- 刑法(各論)ー12.国家の作用に対する罪
- 7.賄賂の罪
- 賄賂の罪
- Sec.1
1賄賂の罪
■意義
賄賂の罪は、公務員自身が国家・公共団体の作用を侵害又は危険ならしめることを内容とする犯罪である。賄賂罪の保護法益は、判例によると、職務行為の公正に対する国民の信頼であるとする。
■分類
国家の作用に対する罪は、次のように分類される。
(1) 収賄罪
① 単純収賄罪(刑法197条1項前段)
② 受託収賄罪(刑法197条1項後段)
③ 事前収賄罪(刑法197条2項)
④ 第三者供賄罪(刑法197条の2)
⑤ 加重収賄罪(刑法197条の3第1項2項)
⑥ 事後収賄罪(刑法197条の3第3項)
⑦ あっせん収賄罪(刑法197条の4)
(2) 贈賄罪(刑法198条)
■賄賂罪総説
(1) 意義
賄賂とは、公務員がその職務に関して受ける不正な利益をいう。
(2) 要件の要件
賄賂というためには、供与された利益が次の要件を備えていなければならない。
① 客体が賄賂であること
② 職務との関連性があること
③ 職務と対価関係に立つこと
(3) 客体
賄賂罪の客体は、職務に対する不正の報酬ないし利益である。賄胳の内容たる利益は、有形のものたると無形のものたるとを問わず、人の需要又は欲望を満たすに足りる一切の利益を含む。(大M43.12.19)したがって、金品の授受に限らず、過剰な接待や、債務の弁済、その他、就職のあっせん等あらゆる利益が賄賂となり得る。
(4) 職務との関連性
賄賂は職務に関して受ける不正の報酬としての利益である。職務は公務員の抽象的職務権限(一般的職務権限)に属するものであれば足り、現に実際に担当している事務であることを要しない。(最S37.5.29)抽象的職務権限に属する事項につき利益の授受があれば、公務員の職務行為の公正さに対する国民の信頼が害されるためである。
職務に関しとは、本来の職務のほか、その職務と密接な関係にある行為(準職務行為)を含む。(最S31.7.12)