の建蔽率 | 商業地域以外の用途地域 |
建築物の容積率 | すべての用途地域 |
(2) 補助的地域地区
『補助的地域地区』とは、用途地域を助ける役割を果たすものである。
つまり、用途地域の指定により、地域の基本的な色分けは決まったが、さらに地域の特色を出したいというような場合に、用途をよりきめ細かく規制する補助的地域地区を用いるのである。
補助的地域地区には何種類かあり、用途地域内に定められるものやそうでないものなど、グループ分けが可能である。
【用途地域内にのみ定められるもの】
種類 | 定義 |
特別用途地区 | 用途地域内の一定の地区における当該地区の特性にふさわしい土地利用の増進、環境の保護等の特別の目的の実現を図るため当該用途地域の指定を補完して定める地区(大学の周辺で風俗営業を規制したり、地場産業振興のため規制を緩和したりする地区) |
特例容積率適用地区 | 第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域、第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域、近隣商業地域、商業地域、準工業地域または工業地域内の適正な配置および規模の公共施設を備えた土地の区域において、建築物の容積率の限度からみて未利用となっている建築物の容積の活用を促進して土地の高度利用を図るため定める地区 |
高層住居誘導地区 | 住居と住居以外の用途とを適正に配分し、利便性の高い高層住宅の建設を誘導するため、第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域、近隣商業地域または準工業地域でこれらの地域に関する都市計画において建築物の容積率が10分の40または10分の50と定められたものの内において、建築物の容積率の最高限度、建築物の建蔽率の最高限度および建築物の敷地面積の最低限度を定める地区 |
高度地区 | 用途地域内において市街地の環境を維持し、または土地利用の増進を図るため、建築物の高さの最高限度または最低限度を定める地区 |
高度利用地区 | 用途地域内の市街地における土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の更新とを図るため、建築物の容積率の最高限度および最低限度、建築物の建蔽率の最高限度、建築物の建築面積の最低限度ならびに壁面の位置の制限を定める地区 |
【用途地域の内外を問わず定められるもの】
特定街区 | 市街地の整備改善を図るため街区の整備または造成が行われる地区について、その街区内における建築物の容積率ならびに建築物の高さの最高限度および壁面の位置の制限を定める街区 |
防火地域・準防火地域 | 市街地における火災の危険を防除するため定める地域 |
風致地区 | 都市の風致(自然美)を維持するため定める地区 |
臨港地区 | 港湾を管理運営するため定める地区 |
※ 特定街区は、ある程度都市基盤の整った街区で、超高層のオフィスビルや商業ビルを建築するプロジェク卜に用いられることが多い。特定街区の実例として、東京・西新宿の高層ビル群(新宿副都心)がある。
Point 風致地区内における建築物の建築、宅地の造成、木竹の伐採その他の行為については、政令で定める基準に従い、地方公共団体の条例で、都市の風致を維持するため必要な規制をすることができる。
【用途地域外にのみ定められるもの】
特定用途制限地域 | 用途地域が定められていない土地の区域(市街化調整区域を除く)内において、その良好な環境の形成または保持のため当該地域の特性に応じて合理的な土地利用が行われるよう、制限すべき特定の建築物等の用途の概要を定める地域 |
【その他の地域地区】
種類 | 内容 |
景観地区 | 市街地の良好な景観の形成を図るため定めることができる地区(建築物の形態意匠(デザイン)、高さ、壁面、敷地面積を制限する地区) |
緑地保全地域 | 緑地で、①無秩序な市街地化の防止または公害もしくは災害の防止のため適正に保全する必要があるもの、②地域住民の健全な生活環境を確保するため適正に保全する必要があるものについて定めることができる地域 |
伝統的建造物群保存地区 | 伝統的建造物群およびこれと一体をなしてその価値を形成している環境を保存するため定める地区 |
【地域地区まとめ(主なもの)】
地域地区 | 都市計画区域 | 準都市計画区域 |
用途地域 | ○ | ○ |
特別用途地区 ※ | ○ | ○ |
特定用途制限地域 | ○ | ○ |
特例容積率適用地区 ※ | ○ | × |
高層住居誘導地区 ※ | ○ | × |
高度地区 ※ | ○ いずれか | ○(最高限度のみ) |
高度利用地区 ※ | × | |
特定街区 | ○ | × |
防火地域・準防火地域 | ○ | × |
景観地区 | ○ | ○ |
風致地区 | ○ | ○ |
臨港地区 | ○ | × |
緑地保全地域 | ○ | ○ |
伝統的建造物群保存地区 | ○ | ○ |
※…用途地域内のみ ○…定めることができる ×…定めることができない
■都市施設
『都市施設』とは、人が健康で文化的な生活をするために必要な全ての施設である。
都市計画法では以下のものを都市施設としている。
① 道路、都市高速鉄道、駐車場、自動車ターミナルその他の交通施設
② 公園、緑地、広場、墓園その他の公共空地 ③ 水道、電気供給施設、ガス供給施設、下水道、汚物処理場、ごみ焼却場その他の供給施設または処理施設 ④ 河川、運河その他の水路 ⑤ 学校、図書館、研究施設その他の教育文化施設 ⑥ 病院、保育所その他の医療施設または社会福祉施設 ⑦ 市場、と畜場または火葬場 ⑧ 一団地の住宅施設 ⑨ 一団地の官公庁施設 ⑩ 流通業務団地 ⑪ 一団地の津波防災拠点市街地形成施設 ⑫ 一団地の復興再生拠点市街地形成施設 ⑬ 一団地の復興拠点市街地形成施設 ⑭ その他政令で定める施設 |
「都市施設」というと、いわゆる「都会」における施設のみをイメージするところだが、そうではない。例えば道路等は、都会にのみ必要で、田舎には必要ないというようなものではない。したがって、都市計画区域については、都市計画に、都市施設を定めることができるが、特に必要があるときは、都市計画区域外においても、都市施設を定めることができる。
Point1 「市街化区域」および「区域区分が定められていない都市計画区域」については、少なくとも道路、公園および下水道を定めるもの(必ず定める)とされる。
Point2 住居系の用途地域には、義務教育施設をも定めなければならない。