- 刑法(各論)ー12.国家の作用に対する罪
- 3.逃走の罪
- 逃走の罪
- Sec.1
1逃走の罪
■逃走の罪
(1) 単純逃走罪(刑法97条)
刑法95条(逃走)
裁判の執行により拘禁された既決又は未決の者が逃走したときは、1年以下の懲役に処する。
① 構成要件
裁判の執行により拘禁された既決・未決の者が逃走することである。
a) 主体
裁判の執行により拘禁された既決・未決の者である。(真正身分犯)
既決の者とは、有罪の確定判決を受けて拘禁されている者をいい、未決の者とは、被疑者・被告人として勾留状によって拘禁されている者をいう。(札幌高S28.7.9)
b) 行為
逃走することである。
② 刑罰
1年以下の懲役。未遂の処罰規定あり。(刑法102条)
(2) 加重逃走罪(刑法98条)
刑法98条(加重逃走)
前条に規定する者又は勾引状の執行を受けた者が拘禁場もしくは拘束のための器具を損壊し、暴行もしくは脅迫し、又は2人以上通謀して、逃走したときは、3月以上5年以下の懲役に処する。
① 構成要件
裁判の執行により拘禁された既決・未決の者又は勾引状の執行を受けた者が拘禁場もしくは拘束のための器具を損壊し、暴行もしくは脅迫をし、又は2人以上通謀して逃走することである。
a) 主体
裁判の執行により拘禁された既決・未決の者のほか、勾引状の執行を受けた者も含まれる。したがって、本罪の主体は単純逃走罪よりも範囲が広いことになる。
勾引状の執行を受けた者とは、被疑者、被告人、勾引された証人、逮捕状により逮捕された者(東京HS422. 7.19)をさす。
現行犯逮捕、緊急逮捕されいまだ逮捕状の発付がなされていない者、少年院に収容されている者は、含まれない。
b) 行為
拘禁場又は拘束のための器具を損壊し、暴行もしくは脅迫を加え又は2人以上通謀して逃走することである。
② 刑罰
3月以上5年以下の懲役。未遂の処罰規定あり。(刑法102条)