• 刑法(各論)ー12.国家の作用に対する罪
  • 6.虚偽告訴の罪
  • 虚偽告訴の罪
  • Sec.1

1虚偽告訴の罪

堀川 寿和2022/02/10 15:18

虚偽告訴の罪

虚偽告訴罪

刑法172条(虚偽告訴等)

人に刑事又は懲戒の処分を受けさせる目的で、虚偽の告訴、告発その他の申告をした者は、3月以上10年以下の懲役に処する。

 

① 意義

虚偽告訴は人に無実の罪をきせることである。本罪の保護法益は、国家の審判作用の適正であるが、あわせて被告訴者が不当に国の刑事又は懲戒処分の対象にされないという個人的法益も保護法益となっている。(大T1.12. 20

② 構成要件

人に刑事又は懲戒の処分を受けさせる目的で、虚偽の告訴、告発その他の申告をすることである。さす。

a) 被告訴者

人とは、他人のことをさす。したがって、自己に対する虚偽告訴行為によって、本罪は成立しない。

b) 行為

虚偽の告訴、告発その他の申告をすることである。虚偽の申告とは、客観的真実に反することをいう。(最S33. 7.31)したがって行為者が虚偽と誤信して申告してもそれが客観的に真実であれば本罪は成立しない。国家の審判作用を侵害することも、個人の不当処分がなされることもないからである。

③ 刑罰

3月以上10年以下の懲役。虚偽告訴罪は国家的法益に対する犯罪としての性質を有しているため、親告罪ではなく、その処罰に被害者の告訴を必要としない。

④ 自白についての特例

虚偽告訴罪を犯した者が、その申告した事件について、その裁判が確定する前又は懲戒処分がおこなわれる前に自白したときは、その刑を減軽又は免除することができる。(刑法173条)